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「社会人なら新聞を読むのが当たり前」などと言われていたのも今は昔。通勤電車に乗っていても、新聞紙を蛇腹のように縦長に折り畳んでビジネスパーソンを見ることはまずありません。スマホを片手に持っている人の多くは動画やゲーム、漫画などを思い思いに楽しんでいます。

そして、今年の春ごろにはX(旧Twitter)で、「新聞、月5000円も払って昨日のニュースが紙で届くってやばいな…」というツイートがバズってもいました。オールドメディアなどとも表現されるなど、若年層を中心に確実に新聞離れが進んでいます。

しかし、そのような状況だからこそ、周りがあまり読まない新聞を自分が継続して読むことがリスキリングや情報武装の大きな一歩になる、とも考えられます。今回は、営業職を含む若手ビジネスパーソンが新聞を読むことのメリットについてご紹介いたします。「そういえばしばらく新聞を読んでいないなぁ」という方も、「情報収集が大事なのはわかるけど、新聞を読むのはおっくうで…」という方も、ぜひ読んでみてください。

20~30代で新聞を毎日読むのは5%未満!?もう止められない若年層の新聞離れ

新聞を読むメリットの話の前に、どれだけ新聞離れが進んでいるかを押さえておきましょう。

日本新聞協会のデータによると、紙の新聞の発行部数は2000年に5,370万部で1世帯当たり1.13部だったのが、最近(2023年)では2,859万部で1世帯当たり0.49部となっていて、文字通りに半減しています。また、新聞通信調査会の2024年版「メディアに関する全国世論調査」によると、新聞を毎日読むのは36.1%。ただし、20代が4.9%、30代が4.2%、40代が10.9%、50代でも27.4%にすぎません。20~50代の人にとって最大のニュースソースはインターネット記事だそうです。

ちなみに、新聞のうち紙を定期購読しているのは読まない人も含めた全体のうち47.9%で、有料の電子版は1.9%。紙の定期購読が多いように見えますが、20代は17.0%、30代は16.7%、40代は27.3%と若年層は変わらずに低調。有料の電子新聞を読んでいる人も若年層でも5%足らず。このため、冒頭にあった「昨日のニュースが紙で届く」から読まれないのではなく、「今日のニュースがスマホで見られる」電子版であっても新聞は読まれない、ということなのです。

ではなぜ読まれないのか、新聞通信調査会のデータによると2位の「購読料が高いから」(39.3%)に倍近くの差をつけた1位(75.5%)の理由は「テレビやインターネットなど他の情報で十分だから」とのこと。

新聞を読むことが特別なことに

この調査を見ていると、「新聞を読んで情報を得る」のが当たり前だったのが、今は「テレビやインターネットから情報を得る」のが当たり前になっていることがわかります。これだけ読んでいる人が少ないと、昔のように「新聞も読んでいないのか?」とバカにされることもないでしょうし、読まないのがフツーという状況です。

そんな環境の中では、月5000円払って昨日のニュースを読むというのはもはや「特別なこと」になっています。皆がやってるから・・・という消極的な理由でなく、自分なりに価値を見出さないと続けられないのが現代の「新聞を読む」ことだと思います。

ではその「特別なこと」にどんな価値があるのでしょうか。

テクノロジーは我々の視野を狭くする

皆さんが日々見ているニュースサイトやSNSは、これまでの履歴によってカスタマイズされています。自分の関心のある情報が出てくるので、飽きずに見続けることができます。しかし、そればかりに頼ってしまうと、どうなってしまうのでしょうか。

人間は自分が見聞きした情報をもとに自分の頭の中に世の中の地図を描きます。地球の周りを太陽や月などの星々が回っていて、世界の端は大きな滝になっていると昔の人が思っていたのは、世界がまさにそのように(だけ)見えていたからです。

つまり、普通にSNSやWebで情報収集をしていると、自分がほぼ触れることのない盲点が大量に発生してしまうのです。脳内の地図でいうと、本当の世界はもっともっと広いはずなのに、ごくごく狭い近所だけしかわからない、ということになってしまいかねません。

テクノロジーによって、我々の視野が狭くなるということが実際に起こっているのです。毎日のように闇バイトのニュースをやっていても、スマホでゲームやショート動画しか見ない若者には情報が伝わらないというのは、まさにその例だと思います。

自分に興味のない見出しに継続して触れることで「世の中全体の地図」が頭の中で形成されてくる

それを防ぐために有効なのが、私たちの行動に影響されずに幅広い情報を大量に提供してくれる新聞なのです。株や投資をしたことがなくても、日本や世界の株式市場に大きな変動があれば大きな記事になりますし、それに関連した国債や為替、ビットコインなどの仮想通貨の記事のタイトルが目に飛び込むようになっています。

そのため、すべての記事を隅から隅まで読まなくても、新聞を流し読みしているだけで、どの面にどんな記事が掲載されているかがおおよそわかるようになります。そして、これまでにあまり接点がなかったテーマであっても、見出しの大きな記事を読むことで、うっすらとその世界の景色が見えてくるようになる。このように新聞に掲載されている幅広い情報を眺めるということを継続していけば、クッキリからボンヤリまで解像度の違いこそあれ、世の中全体の地図が頭の中に出来上がってくるのです。

すると、新しいニュースや身近な出来事に対して、その地図をもとに理解したり解釈したりできるようになる。経済や政治のニュースが自分の担当する顧客の業界にどう影響するのかがわかる。AIの回答に対して、最近のニュースをもとに「▲▲の観点を加えて作り直して」と突っ込んだリクエストをできるようになる。このように世の中の動きや身近な出来事に対する理解が深くなることが、カスタマイズ性の低い新聞を読む最大のメリットだと思います。

専門家の仕事がニュースを読むときの補助線になる

そして新聞には、世の中を理解するための地図を頭の中に描きやすくする、もう1つの特長があります。それは「記者による取材と編集」です。

新聞社では経済や社会、国会などの担当記者がいて、数年単位で取材をして記事を書いています。そのため、優れた新聞記事は最近起こった事実情報としてのニュースを羅列しているだけではなく、その背景や過去からの文脈、経済政策などであれば学術的な理論も含めて評価・解説してくれています。この取材と編集という専門家の仕事が加わることで、私たち読者はその情報を頭の中の地図のどこにマッピングするべきか、これまでにマッピングしてあるどの情報と関連付けたらいいのかがわかりやすくなるのです。

もちろんネット記事の中にも取材や編集がしっかりされているものもあるので、新聞記事だけに限られたものではありません。それでも、記者の長年の経験に基づく記事は、頭の中に地図を描く際の有効な補助線になると思います。

これからの時代、必要となる「よみかきそろばん」

江戸時代の寺子屋から教育の基本であった「よみかきそろばん」ですが、それを現代のビジネスマンに必要な基礎スキルとして置き換えると、

よみ:顧客の話はもちろん、それ以外のさまざまな情報を入手し、読み解くこと
かき:情報に基づく自分の考えをロジカルに整理し、わかりやすく表現して、相手を動かすようにプレゼンすること
そろばん:デジタルツールを駆使し、データを活用して継続的に仕事の生産性を向上させること

となるでしょう。

これは今後のAI時代において、益々重視されるものです。しかし、実はテクロノジーの進化によって「楽」をすることを覚えてしまった現代人において、これらのスキルは決して高まっていないように感じています。

これは全体としてみると大問題ですが、個々人で考えるとチャンスです。現代の「よみかきそろばん」の力を高めることはその人の稼ぎを増やすことに直結するからです。

ではどうやってその力を高めるか。

そこで注目すべきなのが、新聞なのです。新聞を毎日読み、自分の関心のある情報だけでなく、幅広い世界の情報に触れておくことや、記者という情報を扱うプロの書いた文章を読み、考えることは、この現代の「よみかきそろばん」の基礎力を高めることにつながるからです。

新聞購読は効率の良い自己投資

最近の若者の中には投資に関心の高い人が増えていると聞きます。将来を見据えて、株などに投資をしたいと考えるようです。しかし、それよりも大切なのは自分の稼ぎを増やすために「自己投資」することだと思います。

昔はまわりについていくために読むものだった新聞が、これからは自分の差別化のために読むものになったということです。「月5000円で昨日のニュースを読む」のでなく、「月5000円で自己投資する」のです。

媒体は紙でも、電子版でもOKです。自分の好み、生活習慣に合わせて選択すればいいでしょう。新聞を毎日読み、そしてついでにトライツブログを毎週読む。あなたがセールスパーソンとして成功するための近道だと思いますがいかがでしょうか。