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B2Bの営業であれば、顧客と会って話をしてすぐに受注ということはまずありません。いくら目の前の相手が買いたいと思ってくれていても、関係するメンバーや部署へのヒアリングや調整、予算化や費用支出のための稟議や申請など、顧客の社内で進めてもらわなければならない物事が多数あります。そしてそのたびに進捗フォローの連絡が必要になります。
米国のPhoneBurner社の調査によると「見込客から受注を獲得するまでに、平均して8~11回のフォローが必要」とある通り、顧客の進捗フォローは営業の仕事の中で大きな割合を占めます。ですが、進捗フォローについて教えてくれる営業本や営業研修はあまりありません。そのため、先輩や周りの人のやり方を見ながら、なんとなく進捗フォローの連絡を入れている人が多いのではないでしょうか。
そんな中、商談の進捗フォローについて書かれた珍しい記事を見つけましたので、今回ご紹介します。「進捗フォローが苦手」「見よう見まねでやっているからヒントが欲しい」という方はぜひお読みください。
商談の進捗フォローの基本中の基本とは
今回ご紹介するのは、B2B営業組織向けに顧客への架電システムを開発・販売しているPhoneBurner社の記事「7 B2B Sales Follow-Up Strategies You Need to Implement Now」(B2B営業が今すぐ採用すべき7つのフォロー戦略)。記事の中では自社システムの宣伝を絡めつつ、商談の進捗フォローについての7つのポイントを記載していますが、それよりも記事の中で何度も何度も繰り返し登場する「商談の進捗フォローの基本」が面白いと感じましたので、こちらをご紹介します。
記事で何度も触れられる進捗フォローの基本を一言でまとめると、「単に状況確認のためだけのフォローをしてはならない」ということ。具体的にどういうことなのか、記事に書かれている文章を見てみましょう。
「顧客の状況を確認する」ためだけにフォローの連絡をしないでください。それは相手にとって迷惑でしかなく、相手の時間を尊重していないというメッセージが伝わってしまいます。(中略)そうではなく、それぞれの電話やテキストメッセージ、Eメールに理由を持たせてください。そして常にその理由に基づいてフォローするようにしましょう。
(ポイント2:常に理由に基づいてフォローする)
単に「様子を確認する」ためだけで電話をかけないでください。「連絡する」ことはあなたにとっては無害かもしれませんが、顧客にとっては時間の無駄であるだけでなく、窮地に追い込まれているように感じるものです。その結果、電話された顧客はすぐにあなたを警戒します。ただし、電話をかける具体的な理由を顧客に説明すれば、好意的に対応してもらえる可能性が高くなります。相手に役立つと思われるアイデアについて話し合ったり、相手に関連する自社製品などについての最新のニュースを共有したりしましょう。
(ポイント5:電話でフォローする)
セールストークではなく顧客にとっての価値を伝えます。顧客の視点からメッセージを考えましょう。顧客が購買プロセスを前に進めるために、あなたから何を聞く必要があるでしょうか?顧客の信頼度を高めるために何ができるでしょうか?
(ポイント4: 顧客が好むコミュニケーションチャネルを使用する)
このように似たメッセージが記事の中で3度も登場します。このことをもって、記事の構成がちゃんと整理されていない証拠だとも言えるでしょうが、私は記事を書いたジェフ・オスネス氏がどうしても伝えたかった商談の進捗フォローの基本中の基本なのではないかと思うのです。
基本①「フォローの連絡そのものに価値や意義を持たせる」
顧客としても、色々と普段の業務が忙しい中で、1つの商談で何度も営業担当者からせっつかれるのはいい気がしないものです。とはいえ、相手に怒られるのを恐れてまったくフォローの連絡をしないでいると、ついつい忘れ去られてしまったり、マメに連絡を取る競合になびいてしまったりということにもなりかねません。
そうならないために大事なのは、記事からの1つめの引用にある「理由に基づいてフォローする」。ただし、注意が必要なのはここでいう「理由」は、「顧客にとっての理由」でなければならないということです。例えば「来月中に注文していただかないと、顧客が希望する年度内の引き渡しが不可能になる」といった、「顧客がやりたいことをやるために」「顧客が損しないために」などの顧客にとっての理由を明確にし、それを伝えながら顧客が置かれている状況を確認する。つまり、フォローの連絡そのものに顧客が価値や意義を感じられるようにするということです。
このようなフォローをするためは、顧客にとっての理由につながる情報をあらかじめ押さえておきましょう。顧客が思った通りの購買をするためには、部内での会議や意思決定者への稟議申請など、いつまでに何をしておかなければならないのか。それから逆算してスケジュールが厳しくなりそうなタイミングで連絡するためには、意思決定の進め方や難所といった情報を把握しておかなければなりません。このような情報を持っていないと、どうしても「その後いかがですか」を繰り返すだけになってしまうのです。
基本②「フォローの連絡に顧客に役立つ情報を添える」
とはいえ、すべてのタイミングでフォローの連絡に価値や意義を持たせるのは困難です。単純に間が空いてしまっているというだけでフォローの連絡を入れる場合もあります。
そのような場合に役立つのが、記事からの引用の2つめと3つめに書かれている「相手に役立つアイデア/最新ニュース」や「顧客が購買プロセスを前に進めるのに必要な情報」など。進捗フォローの連絡に、顧客に役立ちそうな情報をトッピングするというもの。ユーザー企業から最近聞いた生の声や、導入事例、業界の調査団体が発表した最新の市場データなど、顧客の業務や購買の意思決定の助けになりそうな情報を添えておくことで、「しつこくせっつかれている」と感じてしまう顧客の感情を和らげることができます。
ただし、この役立つアイデア/ニュースで注意が必要なのは、「今の商談から顧客の焦点を逸らさない」ということ。今の商談と関係のない商品の情報を送ってしまうと「あの商談は進めなくていいのかな」「こっちの方が面白そう」と、顧客の今の商談に対するモチベーションを下げてしまうことのないように注意しましょう。
また、このタイプのフォロー連絡は、1つ前に紹介した「理由に基づいてフォローする」とは異なり、フォロー連絡そのものに価値や意義があるわけではありません。そのため、あまりに頻繁に連絡が続くと顧客としては良い心持はしません。あくまでも最優先なのは、前の節で紹介した「今フォローする理由/必然性があるから連絡をしている」ことが顧客に伝わることなのです。
顧客のためになる進捗フォローなら、顧客に喜んでもらえる!
何度もフォローしなければならない顧客も、好き好んで営業担当者を待たせているわけではありません。商談を継続している以上、その企業や商品に興味を持ってくれてはいます。ただ、社内の調整に時間がかかったり、他の緊急の仕事に対応せざるを得なかったりしているため、意図せずに営業担当者を待たせてしまっていることの方が多いはずです。
そして、何度もしつこくフォローの連絡を受けたために苛立ってしまう顧客の担当者の多くも、好きで腹を立てているわけではありません。営業担当者が節度と理由をもって、適切なタイミングでフォローの連絡をしてくれたり、購買プロセスを前進させるのに役立つようなアイデアを教えてくれたりしたら、素直に「ありがとう」と言いたい人も大勢いらっしゃるはずです。
顧客への進捗フォローをためらう営業担当者の多くは、「何度もせっついて申し訳ない」「嫌われてしまわないか」という気持ちのために、フォローを先延ばしにしてしまったり、過度にへりくだった文面や口調で連絡してしまいがちです。そうではなく、今回ご紹介した記事にあったような「今フォローすることが顧客にとって価値ある」「フォローに併せて顧客にとって価値ある情報を伝えられる」と思えれば、もっと自信を持って気軽にフォローの連絡をできるようになるのではないでしょうか。
自分の都合でフォローするのではなく、顧客のためにフォローする。そのようにスタンスを転換してメッセージを組み立て直すことが、顧客から喜ばれる進捗フォローには欠かせないと思うのです。
参考:「7 B2B Sales Follow-Up Strategies You Need to Implement Now」(Jeff Osness, PhoneBurner, June 13, 2024)