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最近まで台風が来ていましたが、すっかり肌寒くなり冬の足音が聞こえてきました。そろそろ来期の営業施策や予算配分などに思いを巡らせ始めている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
どんな施策を打って、どのようにコスト配分するかは営業組織にとっての大きな分岐点。特に最近はSFAやマーケティングオートメーションなど、様々な施策をより取り見取りで選べるので、頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。
今回のトライツブログでは、海外の調査データをもとに「営業&マーケティングのコスト配分」について考えてみたいと思います。
調査データ:「営業は顧客の購買の意思決定にどれだけ影響を与えている?」
アメリカの有名な企業調査・格付会社であるDun & Bradstreet社が最近発表した調査レポート「The State of Sales Acceleration 2017」の中に、顧客の購買の意思決定に関する大変興味深いデータがありましたのでご紹介します。このレポートはB2B企業向けの営業担当者と購買担当者を対象にアンケートを取ったものですが、そこで営業担当者と購買担当者の意識の違いが鮮明に浮き上がっているのです。
最初にご紹介するのが、B2B営業担当者に「自分は顧客の購買プロセスに直接的な影響力があると思うか」と質問した結果のデータです。
上図のように、回答者のうちおよそ3/4に当たる74%の営業担当者が、「自分は顧客の購買プロセスに影響力がある」と認識しています。それでは、本当に営業担当者は顧客の購買プロセスに大きな影響力を持っているのでしょうか。
それを確かめられるのが次に紹介する、購買担当者に「購買の意思決定をする際に、何を参考にして適切な商品・サービスを決めるか」と質問した結果のデータです。
色々な情報源を用いて購買の意思決定をしていることが分かりますが、6つある選択肢のうち営業担当者が関与しているものは「営業から紹介された商品・企業」のたった16%しかありません。残り84%の情報源は営業担当者が直接的に関与しないものなのです。
この2つのデータから、アメリカのB2B市場では
「営業担当者は顧客の意思決定に影響力を持っていると思っている」
しかし、「顧客の購買担当者は営業以外からの情報を主として購買の意思決定をしている」
という、大きな認識のズレがあることが見て取れます。
Webにシフトしている顧客の情報収集手段と、営業組織主体の営業&マーケティングコスト配分
もちろんこのデータはアメリカのものですので、日本が全く同じようになっているとは言い切れません。しかし、アメリカほどはコンテンツマーケティングやマーケティングオートメーション、ソーシャルメディアのビジネス活用が進んでいないとはいえ、日本でも確実に営業担当者以外の情報チャネルから情報を集められるようになってきています。アメリカでは営業担当者以外からの情報(84%)が営業担当者からの情報(16%)の5倍も購買の意思決定に影響を与えているということになりますが、日本のB2B市場もそれに近い状況になりつつあるのではないでしょうか。
そんな中、改めて考えてみていただきたいのは、顧客の情報収集手段がこのように営業担当者からWebなどへとシフトしつつあるのに対して、人件費やシステム投資など売り手側のコスト配分はどのようになっているかということです。
例えば100人の営業人員がいる組織では、一人当たりの人件費をいろいろ経費も含めて年間1,000万円だとするとトータル10億円をその体制を維持するために支出していることになります。あくまでも顧客の購買意思決定に関する影響度の視点からになりますが、その組織が仮に展示会、広告などに年間1,000万円の経費を使っているとしたら、16%に10億円、84%に1,000万円のコスト配分になっています。
「情報伝達コスト」という考え方でコスト配分を考えよう
これらのコストを全て顧客への「情報伝達コスト」と考えるならば、営業人員を使った人による情報伝達手段はとても割高なものであることがわかります。もちろん、人が関わることでしかできないこともあるので、単純なコスト比較ができるものではないのですが、今流行りのWebマーケティングやマーケティングオートメーションなどを導入するかしないかを考える際には重要なポイントになるのです。
例えば、マーケティングオートメーションなどのシステムを導入する際は、そのシステムを導入することで「どれだけの売上増が期待できるのか」という観点で検討されることが多いでしょう。しかし、それではなかなか判断が難しく、結果として「様子見」となってしまうことも少なくないように思います。
それよりも、実際に自社の顧客にご協力いただき、今回ご紹介したようなアンケート調査を行ってみると、今顧客が何を参考にして購買の意思決定をしているかがよくわかるはずです。そこで自社の「情報伝達コスト」の配分が適切なのかということを考えることができるのではないでしょうか。
「情報伝達コスト」で考えることで、あるべきマーケティング&営業の姿が見えてくる
以前と比べて顧客はWebなどを通じて、様々な手段で情報を容易に集められるようになっています。そのような中、コストが既存の営業組織に偏重して配分されていると、情報伝達コストが高い組織になってしまっている可能性があります。
WebマーケティングやEメール、展示会にWebセミナー、そして営業担当者などの中から、顧客はどのようなチャネルで情報を集めているのか。自社はそれぞれのチャネルに対してどれだけのコストを掛けているのか。
「顧客のことは営業が一番わかっている」という思い込みから脱却し、新しいツールに取り組んでみるきっかけにするにも、一度顧客の声に耳を傾けていることをオススメします。そうすることで、自分たちにとって理想の(=情報伝達コストが効率的な)マーケティング&営業の姿が見えてくるのではないでしょうか。
参考:「The State of Sales Acceleration 2017」(Dun & Bradstreet, 2017)