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Webの影響で営業が変わると言われていますが、皆さんはどのようにそれを実感しているでしょうか。

「確かに、お客さんがWebで他社商品・サービスの情報収集をするようになった」というように、売る側の立場で実感されることもあるでしょうが、より鮮明に実感するのは自分が消費者として買う側の立場ではないでしょうか。

例えば、私は旅行しようとして街の旅行代理店に行くことが本当に少なくなりました。旅行代理店やホテルのHPにはたくさんのクチコミや写真が掲載されているので、そういったものを見ながら家族とリビングで旅行先をのんびりと決められる。最近では複数の旅行代理店のプランを一覧比較できるサイトもできて、ますます便利になっています。このように、Webによって買い方が大きく変わってきているという感覚を皆さんお持ちのことでしょう。

今回のトライツブログでは、消費者の立場で「買う」経験の大切さについて考えてみたいと思います。

営業が来ない?!Web&電話だけの商談を受けてみた

先日、ある法人向けクラウドサービスの営業を受けることがありました。その営業がとても特徴的で、すべてWebと電話によるもの。非対面で完結する営業だったのです。そのやり方は、商談担当者が事前にアポイントをとり、アポイント当日の朝に確認の電話が掛かってくるという念の入れよう。また、商談中は相手と同じWeb画面を見ながら説明を受けるというスタイルでした。

この新しいスタイルの営業、実際に始まるまでは、「どんな感じなのだろう?」「やっぱり不便なんじゃないの?」と思っていました。しかし、実際に体験してみるとすごく自然だったのです。説明資料も揃っていましたし段取りもこなれていたので、商品・サービスのことをよく分かっていない営業担当者のおぼつかない説明を聞かされるのと比べて、はるかにストレスのない商談でした。

また、非対面のコミュニケーションでは、「見ず知らずの人と話をしている」という不安を感じることがありますが、Web画面上に営業担当者のカメラ映像が映っているので、そのような不安はまったくありませんでした。相手の顔を見ながら話ができるというだけで、こんなにも印象が変わるのだと驚いたほどです。

ストレスや不安のない商談でしたし、説明もとても分かりやすかったので、結果としてその日のうちに契約することになりました。

教訓:売ることを考えるヒントは、買う経験の中にある

以前から電話によるセールスというものはありました。が、それはアポを取るまでというのが一般的。電話でアポを取ったら、そこから先は人が来て対面で商談する・・・というスタイルです。しかし、今回は相手とまったく会うことがないままに、商談が完結してしまいました。

実は以前にあるセミナーでこの会社の方のお話を伺うことがありましたが、ほとんどの営業は電話とメールだけでやっていて、よっぽどのことがない限り客先訪問は禁止されているそうなのです。その方が話していたのですが、訪問と比較すると、電話とメールだけではやはり受注確率は下がってしまう。しかし、明らかに多くの商談をこなすことができているので、全体的に見たら営業効率はむしろ高くなっているそうです。

この企業はTVやWebで積極的にCMを打っているので、顧客からの問い合わせをきっかけにした商談がメインなのでしょう。自社商品・サービスに興味を持っている大勢の見込み客に効率的に対応して売上につなげていくためには、移動時間のロスが発生しないWebと電話による営業はとても適しているのだと感じました。

今回の件を通じて、「売ることを考えるためには、買う経験が大切なのだ」ということを再認識することができました。

面倒なWeb検索から解放!欲しい情報をスピーディに手に入れられる海外通販のチャット機能

買う経験について、別の例をご紹介したいと思います。

トライツ代表の角川は、趣味でやっている自転車のパーツを海外通販で買うことがあり、たまによく分からない部品が事務所に届きます。

海外発送を行っている業者のサイトではチャットサービスを用意していることが多く、製品の細かいスペックや納期など、知りたいと思ったことをその場ですぐに質問することができるそうです。Webでキーワード検索して正しい情報を探し求めなくても、迅速かつ正確な答えが戻ってくる。これはAmazonや楽天だけで買い物をしていてはできない経験です。

おそらくそのチャット相手は単なるオペレーターではなく、実際に商品を扱っている人が対応しているのでしょう。このような経験をすると、チャット機能というものをまた使いたいと思うようになるもの。単にチャット機能で何ができるかということだけでなく、どう活用すればどのような印象を受けるか、そこで何が大切かというようなことは、実際に自分で経験してみないとわからないものなのです。

さまざまな買う経験の蓄積が、新しい営業のやり方を考えるヒントになる

Webと電話だけの営業、海外通販のチャット機能、どちらの例も自分で実際に買う経験をしてみることの大切さを教えてくれました。

新しい営業のやり方について考えるにあたっては、売る側の事例などを情報収集して考えるだけでなく、自分は消費者、ユーザーでもあるということを活かして、色々な経験をすることが大切ではないでしょうか。この経験が、新しい営業のやり方を考えるための引き出しの多さにつながるのだと思うのです。

営業を考える上で参考になるアイデアは、日常の消費者としての経験の中にもたくさんありますし、自社の購買担当者から話を聞くことにも意味があるでしょう。これからの営業企画担当者や営業マネージャにとって、そのように買うことに対してのアンテナを高くしておくことも必要なことだと思います。

そうして蓄積した自らの買う経験をもとに、自社の顧客がどんなアプローチをされたらと嬉しいと感じるか、積極的に受け入れてくれるかを考える。そういう想像力を働かせることができることが、これから大切になってくるのだと思います。