営業戦略

加速する購買のWeb化「B2Uモデル」でB2B営業が変わる!?

加速する購買のWeb化「B2Uモデル」でB2B営業が変わる!?

3年前の2015年のトライツニュース「2020年までに営業担当者の5人に1人がいなくなる?」で、Forrester Research社の衝撃的なタイトルの調査レポート「B2Bセールスマンの死」をご紹介しました。「購買のWeb化が進むことで、ただ単に注文を受け付けるような営業の仕事が置き換えられていく」というものです。

この調査レポートですが、実は最近Forrester Research社が継続調査した結果を発表しています。前回の調査から2年半が経過してどのような変化があったのか。そして、現実の世界では顧客の購買の仕方にどのようなことが起きているのか。今週のトライツニュースでは、「購買のWeb化が進むB2Bにおける新しい営業モデル」について考えてみたいと思います。

「続・B2Bセールスマンの死」が示す購買のWeb化の加速

Forrester Research社が2年半ぶりに実施した調査の結果、2015年には53%のB2B購買担当者が「営業マンと接する代わりに、自分でWeb等を使って情報収集することを好む」と答えたのに対し、最新の調査ではその割合は68%まで上昇していることが分かりました。ほんの数年のことですが、購買のWeb化は着実に進んできているようです。

では、このように購買のWeb化が進むと、B2Bの営業モデルはどのように変わっていくのでしょうか?B2B向けに業務システムを提供しているPactSafe社の「The Revolution of Instant Gratification in B2B Sales」という記事がそのヒントになるかもしれません。この記事では、B2Bの世界で起きている営業の仕方の変化を「B2U」と名付けています。その内容について、以下抜粋してご紹介します。

調査レポート「B2BはB2Uに変わる?」

今日では、商品やサービスを提供・販売するやり方が、顧客にとってより効率的でセルフサービス化が進んでいます。そのポイントは以下のとおりです。
●1ステップで申込が完結
●自動でセットアップ
●ユーザー主導で商品・サービスが社内で拡大

記事ではこのように変化しつつあるビジネスモデルを、「B2U(Business to User)モデル」と呼んでいます。その具体的な内容は、以下の説明を読んでいただけるとお分かりいただけると思います。

このB2Uモデルは従来の営業プロセスをショートカットします。意思決定者に対してプレゼンテーションをすることがなくなり、直接エンドユーザーに対してアプローチすることになります。そして、一人のユーザーが商品を使い始めると、それが同僚へと広がっていきます。組織の中で皆が使うようになると、「多くのユーザーたちが組織全体でこの商品を使いたい」「有償で使えるようになる機能を使いたい」と意思決定者に要望するようになるのです。

記事では、このB2Uモデルの成功事例として、MAツールのHubSpotや、ファイル共有ソフトのDropbox、米国で急成長を遂げているコミュニケーションツールのSlackを挙げています。Slackは昨秋日本市場にも上陸し、SNSや車内広告などで積極的にプロモーションをしているので、ご存知の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ソフトウェア・アプリケーション市場で広がるB2Uモデル

このB2Uモデルは、業務用のソフトウェア/アプリケーションを中心に日本でも広まりつつあります。名刺共有ソフトのSansanは、個人向け名刺アプリの『Eight』と法人向け名刺管理サービスの『Sansan』の2つのサービスを展開しています。これも、Eightを利用して満足を感じている個人ユーザーが社内に広がり、皆が使っているなら組織としてSansanを本格導入する、というB2Uモデルのビジネスであると言えます。

B2Uというモデルは、従来型の業務システムの営業モデルとは大きく異なります。従来型のモデルですと記事にもあったように、まずは意思決定者にプレゼンテーションをすることから始まり、現状の業務の進め方と現場で感じている課題を調査して仕様を詰めて、現場の管理者などにデモを見せてフィードバックをもらい、という気の遠くなるような手順を踏みます。このような手順をショートカットし、まずは現場のユーザーに気軽に使ってもらうことから始めるのがB2Uモデルなのです。

このB2Uモデルですが、現時点では使える業種はまだ限られています。座りやすいものがいいからといって、オフィスの中で一人だけデザインの違うオフィスチェアをレンタルで使うことは難しいでしょうし、ましてや工場の工員が最新の生産機械を1台こっそり使ってみるなんてことはできないでしょう。個人で気軽に試してみることができて、潜在的なユーザーが社内にたくさんいる業務用のソフトウェアやアプリケーションが中心になると思います。

では、それ以外の商品を売っている営業組織には、このB2Uという営業モデルはまったく無関係なのかと言うと、そうではありません。

B2Uの登場で、組織の変革・改善のやり方がユーザー主導型に変わってきた

B2Uモデルが当てはまるDropboxやSlackやEight(Sansan)は、ビジネスマンが仕事を効率化するために使うツールですので、「業務改善」の1つだと言えます。このB2Uモデルが米国を中心に広まってきているということは、社内での業務システムの導入や業務改善が、従来のトップダウン型からユーザー主導型へと変わりつつある、とも言えるのではないでしょうか。

この観点で日本企業を見てみると、まだまだトップダウンでシステムを導入し現場が使いあぐねていたり、それに伴って現場が自分たちで工夫して独自に活用しているクラウドサービスを使うのをやめさせたりしているところも多いように思われます。

システムの利用がユーザー主導になりつつある現在、営業企画やシステム、総務などの管理・スタッフ部門の役割として、現場が独自にやっていることを規制するのではなく、現場で行われている工夫を興味深く見守りながらそれが良いものであれば組織の中に広げていく、ということが求められるようになってきているのだと思います。このように、B2Uというモデルの登場・拡大は、単に営業モデルの変化だけではなく、組織としての変革・改善のやり方の変化も映し出しているのです。

「顧客の購買の仕方の変化」と「業務システム導入や業務改善の始め方の変化」という2つの観点で、今回ご紹介した「B2Uモデル」はとても興味深いキーワードだと思います。これからもトライツニュースではB2B営業・マーケティングに関する最新のトレンドやキーワードをご紹介していきますので、引き続きご期待ください。

参考:「The Revolution of Instant Gratification in B2B Sales」(PactSafe, Jan 25, 2018)

投稿者プロフィール

寺島 孝輔
実際に現場で成果が出るまでお手伝いします。現場の力を引き出し、現場に新しいアイデアを加えることで、顧客から選ばれるビジネスへの変革を実現します。
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