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皆さんのまわりに「たとえ話」の上手い人がいらっしゃると思います。難しいことであっても、比喩とか事例によって、具体的なものに置き換えてわかりやすく伝える話法です。そして、この「たとえ話」を元にして問題解決のアイデアを考えたり、物事を違った面から見たりすることも、日常の会話の中でよくあることではないでしょうか。
このように特定の物事に関する情報を理解しやすくするために他の物事になぞらえることをアナロジー(Analogy=類推/類比)と呼び、問題解決のためのアイデアを出したいときや物事を深く理解したいときに、自分が知っている他の物事を引き合いに出して考える思考法を「アナロジー的思考」と呼びます。
そこで、今回はこの「アナロジー的思考」で、営業改革の大切なポイントについて考えてみることにしましょう。
営業改革に似たものを探すと・・・
「営業は変わる必要がありますか?」と尋ねると、多くの人が「はい」と答えられます。数字的に大きな問題がなくともそのように言われることが多い。環境変化の中で、営業も変わっていかなくてはならないと感じている人が多いのです。
ただ、あくまでもそれは将来のことを考えると・・・ということであり、すぐに取り組まないと明日にでもどうにかなるというものではないという捉え方が一般的のように思います。重要な課題ではあるが、緊急性は低いという感じです。
また、世間にはその課題を解決するためのいろいろなアプローチやそれに伴うツールがあり、成功事例も山のようにあるので、どれを信じればよいのかわからない、選ぶのが大変というものでもあります。
・・・そんな営業改革に似たもの?!? そう、「ダイエット」です。
こんなに似ている営業改革とダイエット
もし皆さんが成人病検査の結果、ダイエットしなければならなくなったとしたらどうするでしょうか。とりあえずサプリメントを飲んでみるという人も少なくないでしょう。手軽に始められますし、その人の体に合えばもしかしたら少ない努力で大きな成果が得られるかもしれません。何よりも・・・何もしないでいるよりも気持ち的に安心できるというのが大きいはずです。
営業現場に単発の研修を行ったりすることはこれに似ています。その内容を現場の営業担当者が上手く取り入れ、自らの営業のやり方を変えるができれば成果につながりますが、多くの場合は「意識付け」や「問題提起」にしかならないことが多いように思います。
また、物珍しい道具に注目が集まりがちなところも共通しています。ダイエットの場合、深夜の通販番組で出てくるようなダイエット器具を購入し、正しく毎日使えば成果が出るとは思いますが、気が向いたときにだけ自己流で・・・となるとなかなか目に見える変化は出てこないと聞きます。高いコストを払って導入したにも関わらず、電子版の営業日報にしかなっていないというSFAもこれと同じと言えます。
そして、芸能人や著名人などのBefore/Afterが出てくるダイエットのパーソナルトレーナーのTVCMをよく見ますが、専門家の適切な指導、アドバイスをもらって真剣に取り組めば成果が出るというところも同じです。また、頑張って成果を出しても、気を抜くと元に戻ってしまいがちなので、リバウンド対策が不可欠だというところも似ています。
そして、「今はいろいろ忙しいし、時間ができた時にやればいいや」と先送りしているといつの間にか取り返しのつかないことになってしまうということも、ダイエットと営業改革は共通点があると思います。
総論賛成、各論ウヤムヤ・・・なぜ?
しかし、これだけ似ているダイエットと営業改革ですが、一つ大きな違いがあります。それは明確な指標の有無です。
人がダイエットを始めるにあたって、きっかけの一つになるのは「健康診断の結果」だと思います。何らかの数値が悪く、医師から「このままでは・・・・」などと脅される。そこで「これではマズイ」とダイエットのことを本気で考えるに至るということです。そして、ダイエットに成功し、検査数値が改善すれば、目に見えた結果を見て確認することができるでしょう。
しかし、営業部門においては健康診断結果のような客観的に自分達の状況を捉える指標がありません。売上や利益といった数字の管理はどこの会社でもしっかりやっておられると思いますが、これは自社だけでなく、景気や市況などまわりの変化に大きく影響されるので、なかなか営業の実態を客観的につかむに至らないものです。
また、営業部門が自らの状況を検証し、報告するということもあるでしょうが、自分で自分のことを「健康です」とか「ちょっと調子悪かったですが、もう治りましたので大丈夫です」などと言っているだけだったりするので、本当のところはわからないままというのがほとんどのように思います。
そんな中で仮に誰かが「営業改革が必要では?」と言いだし、総論賛成になっても、手段がいろいろありますし、費用も千差万別・・・。
推進者が社内に提案しても、「そこまでお金を掛けなくても、まずは〇〇からやってみればいいのでは?」「わざわざ外部の力を借りなくても、自分達でできるだろう」「人材育成の面からも、自分達で考えていくことが必要だ」などという声が出てきて、各論がウヤムヤに・・・かくしてシステムだけ導入することになった・・・などということになりがちです。実際にそんな状況になっているというところでご相談をいただくことが少なくありません。
このような状況になってしまうそもそもの原因は、最初に自社の営業の状況を客観的に見ることができていないところにあるのです。客観的に自社の営業の診断をしていないので、何がどれだけ悪いのか、共通のモノサシがない。だからなかなか組織の中でコンセンサスも得にくいし、仮に改革を頑張ったとしてもその成果が見えてこないし、頑張った人が評価されにくいなどという問題に至るのです。
製造や物流部門などでは徹底的に数字で自らの業務を客観視し、その効率を限界まで高めるように努力しているメーカーであっても、営業部門においてはザックリとした見方しかできていないというのは決して珍しいことではありません。
まずは自社の営業を客観評価してみよう
そこで、皆さんの中でもし自社の営業改革が前に進まず、困っておられるのでしたら、ぜひ一度客観的に自分達の営業を評価してみるということをオススメします。
我々にご相談いただいた企業の中で、SFAのデータを分析した結果、「こんな活動傾向になっていたのか!」「こんなレベルの活用しかできていないのか!」という気づきが得られ、そこからこれまでのやり方の問題に気付き、本気で見直しに取り組むことになったケースがありますが、「数字」で明確に問題が「見える化」されることのインパクトは大きいと思います。また、改めて顧客に営業についてインタビューすることで問題が顕在化した事例もあります。
自社の営業のことは自社が一番わかっている・・・それはある意味で正しいとは思いますが、自分で自分のことはわからないというのも真実なのです。
そして、自社の状況を社内で共有化するために、自分達のことをなにか他のものに置き換えて考えてみるというのもわかりやすいアプローチの一つだと思います。
この投稿をお読みいただき、自社の現状を客観評価して欲しい、何が良くないのか意見が聞きたいなどとお考えの方、下記よりお気軽にご相談ください。