トライツコンサルティング株式会社

使いこなせていますか?SFAのダッシュボード活用2つのポイント

この記事を読むのに必要な時間は約 11 分です。

およそ1か月半の緊急事態宣言が全国で解除になりました。しかし、今後は状況を見ながら3週間ごとに休業要請を緩和していくとのことですので、まだまだ感染者数などの数字に気を付けなければいけない日々が続きそうです。

新型コロナウイルスに大きく揺さぶられたこの数か月。テレビのニュースやWeb記事などで、こんなに毎日グラフを見続けたことはなかったのではないでしょうか。最初の頃のグラフの種類は累計感染者数や新規感染者数くらいでしたが、現在「日本経済新聞」「NHK」「東洋経済」などメディア各社の特設ページを見ると、陽性率や実行再生産数、人出の減少割合(自粛率)など様々なグラフが掲載されており、まるでSFAやBIのダッシュボードのようです。

しかし、このダッシュボードというものはなかなか営業現場で活用されていないようです。「SFAのダッシュボードの見方が分からない」「入力する習慣はついてきたが、ダッシュボードを上手く使いこなせていない」という声を多くの営業組織から聞きます。そこで今回はこれだけグラフを見る毎日が続いている中で、改めて「SFAのダッシュボード活用」について考えてみたいと思います。

「SFAのダッシュボードが使えない」の2パターン

SFAの中には、顧客に関するデータや商談に関するデータなどが入っており、それらのデータは商品別/担当者別/部署別というように様々な切り口で集計・分析することができます。この様々なSFAデータの集計・分析を、グラフなどを使って見やすく整理しているのがダッシュボードです。このように便利なツールのはずなのに使いこなせないと言うのです。

その原因を見ていくと大きく2つのパターンに分けられます。1つ目は「意味のあるデータが入っていない」というもの。SFAへの入力率が低すぎたり、日報のようにテキスト形式での入力がメインだったりすると、集計・分析するもの自体がない、ということになります。ただ、最近では多くの企業でSFAが定着し始めており、このパターンは減少傾向にあるようですので今回は対象外とします。

2つ目は「グラフの見方/作り方が分からない」。分析・集計するのに十分なデータが入っていて、色々なグラフを作れる環境はあるのですが、グラフをどのように見たり作ったりしたら良いかが分からない、というものです。この2つ目のパターンに対して「グラフの作り方を勉強させよう」と反射的に思ってしまいがちのですが、問題を整理してみるとそのような単純な問題ではなさそうなのです。

ダッシュボードが不要だった従来のパイロット型営業マネジメント

今のようにSFAが普及していなかった頃の営業マネージャーにとって、必要な資料はExcelなどで作られた売上や利益の数字の表と、商談の一覧表でした。今期予算の達成に向けて、規模が大きな商談やリスクが高そうな商談を自分なりに判断し、順調に進んでいるか、問題が起こっていないか、問題の兆しがないかを1つずつ個別に確認する、というのが多くの営業マネージャーがやっていた営業マネジメントでした。

もちろん商談総額や受注額の昨対比などのグラフはありましたが、その種類は今のダッシュボードと比べるとはるかに少なくて済んでいました。と言うのも、これらのグラフの役割は「例年と比べて何か問題はないか」「問題があるのはどこか」を探れればそれで事足りていたからです。

このように問題を発見・特定して個別に解決するマネジメントは、まるで映画の中で見る飛行機のパイロットのようです。飛行中のパイロットはフライト全体をいくつかの計器で問題がないか確認しており、もし機体や航路の異常を知らせるものがあれば、必要な操作を行い、問題を特定・解決して、正常な状態へと戻します。

営業においてもこのような「全体から個へ絞り込む」が従来のマネジメントの特徴であり、マネージャーは個別の問題を早く掴み、適切な対策を指示することが求められてきました。そのマネジメントにおいては月別の売上の見込み数字と、個別の商談について記入された一覧表だけで十分で、SFAが導入されてもそのスタンスはあまり変わっていません。その結果としてSFAが電子営業日報になってしまい、ダッシュボードが使われないということになっているのです。

釣り人型営業マネジメントにとって不可欠なSFAダッシュボード

ちなみに最初に私がSFAのダッシュボードを見たときに「B2Cマーケティングっぽいな」と感じました。15年前まではB2Cマーケティングを仕事にしていたのですが、その時の観点は「全体から傾向を抽出する」というものでした。B2Cの多くの場合において個人という単位はとても小さく、個に絞り込んでも全体にとって最適な解決策はまず見つかりません。そのため、全体のふるまいの中からいかに特徴的な傾向を見つけるかが重要であり、そのためには手元にあるデータを様々な切り口で次々とグラフ化していく必要がありました。その経験があったため、SFAのダッシュボード機能を見たときに、「B2Cマーケティングでやっていたことをやれそうだぞ」と思ったのです。

実際に現在のSFAに搭載されているダッシュボードという機能は、全体から個別の問題を探り出すだけでなく、全体から傾向を抽出できるものであり、しかも使い手が自分で欲しい情報を見たいカタチで見られるようにカスタマイズできるオープンなしくみになっています。

この「全体から傾向を抽出する」という考え方は、従来の「全体から個へ絞り込む」とは大きく異なるものです。「全体から個へ絞り込む」というのはドリルダウンと言い、問題のありかを見つけて、それをどんどん絞り込んでいき、限られた数の個別の問題を見つけ出して解決します。

新型コロナの感染者を世界から日本、そして都道府県に絞り込み、比較してどのエリアに問題があるのかを探るアプローチは「全体から個へ絞り込む」というものです。営業拠点や担当者ごとの数字を比較するグラフを作り、業績の悪いところに原因の報告をさせるというのは、よくある話ではないでしょうか。

これに対して「全体から傾向を抽出する」のは組み合わせです。コロナ対策においては、PCR検査数、発症者数、重篤患者数、空きベッド数などから傾向を読み、必要な対策が行われています。営業においては商品分類と顧客分類、商談規模と担当者のスキル、商談のきっかけとなったイベントと受注確率など、様々なデータを組み合わせてそこに潜んでいる関係性を探り出し、それを次の施策へ反映させるというようなことになるでしょう。

このマネジメントを行うためには、色々なデータの組み合わせを試しながら、問題や機会のもととなる傾向を探り出すことが求められます。これはまるで釣り人のよう。エサや糸の長さ、重りの重さに投げる場所などの組み合わせを試しながらヒットの傾向を探ります。しかもこのような「全体から傾向を抽出する」釣り人型のマネジメントの場合は、有り合わせの仕掛けやグラフでは足りないことになりがちなので、ユーザーがカスタマイズする必要があるのです。

市場が激変する現在だからこそ求められるSFAのダッシュボード機能

このような釣り人型のマネージャーのためのダッシュボード機能が、今のSFAでは標準的です。自分で考え、仮説を立て、適切な情報を組み合わせてわかりやすくグラフ化し、検証していけるようになっています。

現在、購買活動のオンライン化など顧客は大きく変化しており、飛行機の標準航路のようなパターン化も難しくなっていますし、発生する個別の問題に対応しさえすれば成果が出る世界ではなく、潮目を見ながらつねに市場全体を探り続ける必要があります。しかもアフターコロナではどんな大きな変化があるか予測も難しい状況です。そんな中で求められる「全体から傾向を抽出する」釣り人型のマネジメントを支援するツールとして、SFAのダッシュボード機能の重要性を再認識していかねばならないと思うのです。

SFAのダッシュボード機能を活用する2つのポイント

最後に、釣り人型のマネジメントの考え方を踏まえた上で、SFAのダッシュボード機能を活用するためのポイントについて考えてみたいと思います。

1つ目のポイントは、「全体から傾向を抽出する」という考え方とその重要性を理解して、実際に試してみることです。自分で「この2つのデータの間に関連があったら面白いな」と思うものを選んでまずはグラフ化してみる。もし社内にB2Cマーケティングの経験者がいたら、少し時間をもらってデータ分析をお願いしてみる。そのようなことから、傾向の見つけ方を試してみるのが良いと思います。

そしてもう1つのポイントは、個別の営業活動以外の顧客接点を計測・連携することです。この記事の最初の方で、「『ダッシュボードが使えない』1つ目のパターンは集計・分析できるデータの不足であり、現在多くの営業現場でその状況が改善している」と述べました。確かに、多くの企業でSFAの入力率は上がっていますが、それはあくまでも顧客と営業担当者が接触している営業活動部分だけ。一方で営業担当者に顧客がコンタクトするまでの、ホームページへのアクセス数や動画の閲覧履歴、資料のダウンロード実績、セミナーへの出席状況、チラシやメールマガジンの閲覧状況までは追えていないことがほとんどです。この、現在ブラックボックスになっている顧客接点を、MAツールやセールスイネーブルメントツール等で捕捉しSFAと連携することで、ダッシュボードで見える範囲が格段に広がります。これまでは営業担当者個人の視界だけだったダッシュボードに、顧客の視界を加えることで、新しい気づきが得られやすくなるのです。

「SFAのダッシュボード機能が使えない」は営業マネジメントとSFAを進化させるチャンス

一見シンプルな「SFAのダッシュボード機能が使えない」問題。それは単にグラフ作成スキルうんぬんの話ではありません。顧客が大きく変化している現在において、これまでのB2B営業に欠けていた「全体から傾向を抽出する」タイプのマネジメントの必要性を気づかせてくれるサインであり、それをきっかけに今使っているSFAを進化させるチャンスでもあるのです。

トライツコンサルティングは、SFAの有効活用とそれによる営業のデジタル化を支援しています。「SFAを導入したがうまく使えていない気がする」「SFAを活用して営業マネジメントを進化させたい」とお考えの方はご相談ください。

モバイルバージョンを終了