現場支援に携わっている中で、マネージャーから「どう指導したらいいか悩んでいる」という相談を受けることがあります。仕事に対してやる気がないわけではないのですが、とにかく段取りが悪い、アウトプットのレベルが低い、遅い・・・と。

それでいろいろ個別に指導をするものの、ちっとも仕事のやり方が変わらず、八方ふさがりになっているということでご相談をいただくのです。

今回のトライツブログは、そんなお悩みを抱えるマネージャーの方に参考にしていただければと思い、「業務設計」を元にした部下育成について書きます。

人は原理を学ぶことで能力が向上する

皆さん、学生の頃に自分の志望する学校の過去問をやった記憶があると思います。それによって、その学校の入試問題のレベルや傾向がわかりますし、自分の足りないところも気づくことができたでしょう。

ただ、運転免許の学科試験のように過去問をいくつかやって覚えておけば合格できるというほど、難関と言われる学校の入学試験は簡単ではありません。とにかく沢山過去問をやり、それを覚えることだけで入試を突破しようとしても上手くいかないものです。
ちなみに、先月のトライツブログでご紹介したように、全く意味を理解していないAIでも、その抜群の記憶力を活かせばMARCHクラスの大学には入学できるそうですが、それは普通の人間には不可能でしょう。

人間にはAIと違い、物事の原理を理解し、それを使って問題を解くという能力があります。従って、我々はいきなり過去問を解くことはせず、まず教科書で「どうしたらこの問題を解けるのか」という原理を知識として学びます。そうすることが試験を突破するために効率的で、その後の人生でも学んだことを活かせるようになるからです。

仕事ができないのは仕事の原理がわかっていないから?

では仕事ではどうでしょうか。
マネージャーが「なかなか仕事ができるようにならない」と考えている部下の方から個別に話を聞いてみると、ある共通点が見えてきます。それは、どうしたら自分が求められているものがアウトプットできるか、という「仕事の原理」がわかっておらず、ただ教えられた手順で日々の仕事をこなしているということです。

また、何かちょっとしたヒントやコツがあれば、今の状況は打破できるし、経験値を積めばそのうち一人前に仕事ができるようになると軽く捉えているところも共通しています。まるでロールプレイングゲームで、何か強力なアイテムをゲットするための裏技を探しているような感じで、しかもその裏技さえあれば何とかなると楽観的に捉えているので、本人にはあまり悲壮感がありません。

ですから、マネージャーや先輩から仕事上のミスをピンポイントで指導されても、便利なアイテムが一つ増えたような意識であり、原理を身につけたわけではないので、少しでも状況が変わると応用が利きません。結果として、似たような失敗を繰り返すことになり、冒頭の「ちっとも仕事のやり方が変わらない」となってしまいます。

このような話をすると、マネージャーから「自分だって仕事の原理なんて教えてもらってないけれど・・・」と返ってくるのですが、それを言っても何も解決しません。「仕事の原理」を身につけるためのサポートをしてあげないと、いつまでも問題は解決しないのです。

仕事の原理を身につける近道は、自分の業務設計をさせてみること

では、必要な「仕事の原理」をどのように学んでもらえばいいかということですが、私は「自分の業務を自分で設計させる」のが近道だと考えています。例えば提案書を作成するという業務を行うのであれば、いきなり提案書を作るのでなく、提案書作成の業務設計をやってもらうのです。

しかもそれは今回の提案書作成に必要なやることだけをリストアップしたタスクリストでなく、これからずっと使える業務フローになるように設計するのです。そして、「コンセプトが明確でない」→「顧客ヒアリングに戻る」など、上手くいく場合だけでなく、イレギュラーな処理もできるだけ想定し、いつまでも使えて、誰にでも役に立つ業務フローとしてまとめてもらうことがポイントです。

マネージャーは、最初「そもそも」の仕事のやり方を理解していない部下に愕然とするかもしれませんが、アドバイスをしながら、あくまでもその本人が理解し、自分でまとめあげるように指導していきます。ここで感情的になったり、細かく指示をしてしまってはいけません。「見守る」というスタンスが重要です。

業務フローが出来上がったらそれを使って実際の提案書を作成してもらい、やってみた結果を踏まえて見直しを行うというサイクルを繰り返していきます。そして、提案書作成の業務設計が終わったら、次は違う業務の設計を行ってもらうようにして、仕事の範囲を広げていきます。

このようにして、毎回の経験を自分の仕事の仕方に反映させる癖付けを行うのです。
ちなみに自分の業務設計がしっかりできるようになると、顧客の業務上の課題も以前よりもロジカルにとらえられるようになり、わかりやすくまとめるスキルを身に付けることにもなるので、一石二鳥です。

マネージャーは自分なりの「仕事の原理の身につけさせ方」を持つことが大事

なかなか仕事ができるようにならない人は「教えてもらった通りにやればいい」「経験を積んでいけばそのうちできるようになる」などと安易に考えてしまっていることが多いので、このようにして「仕事の原理」を学ばせ、習慣付けしてあげる必要があります。

あくまでも私の個人的な印象ですが、このようなタイプの若手社員は増えているように思いますので、これからのマネージャーは「仕事に対する心得」というような気持ちの部分や、「こういう時はこうする」といったコツを気づいたときに教えるということでなく、継続的な関わりの中で、根本的な仕事のやり方を教えられるスキルが不可欠になるはずです。

今回ご紹介した、業務設計を通して仕事の原理を身につけさせる方法の一つのやり方です。それぞれのマネージャーは自分なりの「仕事の原理の身につけさせ方」を持ち、部下の育成ができるようになることが大切だと思います。そして、それはAIにはできない、人間のマネージャーだからこそできることなのです。

仕事の原理を身につけさせることは一見面倒で、時間のかかるように思われますが、マネージャー自身にも気づきのある有効なアプローチです。そして、きっと何年か後に「〇〇さんに仕事の基本を教わった!」と言われることにつながるはずです。それはきっとあなたの一生の財産になるでしょう。