トライツコンサルティング株式会社

営業DXに欠かせない「データ分析の民主化」とは

この記事を読むのに必要な時間は約 10 分です。

AIに機械学習にビッグデータなど、データ分析に活用できる技術は日々長足の進歩を遂げています。そして、SFAやBIといった業務ツールの中にも、それらの機能が組み込まれるようになり、少し手を伸ばして投資をすれば誰もがこの最先端の技術を使って仕事ができるようになってきています。

この「一握りの専門家だけが使っていたものを、大衆が使えるようにする」という考え方を、最近は「民主化」というキーワードで表現することが多いようです。例えば、「AIの民主化」という表現は令和元年版の情報通信白書(総務省)の中にも出てきます。

そして、最近はデータ分析の「民主化」の必要性も語られるようになり、「データの民主化」「アナリティクス(分析)の民主化」という冠のついたセミナーや記事をよく見聞きするようになりました。
「なぜ専門家だけでなく誰もがデータ分析できるようになる必要があるのか」
「データ分析は現在どこまで民主化されていて、どこにボトルネックがあるのか」
海外の調査レポートや国内の事例を参考にして、「データ分析の民主化」について考えてみたいと思います。

海外調査レポート:データ分析はまだ民主化されていない

MicroStrategy社が最近発表した調査レポート「グローバルエンタープライズアナリティクス調査2020」は、米英独日そしてブラジルの5か国の計500社を対象にして、特に大企業でのデータ分析(このレポート内では「アナリティクス」と呼んでいます)の実態を上手くまとめています。

このレポートの中で、民主化の必要性とその現状についてまとめている箇所がありますので、抜粋してご紹介します。

ビジネスインテリジェンスのゴールは、変革と進歩を促進するため、重要な組織的洞察を提示することだ。ただし、セルフサービスの実験について、誰もが利用できるアナリティクスという望みは実現していない。(中略)これは、現在BIのパラダイムが、ユーザーから離れた方向に向かっていて、彼らの業務ワークフローや、日々利用しているアプリケーションおよびツールから切り離されることが大きな原因だ。それはいまだにチャートやグラフ好き、数字リテラシーの高い者、およびデータ・ビジュアリゼーションやストーリーテリングの専門家が好む仕様となっている。

上の文章を簡潔に要約すると、「データ分析(アナリティクス)はまだ誰もが利用できる(民主的な)ものではない。今のBIは専門家向けのものであり、一般的なユーザーの業務や利用しているツールから切り離されている」ということです。

データ分析をアナリスト任せのグローバルと、IT部門任せの日本

レポートでは続けて、専門家中心となっているデータ分析の実態をより克明に描写しています。

アナリティクスに熟達していない者達が、データ駆動型の意思決定を行う必要がある時、79%がIT部門またはビジネスアナリストに支援を求める必要がある。セルフサービス・ツールを利用しているのは7%のみで、その他は手作業で調査をしているか、単純な直感で意思決定をしている。

データ分析の民主化の度合は、「セルフサービス・ツールを利用している7%しかない」というのがこのレポートのハイライトの1つであり、だからデータ分析のセルフサービス・ツールを導入して「アナリティクスの民主化を進めよう」というのが、このレポート全体を通じてMicroStrategy社が一番伝えたいメッセージです。

ちなみに、上の「79%」は米英独日ブラジルの5か国での数字で、その内訳はビジネスアナリストが35%、IT部門が44%というもの。日本1か国だけのデータにすると、この数字はビジネスアナリストが13%、IT部門が66%となります。

これは他の4か国と比べても圧倒的にいびつな割合で、日本企業においてアナリストが絶対的に不足している様子がよく分かります。その結果、データ分析の多くが社内のシステムからデータを抽出するだけの、アナリスト不在の集計作業になってしまっていることが懸念されます。また、日本の場合は「専門家(アナリスト)の仕事になっているデータ分析を民主化しよう」という前に、「そもそもの専門家が存在しない企業が多い」という、別の問題も見えてきます。

データ分析の民主化が必要な3つの理由

ここまで見てきたように、MicroStrategy社のレポートは現在のデータ分析の民主化の状況を分かりやすく捉え、かつ日本市場の独自性も浮かび上がらせる秀逸な内容になっていると思います。ただ、データ分析を民主化する必要性については「重要な組織的洞察を提示する」としか言及されておらず、若干物足りないように感じますので少しだけ補足します。

データ分析を当事者がせずにIT部門やアナリストに任せてしまうことには、大きく3つの問題があると私は考えます。

1つ目は「分析の意図が伝わらない」ことです。IT部門はデータの抽出にたけていますし、アナリストは統計的な手法を使ってそれを分析・加工するのは得意ですが、そもそもの分析の背景や目的、業務内容、結果の活用方法などを十分に理解していることは稀です。そのため、「こっちの言っていることが伝わらない」となったり、その結果「意味のない分析結果が返ってくる」ということが往々にして発生します。

2つ目の問題は、「データのクセ・傾向に適さない処理がされる」ことです。例えば、商品数が多く商品コードの付け方に一貫性がない場合、似たような商品をまとめて分析をするというのは至難の業になります。また、顧客情報が営業現場でどのように入力され、どうやってメンテナンスされているかを知らないと、どのようなエラーが発生しやすく、どのようにデータをクレンジング(精製)すればよいかの見当をつけることができません。現場のことを分かっていないと、どうしても分析する前のデータの下処理や集計の質が下がってしまうのです。

3つ目の問題は「スピードが遅くなる」こと。上記のようなコミュニケーションミスや、理解不足による作業のやり直しなどのために、データ分析をIT部門やアナリストに依頼する場合、現場の当事者が作業をするときよりも多くの時間が使われてしまいます。

こういった問題をクリアし、短時間で現場の意向に即したアウトプットを出すためにも、データ分析を民主化することは必要ですし、分析スキルを一握りの専門家だけでなく一般社員が身に付けることには大きな価値があると私は思います。

データ分析の民主化のヒントは国内にもある

このデータ分析の民主化について、昨年開催された「アナリティクスサミット2019」で参考になる事例を耳にしました。

皆さんご存知の「メルカリ」を運営している株式会社メルカリでは、専門家でなくてもデータ分析ができる人を社内に増やそうという「ゆるふわBI」という取組が2018年に始まり、全社員の1割近くが参加しているそうです。このコミュニティでは、メンバーが定期的に集まって情報交換をしたり、社内の掲示板でデータ分析に関するサポートをしたり、社内で勉強会を開催しているとのこと。

この取組が現在も続いているのか、規模や内容がどのように変化しているのかは寡聞にして知りませんが、相互扶助のコミュニティをつくりその運営を会社としてサポートする、というのは面白い発想ですし、かつ比較的低コストでスタートできる施策だと思います。データ分析の民主化に取り組もうとされている方はぜひ詳しく調べてみてください。

まずは今あるデータの分析について「自分事」で考えてみよう

最近見聞きする機会が増えてきている「データ分析の民主化」。SFAやMAを活用した営業DXへの取組が広まってきており、データドリブン型経営という言葉も広く使われている現在では、アナリストやコンサルタントなど一部の専門家だけでなく営業に関わるメンバーであっても、データ分析の環境とスキルを手に入れることが不可欠なものとなりつつあります。

とは言え、そのためには「皆がデータを見られる環境づくり」「誰もが簡単に使える分析ツールの導入」「目的やデータの内容に応じて分析手法を選べる知識の習得」など、組織としてクリアすべきハードルがいくつもあります。その中でも、一番大事だと私が考えているのは、データ分析を「誰か(よその専門家)にやってもらうもの」から「自分たちでやるもの」へと意識を変えることです。

その第一歩として、今あるデータを使うとどんな分析ができそうなのか、どんな分析結果を出せると事業にとって価値があるのかを、メルカリの「ゆるふわBI」のように皆で話してみるのも一つです。数字やExcelに強いメンバーがいると、「そんな分析をやったことあるんだ!」「意外と簡単に分析できるかもしれない!」という発見があることでしょう。何も考えずに外部の専門家に丸投げするのではなく、いったん自分たちで「できること」「やりたいこと」を考えてみる。そこから「データ分析の民主化」が始まると思うのです。

トライツコンサルティングでは、営業に関連するデータ分析の企画とその実践サポート、営業メンバー向けのデータ分析スキルの習得サポートをしています。2月12日にはSFAデータの分析と活用法に関するセミナーを開催いたしますので、ご興味のある方はぜひお越しください。

参考:「グローバルエンタープライズアナリティクス調査2020」(MicroStrategy, 2020)

モバイルバージョンを終了