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営業担当者に話を聞くと、ほとんどの方が「このお客さんに行くのが楽しみ」という顧客を持っています。
「昔からの気の置けない付き合いだから」
「担当者と趣味の話もできるから」
「事務所の雰囲気が明るく、みんな気軽に声を掛けてくれるから」
理由はさまざまですが、そのような顧客と打合せをするのは確かに気持ちのよいものです。

ということは、顧客から見たときに「この営業担当者との打合せは楽しいな。価値があるな」という打合せも、「つまらない。価値がない」という打合せもあるはず。このような顧客が感じる購買プロセスの中での価値は、営業結果にどう影響するのでしょうか。

今回のトライツブログでは、顧客が購買プロセスで感じる価値とその影響について、最新の調査データをもとに考えてみたいと思います。

調査データから見る「購買プロセスで顧客が感じる価値」

米国のマーケットリサーチ会社PeopleMetrics社の最新の調査データ「Start Your Winning Streak : 7 Lessons for the Modern B2B Sales Leader」の中に、B2B企業の購買プロセスについての興味深いデータがいくつかありましたので、抜粋してご紹介したいと思います。

データ1:B2B企業は1件平均で86時間もの工数をかけて購買している!

B2B企業は1件の購買に対して、なんと86時間もかけて購買しています。この時間は購買金額に比例し、250万円未満の案件であれば33時間であるのに対し、5,000万円以上の大型案件になると127時間という膨大な時間をかけているのです。

データ2:顧客から選ばれるカギは「購買プロセスで感じる価値」

購買プロセスに価値を感じている顧客は、そうでない顧客と比べて以下のような傾向があります。

✓契約金額が高くなる
価値を感じてもらえている商談は、そうでない商談よりも契約金額が約1,000万円高い

✓受注確率が高くなる
失注した顧客は、受注した顧客の6倍もの割合で顧客から「打合せに価値がなかった」と思われている

✓周りにクチコミしてくれる
購買プロセスに価値を感じている顧客のうち70%が、周りにクチコミをしてくれる

この調査データの柱となるのが、上に述べた購買プロセスで顧客が感じる価値です。データ1で紹介したような長丁場の購買プロセスの中で行われる営業担当者との打合せで「良い打合せができた」「打合せをして良かった」と価値を感じることが非常に大事なのです。

データ3:営業担当者の5つの振る舞いが、購買プロセスでの価値につながる

では、購買プロセスで顧客に価値を感じてもらうためにはどうすればよいのでしょうか。それもこの調査は明らかにしてくれています。

この調査では、購買プロセスでの顧客価値につながる営業担当者の特性として、以下の5つが明らかになりました。

①レスポンスの良さ
打合せの前後に、きちんとかつタイミングよく顧客をフォローする

②しっかりとした準備
前回の打合せや会話で約束した資料を用意するなど、準備をこなして打合せに臨む

③ヒアリングの技術
顧客にとって良い(考えさせる)質問をし、顧客の課題を理解しようと積極的に話を聞く

④専門知識
顧客の課題や要望に合わせた、専門的な情報を提供する

⑤洞察力
顧客のビジネス環境に合わせて、顧客にとって価値のあるアドバイスを提供する

この5つの特性が多く揃っているほど、購買プロセスにおける顧客にとっての価値は高まります。つまり、これらの特性は単独で高めていくのではなく、組み合わせて活用することが大事なのです。

購買プロセスを通じて価値を提供しながら、顧客の購買プロセスを進める

これらの調査結果が教えてくれることは何でしょうか?
それは、1回1回の打合せのたびごとに「良い打合せができた」「○○さんと打合せをして良かった」と顧客に感じてもらわないと商談がうまくいかない、ということです。実際に、打合せの後にエレベーターホールまで歩きながら、「今日は打合せをして良かった」という感想を言ってもらえている商談は、うまくいくことが多いと感じる方も多いでしょう。

確かに、顧客が商談に対して価値を感じていない状態でプロセスだけが前に進んでいく、というケースもないことはありません。ただ、そのような商談は徐々に雰囲気がしらけていってしまうので、次のアポイントが取りにくくなり、結果的にうまくいかないことをよく見かけます。

これまでのトライツブログでも述べてきたように顧客の購買プロセスを進めることに加え、1回1回の商談で顧客に価値を感じてもらうこと。その積み重ねがB2B営業を成功させるためには不可欠なのです。

顧客の良き相談相手になり、価値を積み重ねていこう!

Webなどの進歩により、顧客は営業担当者と会う前に多くの情報を集められるようになり、長い時間をかけて自分で情報収集するようになりました。しかし、今回のデータからも分かるように、高額な商品・サービスを買おうとするB2B顧客の多くはWebだけで購買を完結することを望んでおらず、良い打合せのできる良き相談相手を求めているようです。

この調査データは最後に以下のような文で締めくくられています。

B2Bの購買担当者は、自社の課題や市場にあるソリューションについて、各社の営業担当者と話をする前に長い時間をかけて勉強しています。しかし、最終的には購買プロセスを通じて価値を提供してくれる企業を選ぶのです。

「毎回の打合せで自社が顧客に対して価値を提供できているか?」
「顧客の購買プロセス全体を通じて価値を積み重ねられているか?」
まずは、自分たちが購買プロセスを通じて顧客に価値を与えられているかどうかを知ることから始めてみてはいかがでしょう。今回紹介した調査データでは、(米国では)81%の購買担当者は購買プロセスに価値を感じているかどうかについて教えてくれる、という結果が出ています。

 

参考:『Start Your Winning Streak : 7 Lessons for the Modern B2B Sales Leader