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この4月から新しく営業マネージャーやリーダーとなった方、新たに部下や後輩を持つことになった方もいらっしゃることでしょう。私のクライアントでも新たに役職に就かれた方がいらっしゃいますが、そういった方からよく質問されるのが「営業会議ってどうやって進めたらいいの?」というもの。
確かに、普通に営業職として過ごしていると、自分がこれまでに所属した部署のマネージャーやリーダーがやっていた会議のやり方しか知らないもの。隣の課や部も同じような会議をしているんだろうなぁ、くらいにしか情報が入ってこないものです。
そこで今回は「営業会議の進め方」について海外の書籍を参考にしながら考えたいと思います。新たにマネージャーやリーダーになられた方も、これまでの営業会議の進め方を見直したい方も、ぜひお読みください。
新しく営業マネージャーとなる方必見の教科書「Learn to Love Selling」
今回ご紹介するのは、半年ほど前に出版された営業本「Learn to Love Selling」(営業が好きになる学び)。タイトルだけを見ると始めて営業職に就く人向けの営業の入門書のようですが、実はこれ新しく営業マネージャーとなる方に向けた実務書なのです。「1. 自分たちの営業プレイブックを作る」「2. 営業チームを構築する」「3. 営業チームを率いる」という3つのパートに分かれており、今回はパート3の「営業チームを率いる」から、営業会議の進め方を抜粋してご紹介します。
ちなみにパート1の「自分たちの営業プレイブックを作る」は、商談プロセスや提案のやり方などの手法を設計しそれを型化/プレイブック化する方法について、パート2の「営業チームを構築する」は、メンバーを採用して研修等で育成する方法について書かれています。新しく営業マネージャーになる方にとっては、営業会議以外にも読むべき箇所がたくさんありますので、ぜひチャレンジしてみてください。
週次/月次の営業会議の進め方
それでは、週次/月次の営業会議の進め方から見ていきましょう。
目的
・成功につながる営業活動の内容とそれに取り組む目的をチームで再確認する
・顧客や業界などの現場の情報をチーム全体に共有する
・営業の成功につながる、重要な学びや営業手法の習得についてチームで協力する
・マネージャーから自社の最新情報をメンバーに共有する議題
1. 数値/指標の確認
・マネージャーから営業チーム全体の目標達成状況をポジティブな観点から解説・共有する
2. 各メンバーによる発表(各5分)
・今週/今月の目標に対する活動と結果
・今週/今月の優先事項上位3項目についての活動と結果
・必要な支援
3. 学習と協力
・チーム全体で話す2~3のトピックを選んで、それについての議論
(商談発掘の手法、市場トレンド、顧客についての気づき、など)求める成果
・来週/来月に向けて、各メンバーが有効なアクションプランを手に入れている
・営業リーダーとメンバーがそのアクションプランについて共通理解しており、すべてのメンバーがコミットしている
一点だけ補足が必要なのが、アメリカの営業組織では週の後半、金曜日の午前中や午後一番などにチーム単位のミーティングを行うことが多いため、「今週/今月の目標に対する活動と成果」のような表現になっています。日本の営業組織では月次だと月末、週次だと月曜日に行うことが多いと思いますので適宜読み替えてください。
四半期ごとの営業キックオフ会議の進め方
同書には四半期ごとの営業キックオフ会議の進め方についても書かれていますので、続けて見ていきましょう。
目的
・各メンバーが、次の四半期で獲得する収益を最大化するためのアクションプランを手に入れている
・営業の成功につながる、重要な学びや営業手法の習得についてチームで協力する議題
1. マネージャーからのコメント
・前四半期の総括と振返り
2. 各メンバーによる発表(各20~30分)
・今四半期の目標および注力商談
・今四半期の目標にさらに上積みできそうな商談
・上記について活動目標:既存/新規のターゲット顧客、既存顧客の維持状況
・各メンバーの計画に対するチームからのフィードバック
3. チームでの研修/ワークショップ(計画やチームのスキルに応じて内容を設計)求める成果
・チーム全体で、次の四半期に向けて前向きに取り組む雰囲気が醸成されている
・成功事例がチーム全体に共有されている
・自社の重要な最新情報をチーム各人が承知している
・各メンバーが営業活動を成功させるのに必要なアクションプランを手に入れている
ご覧いただいてお気づきのように、議題の3つめが必ず「学習」「協力」についてのものになっています。日本の営業組織だと、メンバーが各自の活動実績を順繰りに報告したあとで営業マネージャーが喝を入れ、そのままお開きになることが多いものですが、このように学びや成長の機会を取り入れようとする辺りがこの本だけでなく、海外の営業会議の特徴だと思います。
営業マネージャーの役割は指揮統制ではなく、学びや成長の場を通じてメンバーの可能性/能力を最大化すること
学びや成長の機会を営業会議に取り入れることについて、同書の著者のマーク・コックス氏はゲストとして呼ばれた営業ポッドキャスト番組の中で以下のように語っていました。
以前の私はひどい営業リーダーでした。知らず知らずのうちに「指揮統制」のリーダーシップスタイルでマネジメントしてしまっていました – チームが潜在能力を最大限に発揮するように指導するのではなく、私の目標を達成するためにチームを管理していました。(中略)
営業パーソンから営業マネージャーへ変わるためのポイントは、統制ではなく信頼です。営業のマネジメントとは、チーム各人の可能性を解放することで、チームに自分のやり方を押し付けることではありません。
この考え方があるため、マネージャーが細部までやり方を押し付けるのではなく、チームメンバーの学びや成長につながる議題を営業会議の中に取り入れ、そこでお互いに教え合い学び合う活動を起こそうとしていたというのです。
日本の営業組織での営業会議へ「学びと成長」を取り入れている事例
私が知っている日本の営業組織でも、営業会議の中で学びと成長のための場を設けている企業があります。ある営業組織では、四半期ごとの営業会議の後半で成功事例とそこから得られたエッセンス、ヒアリングの進め方や提案書で反応が良かったページについてメンバーが発表し合う時間を設けていました。また別の営業組織では、営業マネージャーが各メンバーとの1on1の中で成功事例や商談時の工夫についてヒアリングし、その内容を毎週のグループ会で共有するという取組をしています。
「学びや成長の場」と書かれると大掛かりな準備が必要なように見えてしまいます。しかし、日々メンバーが行っている工夫や成功体験に目を光らせ、それを皆にとって役立つものになるように多少加工して発信してもらう。これだけでも十分にメンバーの創造性や潜在能力を発揮・解放させる1つの手段になると思うのです。
営業会議を各メンバーが新しい気づきや学びを持ち帰れる場に!
今回は4月目前。新しく営業マネージャーやリーダーになって営業会議を運営するという方や、期の変わり目に営業会議の進め方を見直したいという方向けに、一方的な報告会議になってしまいがちな会議の進め方を見直すヒントをご紹介しました。ぜひ参考にしていただき、メンバーが自分の報告に対して指摘されるだけでなく、新しい気づきや学びを持ち帰れる場としての営業会議に変えてみてはいかがでしょうか。
参考:「Learn to Love Selling: The Universal B2B Sales Playbook」(Mark Cox, In the Funnel Publishing, 2024)