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「提案型営業」や「ソリューション型営業」のように、営業のやり方を「○○型営業」と表現することがよくあります。最近は「質問型営業」というタイトルの営業本が増えているようです。

この「○○型営業」は、
「物売りをやめて、ソリューションを売るソリューション型営業ができるようになろう!」
「こちらから一方的にしゃべるのではなく、もっと顧客の話を聞く質問型営業を目指そう!」
というように、これまでの自分たちの営業スタイルや他社もやっている営業スタイルから脱け出して、これから自分たちはどのような営業スタイルで営業したいのかを表現するために使われます。その意味では、今後目指したい営業のやり方を「○○型営業」と表すことは、自社の営業担当者向けの社内ブランディングであり、その営業担当者を通じて自分たちの営業スタイルを顧客に知ってもらうことで最終的に自社のブランディングにもつながる大事な考え方なのです。

今回のトライツブログは、「○○型営業」と自社の営業スタイルをブランディングすることについてご紹介します。

自社の営業は何を大事にするのか?

「○○型営業」と自社の営業スタイルに名前を付ける一番の狙いは、「自分たちの営業は何を大事にするのか?」「自分たちの営業活動の中で顧客にとっての一番の価値は何か?」を分かりやすく簡潔に社内で共有することにあります。営業マニュアルの長々しい説明を読まされてもなかなか自社の営業の核心はつかめませんが、適切な名前がついていれば営業担当者も本社幹部も何が自社の営業で一番大事なことなのかを一瞬でイメージできるようになります。

ただし、色々な営業組織で話を聞いていると「○○型営業」があまりうまくいっていない、という声をよく耳にします。
「提案型営業って言っているけど、結局やっていることは以前と変わらないよ」
「うちのソリューション型営業は、提案する商品名が『ナントカソリューション』に変わっただけ」
せっかく新しい営業スタイルを浸透させようとしているものの、掛け声だけで終わっていたり実態は何も変わらなかったりということがままあります。

借り物の「○○型営業」はもうやめよう!

そのように営業ブランディングが形骸化してしまっている営業組織では、世の中でよく言われている「ソリューション型営業」や「コンサルティング営業」という言葉をそのまま借用してしまっていることが多いように思われます。「美しい」や「美味しい」のように世の中で当たり前に使われている言葉では、他社と差別化できずブランドとして使えません。それとまったく同じように、自社の営業スタイルを世間で当たり前に使われている「ソリューション」や「提案型」のような手垢のついた言葉で表すことが、営業ブランディングの形骸化につながってしまうのです。

借り物の「○○型営業」が形骸化につながってしまう理由には以下のようなものがあります。

  • よくある「○○型営業」では、自社が大事にしていることや特徴の細かいニュアンスが伝わらず、愛着が湧かない。
  • 色々な本や記事で「○○型営業」という言葉が様々な意味で使われているため、人によってバラバラに捉えてバラバラに営業活動してしまう。
  • 「○○型営業はもう古い!」という本や記事が出てくることで、「やっぱりこの営業スタイルでは成果が出ないのかな?」と営業担当者や本社幹部がムダに動揺してしまう。

このように、借り物の「○○型営業」を使うことは百害あって一利なしです。大事なことは、どこの会社も使っていないオリジナルの「○○型営業」を見つけることです。オリジナルで自社にピッタリ合った「○○型営業」を見つけられれば、他社にはない自社の営業の特徴を的確に表現することができますし、その言葉の意味を正しく解説することで社内での意味の捉え違いを防げ、何より愛着と誇りをもってその表現を積極的に使うようになるのです。

オリジナルの「○○型営業」を見つけよう!

それでは、具体的にどのようにすれば自社にピッタリ合ったオリジナルの「○○型営業」を見つけられるようになるのでしょうか?
大きく分けて2つの見つけ方があります。

1つ目の見つけ方は、自分たちが営業活動をする上での特徴的なスタンス・考え方を一言で表してみることです。
あるB2Bのサービス業では、自分たちの営業が目指すのは顧客の問題解決だけではなく、顧客組織の変革を支援するためのソリューションを考えてそれを提供することだと決め、その営業スタイルに「変革支援型営業」という名前を付けました。
このように、競合他社がまだ目を付けていないところを先取りして「○○型営業」「○○セールス」と一言で表現できれば、自社の営業を他社から差別化できる分かりやすい表現となります。

自分たちの営業活動で大事にしたいことが一言で表せない場合は、2つ目の見つけ方として「アクロニム」という方法があります。アクロニムとはNASA(National Aeronautics and Space Administration)やAPEC(Asia-Pacific Economic Cooperation)のように、複数の英単語の頭文字をつなげて読む読み方です。
ある機械メーカーでは、卸向けのルート営業スタイルから脱却してより専門性の高い顧客志向のソリューション営業に変化しようとしたときに、「PROfessional, Market-In Solution Engineer」というフレーズから「PROMISE」というキーワードをつくりました。
大事なポイントをどうしても一言では表せないときは、アクロニムで考えてみるのも一つの方策です。

オリジナルの「○○型営業」を考えていく中で一番大事なのは、
「自社の営業活動で一番大事にしたいことは何か?」
「顧客は自社の営業活動のうち、どこに価値を認めているのか?」
「顧客にどのような営業だと思ってもらいたいか?」
を改めて考えて言葉にすることです。

トライツコンサルティングでは、クライアントに新しい営業スタイルを導入する時に、このオリジナルの「〇〇型営業」をよく使います。その方が営業改革の目的や主旨の理解が深まり、営業スタイルの定着が早まるからです。具体的にどのように進めれば良いのか知りたい、という方は下記よりお気軽にお問い合わせください。