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営業担当者のスキルアップ施策の代表格と言えば、やはり営業研修でしょう。プレゼンテーションや交渉術、しばらく前に傾聴力に関する本がたくさん出たこともあり、ヒアリング・スキル強化のための研修や、提案書作成研修というものもあるようです。

とは言うものの、ここ数年は営業研修のラインナップがあまり変化しているようには見受けられません。ところが、日本ではあまり代わり映えのしない営業研修が、海外では時代に合わせて進化しているようなのです。

今回のトライツブログでは、「B2B営業向け研修の進化」についてご紹介します。

顧客の購買の仕方の変化が、営業研修を変える

このトライツブログを書くために、定期的に海外のB2BマーケティングやB2B営業についての情報を探していると、SFAやMAなどの最新テクノロジーや、アカウントベースド・マーケティングやセールスイネーブルメントなどのマーケティングや営業の最新の考え方についての調査記事をよく目にします。やっぱり、新しいテクノロジーや考え方というものに多くの人が興味を持っているのだなと実感します。

そのような中、今回は珍しく「B2B営業向け研修プログラムの進化」に関する面白い記事がありましたのでご紹介したいと思います。

これまでトライツブログでは、Webの普及などによって顧客の購買の仕方が変化してきているということを繰り返しお伝えしてきました。今回ご紹介する記事には、その波がいよいよ営業研修にまで押し寄せてきていることが書かれています。

調査記事:Corporate Visions社の新研修プログラム

アメリカのWebニュース会社ECT News Network社の記者Richard Adhikari氏がCRM Buyerに投稿した記事「Changing B2B Marketplace Calls for New Sales Skills」では、営業研修プログラムを提供しているCorporate Visions社が新しく開発したB2B営業向け研修プログラムを紹介しています。

新しい研修プログラムの骨子は以下の3点です。

・顧客が未検討のニーズや潜在的な可能性を伝えて取引規模を拡大する
・顧客内の複数の意思決定者の間の合意形成を促進する
・値引きに頼らずにクロージングする

このような研修プログラムを開発した背景について、Corporate Visions社のチーフ・ストラテジー&リサーチ・オフィサーのTim Riesterer氏は以下のように述べています。

「従来の営業研修プログラムは目の前の相手との取引を成立させることに重点を置いていました」(中略)「取引成立のために見境のない値引がされてきた・・・」(中略)
「B2Bの購買に関わる意思決定者は以前の5人から7人へと増えています」「複数の意思決定者をナビゲートして合意形成へと導くのは、現在のB2B営業担当者にとって不可欠のスキルなのです」

このように、顧客の購買の変化に基づき、それを支援する営業の方法を研修プログラムにした、ということです。まだ細部については発表されていないようですので、具体的なやり方や使用するツールなど継続的にウォッチしていきたいと思います。

システム導入が一巡し、次は営業担当者のスキルアップへ

これまで、トライツブログではアメリカを中心に海外のB2Bマーケティング&営業について、話題になっていることを継続的に観察してきました。

その流れを大まかに表すと、以下のようになると考えます。

1.CRM/SFAシステムを導入し、効率的に営業活動をできる環境を構築
2.MAなどのWebを中心とするマーケティング・システムを導入し、見込客を獲得・育成するしくみを構築
3.増えた見込み客を受注へと導くために、セールスイネーブルメント・システムを使って営業のマネジメントの手法を強化

このように、さまざまなシステムを導入しながらマーケティング&営業の環境を整えてきています。日本のB2B市場でも、2の段階まで進んでいる企業が多くなっているように見受けられます。

ここで、3のセールスイネーブルメントでは営業プロセスのどこに問題があってどのような手を打てばよいかは分かりますが、具体的な改善策を考え・実現するのはさらにその先の話です。今回ご紹介している「新しい営業研修プログラム」は、システム導入やセールスイネーブルメントのさらにその先、実際に営業担当者に研修を施してスキルを強化しないとこれ以上の営業成果向上につながらない、という状況から出てきているのではないかと思うのです。

これから求められるスキルは「顧客の購買を支援する力」

では、どのようなスキルを強化すればよいのでしょうか。
今回ご紹介したCorporate Visions社の研修プログラムが、この問いに対する1つの答えを示していることは間違いありません。また、日本でも翻訳版が発行された「チャレンジャー・セールス・モデル」では、顧客にインサイト(洞察)を提供し、顧客の購買行動を指導・サポートするという考え方が提唱されています。このモデルはさまざまなカンファレンスや業界記事の中で取り上げられており、これも現在のB2B営業担当者に求められるスキルを示していると捉えてよいでしょう。

これらを一言でまとめると、どうやら今求められている営業スキルは「顧客の購買を支援する力」だと言えそうです。

数年前までは、ソリューション型営業という言葉がもてはやされていました。自社の商品をただ売り込むのではなく、顧客の課題を把握しそれを解決するための手段として自社の商品を提案するというものです。しかし、いくら良いソリューションでも、「宜しくご検討ください」と相手任せにしていてはなかなか売れません。そのソリューションを買う後押しまでしよう、というのが今回のキーワードである「顧客の購買支援」です。

これまでのB2B企業における営業研修では、FOCUS研修やSTAR研修、SPIN研修など目の前の相手との信頼関係を構築する、目の前の相手の視点から商談を組み立てる、というように目の前の相手をいかに動かすかが中心であったように思います。しかし、顧客の中に複数の意思決定者がいて、そこでの合意形成を導こうとすると営業のやり方は大きく変わってくることでしょう。

「営業担当者にスキルアップさせたい」「良い営業研修がないか探している」という方はぜひ今回の記事を参考に、「自社の営業における『顧客の購買支援スキル』とは何だろう?」と考えてみてください。従来から言われているプレゼンテーション・スキル、ヒアリング・スキル以外に、必要なスキルがきっと見えてくるはずです。

参考:「Changing B2B Marketplace Calls for New Sales Skills」(CRM Buyer, Jul 27, 2017)

トライツコンサルティングでも、今回ご紹介した「顧客の購買を支援する力を高める営業研修」を、個別企業の実態に合わせて設計・提供しています。「これまでの営業研修に満足していない」「もっと顧客を引っ張る営業になってほしい」とお考えの方は、下記よりご相談ください。これまでの取組事例などをご紹介いたします。