営業戦略

B2B営業における統計活用のススメ:何を売るかを考える第3のアプローチ

B2B営業における統計活用のススメ:何を売るかを考える第3のアプローチ

雇用統計に国際収支統計など、新聞や雑誌では統計に関する記事を目にしない日はまれです。また、私たちが普段から使っているAmazonなどのECサイトでも、売上ランキングやおすすめ商品などさまざまな統計データが扱われています。

しかし、B2B営業の世界では、あまり売上や顧客のデータが統計的手法を使って分析されているのをあまり目にしないように思います。では、B2B営業に統計は役立たないのでしょうか?

今回のトライツニュースでは、B2B営業における統計的アプローチについて考えてみたいと思います。

大量のローデータだけでは売上の傾向を読み取れない

先日、あるクライアント企業の過去5年間の売上データを預り、そこから販売傾向を読み取って今後の提案の進め方の参考にしよう、というレポートを作成し報告する場面がありました。

大量に溢れるデータを色々な角度から眺めることで、さまざまな知見を得ることができましたが、中でも皆さんからの反応が特に良かったのが「商品同士の売上の相関分析」でした。どういう分析かと言うと、5年間の顧客別・商品別の売上の伸び(伸長率)を計算し、どの商品同士の売上が一緒に伸びやすいのか、つまり商品Aを買ってくれる顧客に併せて買ってもらいやすい商品は何か、を調べたものでした。

下のサンプルデータを見てください。この表だけを見ていても「商品GとHが伸び悩んでいるな」「商品Bの売上が落ちている顧客が結構多いな」ということくらいしか分からず、これを提案の進め方に活かそうとしても「商品B、G、Hは外してそれ以外の伸びている商品を提案しよう」としかなりません。そして何より、無味乾燥な数字の羅列は、この表から何かを読み取ってやろうという読み手のやる気を削いでしまうものです。

図1

統計を活用すれば顧客への提案のヒントが見つけられる

しかし、このデータに対して相関分析(正確には偏相関分析)という統計手法を使うことで、下の図を作ることが可能になります。この図は、大量のデータの中から統計的に確かに相関関係があると言える商品同士を線で結んだものです。これを見ると、商品Aを買ってくれる顧客は商品EとJを買ってもらいやすいことが分かりますし、商品Jを買ってくれればさらにその先に商品IやBの提案もしやすそうだということが分かります。また、商品GとHは他の商品とは相関関係がなく、組み合わせて提案するのは難しそうだということも見て取れます。

図2

例えば商品Aだけを買ってもらっている顧客にこのアイデアを活用すると、
「商品E、D、Cの組合せ提案」
「商品E、Fの組合せ提案」
「商品J、I、Bの組合せ提案」
の3パターンで提案をしてみよう、といったことを考えられるようになるのです。

統計解析を使いこなすB2Cと、統計解析に手を出さないB2B

このような商品同士の相関関係を調べるというのは、売上データ分析の基本中の基本で、B2C企業の多くでは当たり前に実施されています。例えば小売業であれば、店頭のPOSデータと自社のポイントカードのデータを使うことで、先に見たような商品同士の相関関係にさらに顧客の年代別・性別ごとの傾向や季節変動などの要素を組み合わせて分析をしています。

その一方でB2B企業では大手の企業であっても、売上データや顧客データを統計解析しているところはあまり多くないように思います。実際に、冒頭の分析をおこなった企業もしっかりとした基幹システムを持っていて、そこから売上データを簡単に取り出すためのデータベースも構築しており、申し分のない環境でした。IT化が遅れているというわけでは決してなかったのです。

しかし、多くのB2B企業はB2C企業と比べて顧客数が少なく、またそれぞれの顧客の顔がよく見えているので、すべての顧客データに対して統計処理をすることよりも、個々の顧客の事情を正確に分析することの方が優先されてきたこと。また、これまではBI(Business Intelligence)ツールや統計ソフトが高額でかつ専門家向けのものであったために、おいそれと手を出しにくかったこと。こういった理由があって、B2B企業での売上・顧客データの統計的活用があまり進んでいなかったように思われます。

B2Bでも統計に取り組みやすい環境が整ってきた

ところが最近では、B2B企業でもデータの統計的活用に取り組みやすくなってきているように感じます。「ビッグデータ」や「データサイエンス」という言葉が流行っているように、大量のデータの中に潜んでいる関係やルールを自社の事業に活用しよう、という機運が多くの産業で高まっています。そのため、データサイエンティストと言われる高度なデータ分析ができる人材の不足が社会的な問題にもなっています。

また、安価にまたは無料で統計ソフトを使用することができるようにもなってきました。例えば、オープンソースで無料の統計ソフト「R」が登場してから今年で20年になります。世界中の統計家や開発者がさまざまな専門性の高いパッケージを開発・公表してくれているおかげで、これまでは高額な統計ソフトのさらに高額な追加パッケージを導入しないとできなかったような高度な分析を無料でできるようになりました。ここ数年のRの成長はすさまじく、書店の統計コーナーの中で一番解説書が多い統計ソフトとなっています。

他にも、以前の統計ソフトとは比べものにならない安さで使える統計ソフトも増えてきました。中でも、エクセルのアドインとして使えて、かつ全面日本語対応している「エクセル統計」(株式会社 社会情報サービス)は、基本的な統計手法を押さえているので、「統計ソフトでどんなことができるのか試してみたい」という企業にはうってつけです。ちなみに上で紹介した統計解析のサンプルでも、このエクセル統計を使っています。
※Rは一部日本語化されていますが、基本的には英語のソフトです。

何を売るかを考える「第3のアプローチ」

顧客に何を売るのかを決めるとき、B2B企業ではこれまでは
「自社が売りたい商品を売る」
「顧客に欲しいと言われた商品を売る」
の2つのアプローチがメインであったように思われます。

これに対し、これまでの売上データや顧客データを活用すれば、「売れる傾向のあるものを関連付けて売る」という第3のアプローチを手に入れることができるようになります。そしてそのアプローチに基づいて自社内にあるデータをうまく活用すれば、一緒に売れる傾向のある商品を組み合わせた用途やメニューの提案もできるようになるでしょう。

今巷には多くの統計についての本や、安価で使い勝手の良い統計ソフトがあふれています。書店やWebサイトを見て、ビジネスでどのように統計的手法が活用されているのかを眺めてみる。そんなことから、自社にとっての第3のアプローチについて考えてみてはいかがでしょうか。

投稿者プロフィール

寺島 孝輔
実際に現場で成果が出るまでお手伝いします。現場の力を引き出し、現場に新しいアイデアを加えることで、顧客から選ばれるビジネスへの変革を実現します。
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