B2B営業における商談は、営業からはただの「商談」にしか見えなくても、顧客にとっては「プロジェクト」であることがよくあります。

例えば、Web会議システムやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入、オフィス環境のリニューアルなどの商談は顧客から見ると「働き方改革プロジェクト」の一部であったりします。そうなると、当然のことながら顧客のプロジェクト自体が前に進まないと、これらの商談はうまく行きません。

今回のトライツブログでは、トライツのコンサルティング事例をもとに、商談を顧客プロジェクトとして捉え、それをマネジメントすることの意味について考えたいと思います。

コンサルティング事例:顧客の商品開発プロジェクトに関わろう!

ある原料メーカーの営業部門は、商談の受注確率で悩んでいました。顧客である消費財メーカーは各社とも定期的に新商品を開発し、発売します。そのため「なにか面白い原料はないか」と問い合わせをもらうことが多く、商談の数で困るということはほとんどありませんでした。

しかし、どうも商談が途中で止まってしまうことが多かったのです。「良い提案だったのですが、今回は新商品の発売自体が見送りになりました」「別のテーマの優先順位が上がりました」などと言われ、なかなか最終的に商品化される=原料が採用される数が増えない状態が続いていました。

この状況を営業マネージャーや本社の営業企画メンバーと検討した結果、分かったのが「顧客は原料選びに悩んでいるのではない。それより、商品開発プロジェクト自体を進めることに苦労しているのだ」ということでした。そこで、「顧客の商品開発プロジェクト推進に積極的に関わろう!」と決めたのです。

プロジェクト推進支援が営業を顧客にとって不可欠な存在に変えた

この決定は、その部門の営業スタイルを大きく変えるものでした。それまでの「自社商品を紹介して問い合わせに対応する営業スタイル」から、顧客の商品開発についての課題や悩みを聞き出して解決することで「商品開発プロジェクトの推進支援」をする営業スタイルへ大幅に転換することになったのです。

やがて、顧客の試作が上手くいかないと分かると一緒に問題分析をして次の試作計画を考えたり、商品コンセプトの検討が難航していると聞くと原料メーカーとしての立場からコンセプト案を提案するなど、これまでやらなかったことをやる営業スタイルに大きく変わりました。

そして、一部のメンバーはそれだけにとどまらず、顧客の商品開発プロジェクトのスケジュールを顧客と共有し、「次の開発会議までにどんな準備が必要か」「マーケティング部で売上試算するためにどんなデータが必要か」などプロジェクト全体をリードするようになっていきました。その結果、当然のように顧客のプロジェクト会議に呼ばれるようになりました。

原料メーカーの営業担当者が、顧客の商品開発プロジェクトに不可欠な存在になり、原料の採用も増えていったのです。

顧客と一体化できる「顧客プロジェクトマネジメント型営業」

このような営業スタイルには一般的に名前はついていません。あえて名前を付けるとしたら「顧客プロジェクトマネジメント型営業」となるでしょうか。

これは営業担当者があたかも顧客におけるプロジェクトのコアメンバーのように、プロジェクトの全体像を見ながら次に何に取り組むべきなのか顧客と一緒に考えながら進めていきます。一般的な営業活動のように、顧客からの依頼を受けて対応するのではなく、一緒に計画し、一緒に検討する「顧客と一体化した営業」であり、根本的に営業のスタンスや関わり方を変えたため、顧客との関係が変わり、成果が出たのです。

では、なぜこの企業の営業メンバーは「顧客プロジェクトマネジメント型営業」への転換を成し遂げることができたのでしょうか。

ポイント1.長期化・複雑化したプロジェクト推進への支援ニーズの高まり

この背景には、顧客が長期化・複雑化した商品開発プロジェクトに課題を抱えており、それを推進するために外部の支援を必要としていたことがありました。

実際に顧客である大手消費財メーカーでは、以前は課長クラスが新商品の発売を決めていたのですが、今では役員会議を通らないと新商品が発売できなくなっていました。このように、意思決定がより慎重に、面倒くさくなっている、言い換えると意思決定プロセスが長期化・複雑化している現象は多くの日本企業で起きており、この企業の顧客の多くもそのような状況だったのです。

ポイント2.営業現場が陥りがちな「思考のブレーキ」を外すことができた

顧客の長くて複雑な意思決定プロセスに関わっていくと、顧客の社内事情に振り回されてしまい面倒な仕事に巻き込まれてしまうことがあります。そうすると、
「むやみに首を突っ込むと、やることが多くなって大変」
「お客さまに頼まれてもいないのに勝手に動くのは失礼」
「手伝ってもどうせ社内で評価されない」
などと、顧客から止められてもいないのに自分自身で営業活動にブレーキをかけてしまいがちです。

このような思考停止状態になっている営業メンバーに対して、「そんなことは気にせずに、お客さまのプロジェクトの支援をしよう!」などといくらハッパをかけたところで、営業メンバーは動くことができません。

そこでトライツは「顧客のプロジェクトを先に進めるために必要なことはなにか」「その中でこの企業が実際にできることはなにか」を徹底的に具体化し続けました。それに加えて、顧客のプロジェクトを進捗させる方向で関わることができそうなツール作りや資料作りといったお膳立てをし、営業メンバーが具体的かつ現実的に「これをやればいいんだ!」という目の前のアクションを提示することで思考のブレーキを外していきました。

ポイント3.顧客プロジェクトマネジメント型営業に合わせて営業のマネジメントを変えた

このようにして、顧客から求められ、さらに営業担当者の動き方を変えても、営業活動のマネジメントのあり方が従来のままでは「なんでそんなことをやっているんだ」「早く数字にしろ」となり、この事例のように顧客プロジェクトマネジメント型営業が定着することはありません。

そこで、商談の進捗状況を従来のような「課題ヒアリング」「提案」「見積」といった「自社の営業が何をしたか」から、「情報収集」「試作」「商品化決定」「製造準備」のように「顧客の商品開発プロジェクトがどこまで進んでいるか」で測るように変えました。

これにより、営業担当者だけでなく営業マネージャーから営業担当役員まで全員が、顧客の商品開発プロジェクトに意識を向けるようになりました。顧客のプロジェクトの進捗に焦点を当てたマネジメントを行うようになったのです。

この営業マネジメントのあり方の変化がなければ、営業手法の転換とその定着はかなり厳しいものになっていたはずです。

顧客プロジェクトマネジメント型営業を営業戦略に取り入れよう

このように「顧客プロジェクトマネジメント型営業」を行うためにはいくつかのポイントがあります。また、顧客の要望に応えていく営業と比べて営業自身の手間や資料やツール作成と言った営業支援の手間もかかるため、それだけのリソースをかけて行うべき顧客を見極める必要もあります。

ただ、何よりも重要なことは、商談そのものを「自社商品・サービスを売るための活動」とする従来型の考え方ではなく、「顧客プロジェクト」として捉え、どうすればそれが進捗させられるかを考え、必要な準備を行い、マネジメントするということです。

多くのB2B企業には、顧客と寄り添って仕事をしてきた実績があり、優秀な営業担当者に優秀な技術・サービス部門が揃っています。そのリソースをもってすれば、顧客企業のプロジェクト推進を支援し、ときにはリードすることもできるのです。

実際にこの事例の企業でも、大口受注に成功したことはもちろん、メンバーと次世代リーダーの育成や、新たな組織のあり方の方向性が見えるなどいろいろな成果を上げることにつながりました。

社内で重要顧客攻略の取り組みをいろいろやっているものの、期待する成果が出ていない・・・などというお悩みを抱えておられる方、顧客とのスタンスから大きく変える「顧客プロジェクトマネジメント型営業」を営業戦略として取り入れてみてはいかがでしょうか。

詳しく知りたい、導入について相談したい方はぜひトライツにお問い合わせください。