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この記事を書いているのは2024年の10月1日。10月と言えば4月や7月と並ぶ異動の時期ですね。皆さんの周りや顧客でも、異動の対象になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。 

日々営業活動している顧客で異動が起きると必要なのが、顧客の組織体制や新たに来られたキーパーソンについての情報収集と整理です。SFA/CRMに登録している人も、Eightなどの名刺情報管理ソフトにメモを入れている人も、はたまた名刺ホルダーや紙の手帳で管理されている人もいらっしゃるでしょう。 

しかし、このような顧客の組織体制やキーパーソン情報は個人の頭の中やスマホなどの中にため込まれるだけで、組織のナレッジとして活用されていない、ということが往々にして起こっています。そこで今回は異動の季節にちなんで、顧客の組織体制/キーパーソン情報の整理の仕方について考えてみます。「いい整理の仕方が見つからない」という方も、「メンバーの持っている情報を集めて営業活動の質の向上につなげたい」という方も、ぜひお読みください。 

SFAに名刺情報管理ソフト、デジタル化が進んでいるものの営業にとっては使いにくいまま 

SFAや各種ツールの普及によって、名刺頼みだった顧客の組織体制/キーパーソン情報の管理にもデジタル化が進んでいます。ただ、確かに情報はデジタル化されてはいるものの、営業にとって使いやすいものになっているかというと、そうではないようです。 

SFA/CRMに登録していても、忙しいとついつい更新するのを忘れてしまうもの。いざ使おうと見てみたら何年も昔の情報で、まったく使えないということになってしまいがちです。 

Eightなどの名刺情報管理ソフトは写真を撮るだけで簡単に登録できる優れものですが、いざ顧客企業の関係者の情報をまとめて見ようとすると、スマホの画面を延々スクロールするか大量の文字データ(CSVファイル)をダウンロードするしかありません。 

また、システム手帳で管理されている人も、頭の中にバッチリ記憶している人も、周りに共有しようとするには、ホワイトボードなどに改めて書き出すか、古事記や平家物語のように話して伝えるしかありません。 

せっかく大事な顧客情報を収集していても、実際にそれを使うのはかなり面倒なのが実態なのです。 

トライツが開発した顧客情報の整理法「つながりマップ」 

そのような場面に何度も遭遇した結果、トライツとして開発したのが「つながりマップ」という整理法です。百聞は一見に如かずといいますので、どのようなものかは下図をご覧ください。 

図の中には顧客である「○○食品株式会社」という企業の組織とキーパーソンが記されています。上に社長と常務取締役がいて、左から購買部、製造部、技術部、商品開発部、マーケティング部と並んで、一番右には営業本部があります。そして各部署の中での部長や課長/GL(グループリーダー)といったキーパーソンの名前と、自社との接点や担当業務、個人の経歴や特徴といった情報が箇条書きで記載されています。 

「つながりマップ」が組織図とは異なる3つのポイント 

一見して、この「つながりマップ」がいわゆる組織図とはまったくの別物だということがお分かりいただけるかと思います。 

まず、この「つながりマップ」は顧客の購買業務の流れを意識して作っています。右側の営業本部や商品開発部、マーケティング本部で次期の新製品や、既存製品のリニューアルの計画が検討され、そこで使用する原料や素材が左の開発部や技術部に伝えられて、最後に一番左の購買に調達依頼が出る、というのがこの○○食品株式会社の業務プロセスです。このプロセスがわかるように部署間の「つながり」と位置関係をデザインしています。 

また、各部署での人間関係もキーパーソンの「つながり」からわかるようにしています。例えば中央下のマーケティング部の吉田部長と富山課長が不仲であったり、中央上の商品開発部の鈴木部長は意思決定者かつキーパーソンでありながら、自社との接点を持てていません。このように顧客社内間および自社との接点/関係性も情報に含めています。 

そして最後に、各キーパーソンのこれまでの経歴や特徴/志向といった情報も記載しています。これらの情報があることで、新規商談の発掘や既存商談の受注のために、顧客の誰にどのように働きかければよいかを考えやすくなるのです。 

自社関係部署/関係者と顧客の取引先を書き足せば「つながりマップ」完成 

このように顧客の組織体制/キーパーソン情報を整理したら、左に自社の関係部署/関係者、右に顧客の先の取引先を付け加えれば、「つながりマップ」の完成です。 

1つめのマップができれば更新や改編は意外と簡単 

ここまでご覧いただき、「確かにこんなのがあったら便利そうだけど、作るのが大変そう」と思われる方もいらっしゃるでしょう。 

色々な業種でこの「つながりマップ」を作ってきましたが、確かに大変です。そのためすべての担当顧客で作って更新するというのは現実的ではありません。「確実に受注したい商談がある」「新たなニーズを掘り起こして取引を広げたい」「新たな窓口を増やしたい」といった、「その顧客のために時間をかけてでも作戦を考える必要がある」顧客に限って作るというのがよいと思います。 

また、一度出来上がってしまえば、半年に一回の人事異動や組織体制変更に応じてマップを更新するのは、さほどの手間ではないそうです。また、部署名やその位置づけは同じ業界の企業であれば似通っていることが多いため、1社で作成したものをベースに他の顧客でも作ってみるというのも比較的簡単にできると聞いています。最初の1社さえできてしまえば、あとは比較的容易に広げられるものなのです。 

「つながりマップ」の作り方 

それでは、その最初の1社の「つながりマップ」をどう作ればいいのでしょうか。 

先ほどご紹介した図のようにPowerPointで図解するというのも1つのやり方ですが、それ以外にもPowerPointやExcelなどの中にあるSmartArtの「階層構造」を使ってベースを作り、そこにテキストで情報を追加するというのも、皆さんにとってもなじみやすい手法でしょう。 

また、Canva(キャンバ)などの図形描画ソフトが使える方は、それを使うとより簡単にデザインもきれいなマップを作ることができます。 

そしてもちろん、トライツと一緒に新規商談獲得などのプロジェクトに取り組む、というのも作成の手間をかけずに1つめの「つながりマップ」を手に入れるチャンスです。「つながりマップ」を使って新規顧客攻略や、既存の取引拡大に取り組みたいという方はぜひご相談ください。 

「つながりマップ」を参考にして顧客攻略の作戦会議の質を上げよう 

ここまで、トライツが日々のコンサルティングの中で開発・発展させてきた「つながりマップ」についてご紹介しました。一般的な組織図とは異なり、顧客攻略の作戦会議のために特化した組織体制/キーパーソン情報整理ツールとなっています。顧客情報整理の1つの技として、参考にしてみてください。 

参考:「予算達成!法人営業7つのツール」(角川淳、日本経済新聞出版社、2016年