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営業‐マーケティング連携の特効薬となるか?今話題の「RevOps」

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多くの企業がB2B営業のプロセス設計と組織づくりの教科書としている「THE MODEL(ザ・モデル)」(福田康隆著、翔泳社)。およそ1年前に発売された本ですが、2020年3月現在でもAmazonの「セールス・営業」部門で第4位の売れ行きを誇るロングセラーになっています。

この本で書かれていることを端的に表現すると、「マーケティング/インサイドセールス/フィールドセールス(営業)/カスタマーサクセスという営業プロセス単位での業務&組織設計と人材開発」だと私は思います。新進気鋭のIT企業だけでなくいわゆる大企業と言われる会社の営業部門でも、「ザ・モデル」に書かれているプロセス別に業務を整理し組織を再設計しているところが多くあります。

ただ、このようにプロセス別に組織化することによるタコツボ化の弊害が、「ザ・モデル型の営業」に取り組んでいる企業では以前から問題視されており、「営業‐マーケティング連携(sales and marketing alignment)」はB2B営業に関するレポートの多くで常に上位の課題となっています。

そのような中、この課題に対する1つの解決策「RevOps(レブオプス)」が、米国企業を中心に急速に広まりつつあります。この「RevOps」とはどういうもので、私たちに何を示唆してくれるのか、一緒に見ていきましょう。

海外のB2B企業で急拡大している「RevOps」とは

RevOpsに響きや見た目が似ていて、日本でも最近よく使われるようになった言葉に「DevOps(デブオプス)」というものがあります。これは、システム構築の際に開発チーム(Development)と運用チーム(Operation)を連携・統合させることで、作業効率・品質を高めようというものです。このDevOpsの普及につられて、分業化されている業務や組織を連携・統合させることを「XOps」(※Xに色々な言葉が入る)と言うようになり、その1つがRevOpsなのです。

このRevOpsとは、マーケティング/インサイドセールス/フィールドセールス/カスタマーサクセスと分業化されたマーケティング&営業の業務や組織を、共通の目標である「収益(Revenue)」のもとに連携・統合させようというもの。これが、ここ1~2年で急速に拡大しているのです。

このRevOpsの拡大の様子について、分かりやすくまとめているのがDemandGen Reportの「New Research Highlights Rapid Adoption Of Revenue Operations Models In B2B」です。まずは、急拡大の様子をレポートから抜粋してご紹介します。

Lean Data社とSales Hacker社の共同調査によると、2018年から2019年にかけてRevOpsを導入している企業は20%から31%へと、+55%の伸びを見せています。さらに、RevOpsの導入に取り組んでいる企業も15%から27%へと、+80%の伸びを見せています。
RevOpsは収益という単一の目標にフォーカスした組織づくりという、営業およびマーケティングにおける自然な進化だと言えます。営業とマーケティングとの間の壁を打ち破り、収益サイクルをより包括的に強化するRevOpsへのシフトは、多くのB2B営業組織で順調に拡大しています。

営業改革で忘れられがちな「顧客体験の向上」を実現するRevOps

ザ・モデル型に限らず、営業改革は自社の営業効率の向上やコストダウンを目的として進められることが多いのですが、このレポートではRevOps導入の意義を「顧客体験の向上」にあると述べています。

「シームレスな顧客体験の提供」が現在の営業組織の最重要課題となっています。そして、RevOpsの導入がより包括的なカスタマージャーニーを構築するための手段として認められています。95%のB2B営業組織が「顧客のライフサイクルを通じた持続的でシームレスな顧客体験の提供は、B2B企業にとって主要な差別化要因かつ収益の要因である」と回答しています。(中略)RevOpsの導入により、受注前と受注後の顧客体験をより適切に理解・管理・最適化することが可能になるのです。

ザ・モデル型の営業組織ではプロセスごとに業務や組織が部分最適化されてしまうため、業務方針の不整合や顧客対応データの欠落などの非効率が生じてしまうのですが、それによる最大の問題は「持続的でシームレスな顧客体験の提供」が出来なくなることである、と断言しているのがこのレポートの秀逸なところだと私は思います。

RevOpsからの学び①「マーケティング&営業の連携・統合の分かりやすいコンセプト」

このRevOpsの興隆から、2つ学ぶことがあると考えています。

1つ目の学びは、営業やマーケティングといった業務・組織を連携・統合することについての、分かりやすいコンセプトができたということです。

冒頭で紹介した「ザ・モデル」の中でも分業化することによる問題と、それを克服するためにレベニューという共通目標を設定し、それを推進する強力なリーダーであるチーフ・レベニュー・オフィサー(CRO)を置くことの必要性を訴えています。この本が出版されたころはまだ日本ではRevOpsという言葉が一般的でなかったためあえて使っていなかったのだと思いますが、今回ご紹介したRevOpsというコンセプトによってその重要性がより分かりやすくなったように思います。

RevOpsからの学び②「ザ・モデル型ではない営業組織でも先行できる可能性がある」

そして2つ目の学びは、ザ・モデル型の業務や組織設計が現代のB2B営業にとっての唯一絶対の解ではない、ということです。

マーケティング機能が弱いといった問題はあるものの、従来型の日本企業の営業組織ではマーケティングとフィールドセールスとカスタマーサクセス(顧客サポート)が緊密に繋がっており、そもそも1つの組織としてまとまっているところも多くあります。そのような営業組織であるからこそ、RevOpsで目指している「持続的でシームレスな顧客体験の提供」において、ザ・モデル型の営業組織に先行できる可能性があるのです。

ただ、そのためには3点意識しなければならないことがあると私は考えます。
1つ目は、シームレスな顧客体験を提供するために顧客データや業務自体をシームレスにすること。
2つ目は、デジタルツールの活用などを通じて業務の質/スピード/効率を重視すること。
そして一番大事な3つ目が、顧客接点に関わる人すべてが「顧客体験」を意識することです。

自分たちの顧客はどのようにして自社の存在を見つけ、どのようなやり取りを経て営業担当者と会うようになり、購入に至って、商品・サービスを利用しているのか。この顧客体験への意識を自分たちがどこまで持っているか、改めて考え直すことの重要性をこのRevOpsに関するレポートは伝えているのだと私は思います。

真に考えるべき本質は「顧客体験の向上」

ここまでRevOpsという新登場のコンセプトと、その背景となっているザ・モデル型のプロセス別の営業組織について見てきました。その中で浮き彫りになったのは、「シームレスな顧客体験の提供」というのがB2B営業において重要なテーマであり、RevOpsもザ・モデル型の営業もその実現のための手段の1つでしかなく、そのテーマから逸れてしまっては意味がない、ということだと思います。

「ザ・モデル型の営業が流行りだ」「次はRevOpsらしい」と流行に安易に飛びつくのではなく、「顧客体験の向上」という本質から目を逸らさず、常に改善し続けることが大事なのです。

トライツコンサルティングでは、営業の業務プロセスの再構築から人材開発の在り方の見直しまでをサポートしています。「顧客体験の向上」「営業およびマーケティングの業務効率・品質の改善」についてご興味のある方はぜひご相談ください。

参考:「New Research Highlights Rapid Adoption Of Revenue Operations Models In B2B」(DemandGen Report, February 12, 2020)

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