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営業活動にとって新規顧客開拓は大事な要素です。しかし、そのために見込顧客のデータベース(以下、顧客データと呼びます)をつくって定期的にマーケティング活動・営業活動をおこなっているB2B企業は、日本ではまだ少ないようです。

今回のトライツブログでは、顧客データ活用先進国のアメリカで最近発表された調査結果と、そこから見えてくるB2B営業に大事な要素についてご紹介します。

調査結果:顧客データの充実が成功のカギ

昨年末にDueDil社が発表した「State of Sales Report」では、顧客データの充実が営業成功のカギであることが明らかになりました。このレポートは、アメリカの1,400人のB2B営業・マーケティングの担当者を対象に、現在のB2B営業・マーケティング部門が抱える課題についてまとめられたものです。

この中に、営業目標を達成している企業と、達成していない企業とのギャップについての調査があります。「顧客の連絡先の共有」や「顧客の予算枠の把握」など営業を成功させるためのさまざまな大事な活動がどれくらい実施できているか、その割合を比較したところ、もっともギャップが大きかった3つの活動は以下でした。

  • 顧客データを最新の状態に保つ(GAPは23%)
  • 顧客データに外部データを利用する(21%)
  • 市場規模を推定する(21%)

この結果は、営業目標を達成するうえで顧客データの充実が大きな要素を占めていることを示しています。それも単に社内にあるデータを集めるだけではなく、社外にあるデータも取り入れ、常に最新の状態になっているようメンテナンスまでやることが成功のカギである、そうレポートから読み取ることができます。

データ/情報が重要な位置を占めるアメリカのB2B営業

このようなB2B営業・マーケティングにおける状況をサポートするために、アメリカではさまざまな顧客データベースのサービスが活用されています。

たとえば、VirtualDBSでは顧客データの中に、対象者個人の学歴や職歴と言った一般的な情報以外にも、世帯収入や持ち家資産、婚姻歴などのデータが登録されています。また、大手顧客データ会社であるDun & Bradstreetが運営するNetProspexやDemandbaseでは、こちらが売りたい商品やサービスに合わせて最適な見込み客のリストを抽出・生成する、というサービスまで提供しています。

このようにアメリカでは数多くの企業の情報と、そこに勤める個人の情報が売られており、それを買って営業・マーケティングに活用している人/企業があるのです。

データ/情報への意識がまだ薄い日本のB2B営業

一方、日本のB2B営業を見てみると、見込み客づくりのための顧客データを持っていない会社がまだまだ多いように思われます。せいぜい、部署ごとに既存顧客データベースを作っているくらいで、それもあまり更新されておらず、社外から買っているデータは帝国データバンクの評点(与信情報)くらいだ、というところも多いのではないでしょうか。

私が営業現場を支援しているときも、顧客データをうまく活用できていない、と感じることがよくあります。ある会社でなかなか攻略できていない大手顧客を改めて攻めようとしたときに、前任者から引き継がれた顧客データは今までに集めた名刺のコピーだけ、ということがありました。「キーマンは誰なのか」「そのキーマンはどんな経歴か」「自社の役員の誰かと大学時代につながっていないか」といった、顧客攻略のために本当に使える情報は営業個人の頭の中だけにあって、組織で共有したり引き継がれたりはなかなかされないのです。

かと言ってそれが問題視されることがないままに、引き継いだ営業担当者は「目の前の相手とどうやって新たな人間関係をつくるか」に挑み、「どうやって相手の首を縦に振らせるか」という心理戦に営業としてのウデを発揮していきます。

『情報戦』で後れを取る日本の営業

このように見てくると、営業を『心理戦』と捉えている日本に対し、(『心理戦』という要素はふまえた上で)『情報戦』と捉えているアメリカというように分けられそうです。実際の営業活動には『情報戦』と『心理戦』の両方の要素があり、どちらが欠けても見込み客を見つけて商談化し、受注につなげるという一連の営業活動はうまくいかないものです。つまり、日本ではまだまだ『営業は情報戦でもある』という認識が薄い、と見るべきです。

これを言い換えると、今の多くの日本の営業は、今回ご紹介したアメリカでの調査結果の中にあった、目標を達成できていない「負け組」の営業チームの状態にあるということなのです。

情報戦に長けた営業チームでWeb時代に勝つ

これから日本のB2B営業にもWebがもっと大きな影響を及ぼしてきます。日本のB2B市場でも、1対1の心理戦に持ち込む前にWeb上での情報戦で勝負が決まっている、ということも増えてくるでしょう。具体的には「潜在キーマンにWebを見てもらう」とか「商談化する前にE-mailでコンタクトを取れるようにする」といった戦い方は、心理戦に長けた営業の猛者ばかりを何人そろえたところでできることではないのです。

情報戦に長けた営業チームづくりがこれからの日本のB2B営業部門の大きな課題であると、今回の調査結果は示唆しているように思います。

参照:「Announcing DueDil’s 2015 State of Sales Report」

データの世紀と言われて久しい現在では、顧客データの充実とその活用はB2B営業の成功にとって不可欠の要素です。今あるデータをどう使うのか、今後の営業に活かすためにこれからどのようなデータを集めるのか、トライツではそのようなご相談に対応しております。いつでもお気軽にご連絡ください。