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初めてお会いした方から、「トライツコンサルティングって、どんなことをしてくれるの?」という質問をいただきます。

その際には、「B2B営業の組織や人の営業力を高めるお手伝いをしています。営業現場の課題や問題を、営業の『しくみ』や『ツール』などを整備して、営業組織の誰でもメリットを得られるような方法で解決していこう、というのが基本的なスタンスです」とお答えします。我々のWebサイトにも同じようなことが書いてあります。

しかし、営業現場で今起こっている問題や課題、地域柄とか、組織や個人の特性によって起こっていることを解決しようとすると、『しくみ』や『ツール』だけではスピード感に欠けるので、1対1の営業個別相談で解決の糸口を探ることもしています。この「営業個別相談」の考え方や進め方についてはWebサイトでは紹介していません。

そこで、今回のトライツブログはトライツ流「営業個別相談」についてご紹介してみようと思います。

トライツ流「営業個別相談」の7ステップ

最初にお断りをしておくと、トライツ流「営業個別相談」は営業現場の課題・問題を解決するために試行錯誤を繰り返しながら、今たどり着いているやり方で、確立したメソッドではありません。いわゆるコーチングやティーチング、フィードバックなどの手法、最近目にすることが多い1on1(ワンオンワン)のやり方など、さまざまな手法を取り入れながら現場で使えるようにアレンジしていったものです。

それでは、トライツ流「営業個別相談」の進め方、7つのステップをご紹介します。

ステップ1 相談者から現状について聞く/テーマを分類・整理する
ステップ2 話し合うテーマを絞り込む
ステップ3 相談者と一緒に現状をどう変えたいか(ありたい姿)を設定する
ステップ4 相談者と一緒に何が問題・課題なのかを設定する
ステップ5 どうやって問題・課題を解決すればいいかアイデアを出す
ステップ6 どんな手順・時間軸で進めたらゴールにたどり着くかストーリーにする
ステップ7 「このストーリーを一緒に進めましょう」と行動を促す

このステップだけ見るとそんなに変わった内容ではないと思いますが、いくつかトライツ流のポイントがあります。

「営業個別相談」を効果的に進める3つのポイント

ポイント1 現状は話したいように話してもらう/聞きながら分類・整理する
話しやすい雰囲気をつくるためにも、最初は話したいように話してもらいます。きちんと聞きながらも、出てきたお話をいくつかのテーマに分類・整理して絞り込めるように準備します。ちょっと訓練が必要ですが、慣れると自然とできるようになってきます。

ポイント2 ありたい姿と問題・課題の設定/解決策のアイデア出しが腕の見せ所
現状(事実)は変えられませんが、現状をどう解釈し、ありたい姿をどう描くかは自由です。また、ありたい姿をどう描くかで問題・課題は大きく変わります。そして、様々な解決策から何をチョイスし、提案するかが問題・課題解決の成否を分けます。注意したいのは、相談者が持っている情報量によって現状の解釈やありたい姿の描き方に限界があるということ。そこで積極的に情報提供し、一緒に考えることで最適解を目指します。ここがトライツ一番の腕の見せ所です。

ポイント3 ゴールにいたる「ストーリー」を描く
単に問題や課題が見える化されただけだったり、〇〇をやればいいというアクションやタスクが具体化されるだけでは相談者の行動につながりづらいことが多いです。相談者自身がどの順番でどう動いたら問題・課題が解決し、ゴールにたどり着くのかという「問題・課題解決に向けてのストーリー」に落とし込むことで何をすべきか明確になり、動きやすくなります。ストーリーの描き方については次章でもう少し詳しく紹介します。

これら3つのポイントに注意しながら、営業個別相談を進めています。

営業個別相談で最も重要な「問題・課題解決に向けてのストーリー」

私が相談者の皆さんにとって最も重要で役に立つと考えているのは、先ほどのポイント3で紹介した、相談者自身がどの順番でどう動いたら問題・課題が解決し、ゴールにたどり着くのかという「問題・課題解決に向けてのストーリー」です。

アイデアを物語に仕立てて語ることで、相手の頭と心に同時に働きかける手法を「ストーリーテリング」と言いますが、営業現場の動きを活性化させるためにはこの「ストーリーテリング」が力を発揮すると感じています。

と言うのも、営業組織は取り扱う商品・サービスによる制約や顧客との関係があり、フットワークが軽いようで身動きがとりづらい組織だったりします。そこで新たな活動をしようとすると、推進者の高いモチベーションと現場の理解が必要になります。そこで、人の頭と感情の両面に働きかけることができ、人から人に伝わりやすい「ストーリー」が重要になります。

では、ストーリーはどうやってつくればいいのでしょうか。まず、ストーリーには以下の9つの「構成要素」があります。この構成要素を具体化するところからストーリーづくりは始まります。

①いつからいつまでといった「時間」
②どのエリアで、どの組織でという「場所」
③「主人公」は誰なのか
④どんな「現状」なのか
⑤どうなっていればいいかという「目指す姿」
⑥現状と目指す姿のギャップである「課題」
⑦課題を解決するために必要な「アイテム」
⑧課題を解決するなかで起きる「できごと」
⑨目指す姿の実現という「ゴール」

これらの構成要素を面白く、ワクワクするように組み立てたのが「ストーリー」です。

ケースで見る、営業個別相談の話はどう進むのか

では、実際の営業個別相談ではどんな話しの流れ・内容になるか、架空のケースを使ってご紹介します。相談者は営業企画部長で「営業人材の育成」が悩みという設定です。

まず、現状について営業企画部長に聞いてみると「営業のヒアリング力が低下している。顧客の課題が聞き取れないから適切な提案ができなくなっている」とのこと。それに対して、「低下と言うと、前は高かったけど最近下がっている、ということですか?」とトライツから質問したら「いや、低下じゃないですね、以前とは売り方、売り物が変わってるのでヒアリング力が必要になった、が正しいです」と部長。ヒアリング力の現状について、お互い正しく現状の認識ができました。

次に、トライツから「『1)営業がヒアリングできるようになる』『2)ヒアリング力を含めて現在の営業に必要なスキルを網羅的に高められる』のどちらですか?」と目指す姿を提示すると、「両方です」との答え。そして、いつまでに実現しようかと話し合い、1年後までに1)を3年後には2)を目指そうと言う話になったのです。

現状に対する認識と目指す姿が定まったことで、当面の課題は「ヒアリング力向上」、その先の課題は「営業に必要なスキルの棚卸し」と「スキルアッププログラムの整備」だね、と言うことで合意。ヒアリング力向上の研修施策やスキルマップの定義の仕方の詳細について作戦会議を行うことができたのでした。

以上、架空の営業個別相談の流れと内容です。ここまでのコミュニケーションによって、ストーリーに必要な9つの構成要素

①時間:1年後と3年後
②場所:営業組織
③主人公:営業担当者
④現状:売り方・売り物の変化に対応できるヒアリング力が不足
⑤目指す姿:まずはヒアリング力向上、その後で営業スキルの網羅的向上
⑥課題:ヒアリング力向上施策の実施・営業スキル棚卸しとスキルアッププログラム開発
⑦アイテム:研修プログラム・スキルマップ
⑧できごと:研修の実施・スキルマップと研修プログラム開発
⑨ゴール:営業のスキルアップ・営業成果アップ

が揃いました。これをうまく組み立ててストーリーにして相談者の営業企画部長と共有し、「サポートしますから頑張りましょう!」と後押しする。これで営業個別相談は終了です。

ストーリーの構成要素を一つひとつ丁寧に意識合わせしながらコミュニケーションを進めることで相談内容がスッキリまとまる感じを掴んでもらえたのではないかと思います。

ストーリーを意識してコミュニケーションしてみよう

ここまでご覧になって、ピンとくる方は「これ、相手やテーマに縛られず普遍的に使えるコミュニケーション手法じゃない?」と感じたかと思います。その通り、このやり方は普遍的なコミュニケーションの取り方です。だからこそ、どんな相談が来るか分からない営業個別相談で役に立っています。

少し訓練は必要ですし、アイデアを出せるだけの知識・経験も必要ですが、反対に、知識・経験がある方なら少し訓練するだけで身につけられるとも言えます。

最初にも書きましたが、1対1で部下と上手くコミュニケーションを取りたい、顧客とビジネスについて突っ込んだ話がしたい方には武器になります。ぜひお試しください!