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「禁煙なんて簡単だ。私はもう何千回もやっている」という名言(?)があります。この由来については諸説あるようで、アメリカの作家マーク・トウェインのものとも、イギリスの劇作家バーナード・ショウのものとも言われているようです。それほどに、禁煙を継続するのは大変なのだということでしょう。

何かを変えて、それを継続するというのは禁煙だけでなく大変なもの。日記に語学の勉強、運動にダイエットなど、何かを変えてはみたもののそれを長続きさせるのは大変だというのは、私だけでなく皆さんも経験されてきたことだと思います。
これは営業改革においても全く同じ。流行りのツールや手法を導入し、注目の集まるモデル部門では上手くいったものの、その後はいつの間にかトーンダウン・・・というのはよく聞く話です。

そこで、今回のトライツブログでは、「営業改革を継続・定着させることの難しさとその解決のための第一歩」について考えていきたいと思います。

営業改革の継続・定着を阻む「現場任せ」

皆さんの組織では、営業改革に取り組んでいますか。

SFAの導入、モノ売りからソリューション営業への転換、WebマーケティングやMA(マーケティング・オートメーション)と連動した新しい時代の営業の実践、iPadなどの電子ツールの導入など、営業改革のネタは様々です。そのため、「自社の営業は十年一日、まったく何も変えずに同じ活動を繰り返している」という組織はむしろ少なく、「改革というほどではないけど改善活動はしている」「本格的に取り組んでいるとは言えないけど試行錯誤しているところ」というところまで含めれば、日本の多くの組織が営業改革に取り組んでいるのではないでしょうか。

それでは、多くの組織でそれが継続・定着しているかと言うと話は違ってきます。「プロジェクトやパイロット部門で試行していたときは上手くいったから展開したのに、現場ではなかなか定着しない」という話をよく聞きます。そのため、冒頭の禁煙のジョークのように、営業改革をスタートする→現場に展開する→定着しないため成果が上がらない→別の営業改革をスタートする→・・・というようなことが現実に起こってしまっていたりします。

これは、いったいどこに問題があるのでしょうか。

もちろん組織によって個別事情は異なりますし、一概に1つの要因に絞ることはできません。ただ、実際に多くの組織でよく見受けられることで、私が大きな要因だと感じているのは、営業改革の旗振り役であるトップや営業企画などのブレーンが、「やり方やシステムは作ったし、パイロット実践や教育まではこちらでやったのだから、継続・定着は現場の仕事」と、現場に一任してしまうことです。

現場任せで起こる3つの失速パターン

そのように営業改革を継続・定着させることが現場の仕事として下りてくると、当初は勢いがあった改革であっても徐々に失速してしまいます。現場に任された営業改革が弱まっていく様子を見ていると、大きく3パターンに分けられると考えます。

1つ目のパターンは「現場感の欠如」です。やり方やシステムは完成してはいるので基本はしっかり出来ているのですが、実際の営業活動では基本通りに進むことは極めてまれなこと。ゴルフで言うと、基礎は教わって打ちっ放しでまっすぐ飛ぶようにはなったのですが、いざコースに出てみると斜面からのショットやバンカーからの脱出は経験していないのでスコアはイマイチという状態。客先で起こる応用や例外に対応する方法が分からないため、「確かに正しいやり方かも知れないけど、現場では使えない」という烙印を押されてしまうのです。

2つ目のパターンは「質の低下」。展開した当初はよく考え、しっかりと手順を守って活動するのですが、だんだんと時間が経ち慣れてくるにしたがって、あまり深く考えなくなったり、「ここまでできてたらいいだろう」というように目標水準が下がってきたりします。その結果、自分たちでは「やっているつもり」「できているつもり」になっているのですが、当初展開した当時からすると随分と活動の質が下がってしまう。そうなると、おのずと成果も上がらなくなり自然消滅への道を歩むことになってしまいます。

そして、3つ目のパターンは「やる気の低下」です。当初はモチベーション高く取り組んでいても、日々の仕事の忙しさやその改革を良く思っていない人からのコメントなど、徐々にやる気が削がれていくということがあります。特に、ソリューション営業への転換など、成果が出てくるまでに時間がかかるような取組ですと、後押しとなるものがないので停滞しがち。平面の上で球を転がすようなもので、後押しがないと平面との摩擦や空気抵抗などで球は徐々に遅くなっていき、最後には止まってしまいます。

営業改革のやり方だけでなく「継続・定着の仕方」を教えよう

このように、営業改革の継続・定着はこの3つのパターンとの戦いだと言っても過言ではありません。そして、これらのパターンで改革が失速してしまう最大の理由は、改革の旗振り役であるトップや営業企画などが、「営業改革のやり方」だけを教えて、「営業改革の継続・定着の仕方」を教えないまま継続・定着を現場任せにしてしまっていることにあります。

誰もやったことのない「継続・展開」を現場に任せておき、どうも上手くいってないような気配がしてきたら「活動件数と成果を報告しろ」「その伸び率はどうなっているか」と管理を強化してしまう。そうなると現場には「やらされ感」が出てしまい、「質の低下」や「やる気の低下」が加速してしまうという負のスパイラルに進んでしまいます。

それでは、3つのパターンを乗り越えて改革を継続・定着させるためにどうしたらよいのでしょうか。「営業改革の継続・定着の仕方」として、具体的にどのようなことをすればよいのでしょうか。

継続・定着の第一歩は、満足した顧客の声を聞くことから

その第一歩として私がお勧めしたいのが、満足した顧客の声を聞き、それを組織で共有することです。実際に受注した顧客や、受注には至らなかったものの自社の営業の変化を喜んでくれている顧客から「自社の変化についてどう感じたか」「顧客にとってなにが価値だったのか」を直接聞くことで、「この活動をやっていてよかった」「これからも頑張ろう」と思えるようになります。そうなれば「やる気の低下」は予防できますし、顧客のためにもっとレベルアップしようと思うことで「質の低下」や「現場感の欠如」も抑えられるでしょう。

そして、顧客の声を聞いたらすぐに組織で共有し、素直に称賛することです。大企業に多く見られるのが、せっかく顧客が褒めてくれているのに、「口ではそう言ってるかもしれないけど」や「ウチの実力じゃなくて環境が良かっただけ」「でも期待した売上には達していないよね」などの冷めた反応。こうやってくさされてしまっては、定着するものも定着できません。

「組織としての成功体験の扱い方」に継続・定着のヒントがある

私が知っている企業で、営業をはじめとする様々な改革を継続・定着することにとても長けた企業があります。そこでは、マネージャーがどんどん部下の商談に同行し、そこで見聞きした成功体験をすぐに全社に熱気を持って共有し、本部長や事業部長、時には社長が皆の前でこれでもかと褒めちぎる、ということが頻繁に行われています。

営業改革に取り組むすべての企業が同じようにすべきだとまでは言いませんが、成功体験をいかに生み出して、それをいかに盛り上げていくかという、「組織としての成功体験の扱い方」に営業改革を継続・定着させるためのヒントがあると思うのです。

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