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色々な企業の営業マネージャーさんとお話をしたり、一緒にお仕事をする機会が多いのですが、皆さんに共通しているのが「時間がない」「あれもこれもやらなきゃいけなくて目が回りそう」ということ。 

特に最近では、SFAなどのダッシュボードを見て分析したり、SlackやTeamsから飛んでくるメッセージに対応したり、1on1のコーチングを部下全員と定期的に行ったり、はたまた管理職層向けの会議に呼ばれたりと、やるべきこと/やらされることの種類も数も以前よりはるかに増えている印象があります。 

ライズ・スクウェア社が2022年に実施した「出世したくない理由に関する意識調査」によると、出世したくない理由のうち「仕事量が増えるから」は「責任が増えるから」に次ぐ第2位。マネージャーになると忙しくなって大変だというのは、どの業種/職種でも変わらない悩みのようです。 

そこで今回は、「営業マネージャーの時間の使い方」について考えてみたいと思います。なぜ営業マネージャーは忙しくなってしまうのか。それを克服して成果を上げるチームを作るためにどうすればいいのか。一緒に見ていきしょう。 

「何をすべきか」分かっているが「すべきことをやれない」営業マネージャーへのヒント 

多くの営業マネージャーが「時間がない」「やることが多い」ことに困っているものの、それに対するヒントや答えを書いてくれている書籍は、実はほとんどありません。 

そもそも和書では営業マネージャー向けの書籍自体が少なく、絶版しているものも含めてAmazonで何冊か取り寄せて読んだのですが、営業マネージャーに求められる役割やスキル、目標の立て方や計画への落とし込み方、コーチングの仕方など、「何をすべきか」ばかりが書かれている印象でした。 

それではと洋書も取り寄せて見たのですが、ほとんどは和書と同じように「何をすべきか」だけが書かれているものばかり。そんな中ようやく見つけたのが、マイク・ワインバーグ氏の「Sales Management. Simplified.」でした。 

この本の最大の特徴は、単に「営業マネージャーは何をすべきか」だけを書き連ねるのではなく、「すべきことをやれない」状況に注目し、「すべきことをやれるようにするためにはどうすればいいか」まで言及しているところ。特に19章「Sales Manager Must Radically Reallocate Their Time to Create a Winning Sales Culture」(営業マネージャーは勝ち続ける営業文化を創るために自身の時間配分を劇的に見直そう)では、まるまる1章を費やして営業マネージャーとしての時間の使い方を解説しています。 

営業と関係のない仕事で忙殺されてしまう営業マネージャー 

その19章に入る前に、1章の冒頭の文章をご紹介します。これは、ワインバーグ氏自身が最初に営業マネージャーになったときに、仕事の多さを父親に電話で愚痴った様子を再現したものです。 

こんなに長く、こんなに懸命働いているのに、仕事がほとんど進まないんだ。毎日毎日、自分のことをコントロールできないんだ。若いメンバーはずっと面倒を見てあげなきゃならないし、上司は自分が営業の専門家だと思ってるから、すきを見つけては「ああしろ、こうしろ」と言ってチームにプレッシャーをかけてくる。業績管理の担当者は、ピボットテーブルを埋め込んだ文字の小さなExcelのシートを送ってきて文句を言ってくる。ピボットテーブルなんて使ったことないよ!代理店からは現場同行のスケジュールを組んでくれとせっつかれるし、マーケティング担当者は新商品の売上がなかなか立たないことに文句を言われるし、よその部署のトップは営業とまったく関係ない会議に僕のことを呼び出し続けてくる。極めつけに、カスタマーサービス担当者は、僕が答えられない技術的な質問をしてくる顧客に僕の携帯電話の番号を教えちゃっているんだ。信じられる?!

いかがでしょうか。「自分はまだまし」なのか、「まるで自分のことのよう」なのか、これと似た状況の営業マネージャーは日本企業でも多いのではないでしょうか。 

営業マネージャーがすべきことをやれなくなってしまう5つの原因 

このような状況に陥っている営業マネージャーに対して、ワインバーグ氏は19章でその主な原因を5つ挙げています。 

  1. 電子メールの奴隷であり、仕事の間中ずっと条件反射モードのため、 絶えずメールをチェックしては返信することに時間を費やしています。
  2. 業績とはほとんど関係のない、途方もない数の会議や電話会議に参加しています。
  3. 若手リーダーの役割を自ら担って、現場で起こっている問題の消火活動に忙殺されています。
  4. 営業に直接関係しない書類を大量に作成するよう求められ、常にSFAの画面に頭を埋めて生活しています。
  5. 自分のスケジュールの決定権を持っておらず、優先順位を守ったり綿密な計画を立てたりということが不可能です。

売上に直結する3つの活動に充てる時間を増やそう 

それでは、営業マネージャーはどうすればいいのか。ワインバーグ氏は売上に直結する以下の3つの活動に充てる時間を増やさなければならない、と記しています。 

  1. 各営業担当者との1on1コーチングを行う
  2. 営業チームの各種会議を主導する(業績管理、パイプライン管理、アカウント管理、行動管理)
  3. 営業担当者が顧客や見込顧客といる現場に自ら一緒に出向く(観察、指導、支援)

マネージャー自身が意識して守らないと、3つの活動はやれなくなってしまう 

もちろん営業マネージャーとしてほかにやるべきことは多々あります。ただ、その中でも特に売上に直結するこの3つは確かに大事ですし、共通点があるようにも思えるのです。 

というのも、これら3つの活動は、上に挙げられている「電子メールの返信」や「業績と関係ないが呼ばれる会議」「現場の問題解決」「書類作成」のように誰かに「やらされる」ものではなく、営業マネージャーが自らこれをやろうと思い、無数に飛び込んでくる「やらされる」作業からスケジュールを守らないと、いとも簡単に「やるべきだけどやれなかった」活動になってしまうからです。 

自分のスケジュールを先にブロックして「やるべき」活動をやれる環境を作ろう 

とはいえ、会社勤めをしている以上、上司や周囲、部下からの「やらされる」仕事をまったくやらないというわけにはいきません。「やらされる」仕事をできるだけ少なくして、1on1コーチングや営業会議、営業同行などの時間を捻出するためにどうしたらいいのか、そのヒントを求めて別の本を漁っていたら見つかりました。 

その本は以前にも紹介したことのある、ジェブ・ブラント氏の「Fanatical Prospecting」。そこでは大事な営業活動に充てる時間を捻出するために、毎日朝9~10時など、自分が一番生産性高く働ける時間帯を「ゴールデン・アワーズ」と呼び、その時間帯は打合せなどの予定が入らないよう、スケジュールや自分の職務室自体をブロックすることを推奨しています。 

日本の場合は職務室を持っている人は多くないので、スケジューラーやTeamsでブロックするしかありません。「この時間帯は○○をするぞ!」と周囲に宣言し、スケジュールを登録しておくことで1on1や営業同行などの業務を重要視していることが周りにも伝わりますし、自分自身がつい後回ししてしまいそうになるのを防ぐ効果もあると思います。 

営業マネージャーは自分自身の時間の使い方のマネジメントから始めよう 

成果を出すために「やるべき」仕事と「やらされる」仕事が一緒であれば何も問題ありません。しかし、残念ながら営業マネージャーが「やらされる」大量の仕事の多くは、成果を出すために「やるべき」仕事ではなく、「やるべき」仕事をやる時間を奪うものになってしまっています。 

皆さんの組織の営業マネージャーは、やるべき仕事を十分にやれていらっしゃるでしょうか。やるべき仕事をやるための時間をスケジューラー上で確保できているでしょうか。本当にやるべき仕事をやるためには、やらされる仕事で手一杯になってしまう前に、自分自身の時間の使い方を意識し、計画し、管理しなければならないのだと思うのです。 

参考:「Sales Management. Simplified.: The Straight Truth About Getting Exceptional Results from Your Sales」(Mike Weinberg, HarperCollins Focus LLC., 2016