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見込客と初めて面談するときに不可欠な事前の情報収集。その企業について調べるのはもちろん、時間に余裕があれば担当者のことも調べたりしているのではないでしょうか。
ただ、Webの中にはその企業のWebサイト以外にも企業や個人のSNSなど、様々な情報源が無数にあります。そのため、何を調べたらよいか、どこまで調べれば十分なのかが分からない、という方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は「デジタル時代の顧客リサーチ法」と題し、営業担当者が見込客とコンタクトを取る前に調べるべき情報源をご紹介します。情報源に悩んでいる方や、自分の中で確立してはいるもののアップデートできているか心配な方は、ぜひお読みください。
見込客の情報源が限られていた20年前
Web黎明期の2000年ごろ、見込客のことを調べるための情報源はごくごく限られたものでした。業界専門誌(紙)に業界地図、会社四季報、有価証券報告書といった紙媒体がメインでしたし、情報を得るためにこれらのコンテンツを買う必要がありました。
今ではほとんどの企業が、自社のWebサイトで有価証券報告書や中期経営計画などを公開しています。しかし、上場企業はEDINETに有価証券報告書を提出・公表しなければならない、というルールが2004年にできるまでは、政府刊行物取扱所(官報販売所)に行って一社ずつ買わなければ手に入らない、とても面倒なものだったのです。
見込客の情報が無料で簡単に手に入るようになった
それから20年が過ぎ、今では見込客の情報は無料でいくらでも手に入るようになっています。企業のWebサイトには財務情報だけでなくCSRレポートもあります。そして、企業だけでなく担当者もSNSを活用していますし、まずはGoogle検索から始めるという方も多いでしょう。
これらの無数の情報源のすべてをしらみつぶしに調べるのは非効率的です。そこで、今回ご紹介するのがHubSpot社の最新記事「The 18 Best Places for Sales Reps to Research Prospects」(見込客に会う前に調べるべき18の情報源)。一体どんなものなのか、早速見ていきましょう。
見込客の情報源18選
1. 見込客個人のLinkedIn
2. 見込客個人のTwitterアカウント
3. 見込客企業のTwitterアカウント
4. 見込客企業のプレスリリースのページ
5. 見込客の競合企業のプレスリリースのページ
6. 見込客企業の財務諸表
7. 見込客が書いている/読んでいるであろうブログ
8. 見込客個人のFacebookのプロフィール
9. 自社のMAシステム
10. 自社のCRMシステム
11. 見込客企業名でのGoogle検索結果
12. 見込客個人名でのGoogle検索結果
13. Quora
14. Glassdoor
15. AngelList
16. Datanyze
17. Cruchbase
18. Yelp
13から18にかけて見慣れないものが並んでいますので、まずはこの6つについて簡単に解説します。
13のQuoraはアメリカ発のQ&Aサイトで、Yahoo!知恵袋みたいなものですが、最大の特徴が登録者をキーに検索できること。そのため、見込客個人がどんな質問を投稿し、どの質問にどんな回答をしているかを調べられ、何に興味関心を持っているかを推測することが可能です。SNSのように使えるQ&Aサイトだと捉えていただくのが良いでしょう。
また、企業名で検索することで、その企業に対する一般のイメージを知ることもできます。Quora日本版が以前から運用されていますので、利用されているという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
14のGlassdoorは求人・転職のクチコミサイト。日本でいうとVorkers(Openwork)のようなものです。ここに寄せられているクチコミから企業としてのカルチャーや雰囲気が分かりますし、求人している職種から今後伸ばそうとしている事業も推測できます。
15のAngelListと、17のCrunchbaseはスタートアップ企業の調査で役に立つサイト。資金調達の状況や投資家の構成などを知ることができます。このような情報源が2つも含まれていることから、経済全体として企業の新陳代謝が活発で、新興企業をターゲットにしている企業が一定数以上あることが分かります。
16のDatanyzeはLinkedInを使いやすくするための、Google Chromeのアドインツール。これを入れると、業界名や役職名などで検索したターゲットリストを、簡単に作成することができます。
18のYelpはレストランや小売店を対象にしたクチコミサイト。日本でいうぐるなびや食べログみたいなものです。見込客がレストランや小売店だと、消費者の目線から課題を知ることができます。
以上のことを踏まえた上で、改めて18の情報源リストを見てみると、いくつかの興味深いポイントが見えてきます。
ポイント1:情報源リストの最上位はSNS
1番最初のポイントは、企業のWebサイト(4. プレスリリースのページ、6. 財務諸表)よりも、LinkedIn(1)やTwitter(2、3)といったSNSがリストの上位に来ているというものです。LinkedInが広く普及しており、B2BでもSNSを使ったマーケティングが必要不可欠となっている、現代の米国らしい結果だと言えるでしょう。
日本でもSNSを使ったB2Bマーケティングが少しずつ広まっていますので、FacebookやTwitter、Instagramの企業アカウントや個人アカウントをチェックするのが、当たり前になってきているように思います。また、日本では普及があまり進んでいないLinkedInに近い存在として、名刺管理ツールのEight(Sansan社)があります。登録している人の異動情報や企業のニュースを教えてくれるので、便利に使っている人も多いのではないでしょうか。
ポイント2:MAやCRMといった社内システムに新しい情報が入るように
2つ目のポイントは、MA(9)やCRM(10)といった自社のシステムが、情報源になり得るというもの。
MAシステムを見れば、見込客個人が自社のWebサイトのどこをよく見ているのか、どんなコンテンツをダウンロードしているのかが分かりますので、興味関心がどこにあるかを推測することが可能です。
また、最近は外部のデータベース(米国だとZoominfo、日本だとLANDSCAPE社のuSonar)を、CRMにリアルタイムで取り込めるようになっていますので、企業の最新の組織情報を自社のCRMシステムから簡単に見られます。もはや「CRMは自分で入力した情報を見返すだけのもの」ではなくなっているのです。
ポイント3:情報発信ツールで見込客個人の興味関心を探る
3つ目のポイントは、ブログ(7)やQuora(13)のような情報発信ツールで、見込客個人の興味関心を探るというもの。日本ですとnoteやNewsPicksなどが当てはまるでしょうか。仕事には関係のないプライベートな情報発信も多いので取捨選択が必要ですが、時間に余裕があるときはこれらのサイトを見てみるのも良さそうです。
ポイント4:B2Bクチコミサイトの普及
そして4つ目のポイントは、Glassdoor(14)やYelp(18)といったB2Bでも使えるクチコミサイトの存在です。極端で過激な意見を拾ってしまうリスクもありますが、見込客企業のことを他者の視点から見ることができる貴重な情報源ですね。
独自の情報源リストを作り、定期的にアップデートしよう
ここまで18の情報源リストを駆け足で見てきました。新聞や業界専門誌(紙)、YouTubeの企業公式アカウントなど、不足しているものもありますが、新しい観点に気づかせてくれる興味深いリストだと思います。皆さんには、これらのリストから気になるものを選び、必要に応じて日本で普及しているサービスに置き換えて、ご自身で試しに見ていただきたいと思います。
そして、自分なりの情報源リストを作り、それを定期的にアップデートしてほしいのです。今回ご紹介したような記事を定期的に読んだり、情報源リストとその見方のコツを周りのメンバーと共有したりする。そうすることによって、初めて会う見込客のことをもっと効率的に理解できるようになり、会話の中身がもっと充実したものになるはずです。
参考:「The 18 Best Places for Sales Reps to Research Prospects」(Emma Brudner, HubSpot, Inc., June 6, 2022)