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2022年から始めた海外カンファレンスへの取材旅行。今年(2025年)は5月18~21日の4日間、アメリカのワシントンDCで開催された人材育成系最大のカンファレンス『ATD 2025』に出席しました。研修などの人材育成系テーマからセールスイネーブルメントまで、世界的に有名な講演者の最新の研究内容やアイデアを聞いてくることができました。
今回はATD 2025のカンファレンスレポートの第1弾として概要をご紹介します。世界最大規模のビジネスイベントがどのようなものなのか、ぜひご覧になってください。
80年超の歴史を誇るATDの今年の国際大会が『ATD 2025』
まず、カンファレンス名にもなっている「ATD」がどういうものなのかを見ていきましょう。ATDはAssociation for Talent Developmentの略称で、1944年から活動している人材育成関連の非営利団体。人事・育成系の仕事をされていた経験がある方は、以前の名称ASTD(American Society for Training & Development)がなじみ深いかもしれません。
そんなATDが年1回開催する国際大会の2025年版がATD 2025。オンライン参加を含めて10,000人以上が450を超えるセッションに参加するという、とんでもない規模のイベントでした。これだけの数を収容したのがワシントンのダウンタウンにあるコンベンションセンター。
その建物の1フロアの大きさは、東京ビッグサイトで一番大きな展示会場(東展示棟)と同じくらい。広さの単位(?)として「東京ドームいくつ分」という言い方がされますが、東京ビッグサイトの東展示棟も、ワシントンのコンベンションセンターも東京ドーム1.1個分くらいです。その1.1個分の広さを講演などの会場で3フロア分、そして協賛企業の展示会場であるEXPOで1フロア分、つまり東京ドーム4個半分の広さで実施されたのが今回のATD 2025なのです。
百聞は一見に如かずと言いますので、まずは公式がYouTubeに上げている、1分20秒程度の初日のまとめ動画をご覧になってください。
なんとなく雰囲気はつかんでいただけましたでしょうか。活気はありつつも落ち着いたトーンの動画になっていますが、まさに会場の様子もその通り、4日間の国際大会だというワクワクした感じと、しっかり学ぶぞという落ち着いた感じとが入り混じった、独特な雰囲気のカンファレンスでした。
それでは続けて、会場の様子などを細かく見ていきましょう。
ATD 2025の会場風景:①講演会場
こちらが7,000人収容の大会場。これでも会場の真ん中辺りなのですが、ステージは遥かかなたで肉眼では見えません。キックオフなどの大型講演はこのスペースで開催されました。

また、この大会場でのキックオフの前に必ず実施されていたのが、バンドによる生演奏。

単純に場をエンタメとして盛り上げるという意味もあるのですが、最近は楽器を演奏したりダンスをしたりと音楽を研修の中に取り入れることが研究・実践されています。このような人材育成観点での理由もあって、音楽というものが非常に大事にされているように感じました。
そして中サイズの講演会場がこちら。だいたいの会場には、セッション中のグループディスカッションなどができるように円卓が配置されていました。

また、大会場での講演の翌日には、講演内容を1枚の大型ボードにイラストでまとめた、グラフィックレコーディングが展示されていました。研修やファシリテーションの専門家が集まるATDらしい展示だと思います。

ATD 2025の会場風景:②展示会場
続けて、展示会場の様子がこちら。400社/団体以上が出展していますので、とても一望することはできません。日本の展示会と比べて各出展者の展示スペース内もゆったりとレイアウトされていました。また、日本の展示会でよくある、客を呼び込むためのコンパニオンの女性が衣装を着て立っていることもないですし、無理やり話しかけてくることもありません。あくまでも興味があれば対応してくれるというスタンスで、私はこちらの方が疲れずに回れてよかったです。

展示会場の中でひときわにぎわっていたのが、子犬と触れ合えるスペース。

職場のストレスを軽減するために、ペットの同伴を認める企業もアメリカには増えてきているようで、ここに立ち寄られていた方は(私も含め)愛くるしい子犬に疲れが癒されていたようです。
ATD 2025の会場風景:③書籍&ATDオリジナルグッズの販売会場
また、非常にATDらしいなと思ったのが、書籍とグッズの販売スペースがあること。

ご覧のように広大なスペースの中で、講演者の本を並べています。

これは「心理的安全性」で日本でも著書が飛ぶように売れた、エイミー・エドモンドソン氏のコーナー。今回のカンファレンスでは、左にある最新作「Right Kind of Wrong」(邦訳「失敗できる組織」)からエッセンスを抜粋して講演されていました。
また、ATDが出版している研修や人材開発などの書籍も売っていましたし、面白かったのがオリジナルグッズが充実していたこと。

さすがにこの格好で歩いている人は少ししか(!)いませんでした。それでも、こういうグッズがあることでATDのメンバーの方は帰属意識が高まるでしょうし、なにより単純にお祭り感覚で楽しいですよね。
日本を始め、世界中から参加者が集まっていたATD 2025
そして、以前にご紹介したトライツの海外カンファレンスレポートをお読みの方は、「日本人を会場で見ることはなく」というくだりを毎回ご覧になっていたと思いますが、今回は違いました。まずそもそも、ATDの日本における支部団体「ATD-MNJ」があり、そこでも参加を募っていたことから数十名単位での日本人参加者を会場で見ることができました。
もちろん会場は日本からだけでなく、世界中から参加者が来られていました。下の写真は、会場内で各国からの参加者が集まって懇親を深めるためのスペース「グローバルビレッジ」に立てられていたボード。

特に東アジアを中心に紙が何枚も貼り付けられていますが、これはすべて現地参加している方の名刺。こう見ると、日本から多くの方が参加されていることがよくわかります。また、韓国や中国などの東アジア、また中東などからも大勢の方が参加されており、国際大会の名に恥じない実にグローバルなイベントだったと言えるでしょう。
次回からは実際の講演内容から日本のB2B営業&マーケティングにも役立つ最新アイデアをご紹介します
ここまでATD 2025の概要をご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。少しでも皆さんに会場の雰囲気、そして参加者のワクワク感が伝わっていれば嬉しく思います。
次回の海外カンファレンスレポートからは、いよいよ実際に聞いてきた講演のうち、日本の営業・営業企画・マーケティングに携わる皆さんのお役に立つものを厳選・抜粋してご紹介します。中でも特にご紹介したいのは、書籍販売ブースの写真で少し触れたエイミー・エドモンドソンさんの「失敗できる組織」から、組織の成長につながる「正しい失敗の仕方」についてと、「紫の牛を売れ」などでも有名なマーケティングの専門家セス・ゴーディン氏による「最高な仕事と職場の作り方」について。
ぜひ次回以降もお楽しみにしてください。