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【海外から見た日本の営業】B2B営業における日本と海外の違いと営業改革のヒント

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これまでトライツブログでは、海外におけるB2B営業やマーケティングについての調査レポートや記事をご紹介しながら、最新の営業手法や営業マネジメントについてお伝えしてきました。中でも、これからのB2B営業・マーケティング改革のカギになるであろうMA(マーケティング・オートメーション)やCRM・SFAといったデジタルツールを積極的に取り上げてきました。

そのような中、先日米国のMA・CRMツールを提供するある企業に勤務し、シンガポールでセールスとしてアジア各国の企業とビジネスをしている知人が日本に一時帰国した際に、海外の企業と日本企業の営業にどのような違いがあるのかインタビューする機会がありました。

そこでのお話は、日本企業がこれから営業改革を進めるにあたって示唆に富む内容でした。そのインタビューの内容をご紹介しながら、日本企業における営業改革のヒントを探って行きましょう。

B2B営業における日本と海外の差は「文化の違い」か「遅れ」か?

ーシンガポールを拠点に世界の営業を知る立場から、各国の営業事情はどのように見えますか?

海外の営業は、特に、先日角川さんが書かれた本(弊社代表角川の著書「営業デジタル改革」)にも出てくるように米国は、CRM・MAと言ったデジタルツール(以下、ツール)の使いこなしはしっかりとしていますね。
CRMやBI(ビジネスインテリジェンス)から出てくるデータが最優先なので、日本の企業のようにExcelの資料を作って「本当のデータはこのExcel資料をご覧ください」というやり方は通用しないですね。
また、営業人材の募集要項にはまだ出てきませんが、最近のマーケティング人材の求人情報にはほぼ間違いなく「CRM・MA(SFAという言葉は海外だとCRMに組み込まれていることが多い)を使いこなした経験があること」が条件に登場します。営業人材の募集要項に入ってくる日も近いのではないでしょうか。

ーツールの使いこなしの差はどこから来ると思われますか?

使いこなしの差については、米国企業やアジアの企業は、マーケットサイズ的に自国以外のビジネスがどうしても必要ということから来ているような気がしています。そうすると拠点間での数字のやり取りが多くなるので、別々のフォーマットでデータが飛んでいると管理が絶望的に辛い。だから統一されたツールを使いこなす必要が出てくるのではないでしょうか。

ーそのツールについてですが、海外の企業でもツールを何がなんでも自社に合うようカスタマイズする、という傾向はありますか?

なんでもかんでもカスタマイズして欲しいという要望は日本に比べるとかなり少ないです。
海外では、ツールに自社の働き方を合わせるという感覚が強いので、カスタマイズするというよりは、複数のツールをAPIで連携して運用しようとします。やはり、日本は自分たちのやり方にツールを合わせるという感覚が強いように感じます。

ー営業における日本と海外の差は「文化の違い」で片付けて良いものか、「遅れ」と言うべきものか、どちらだと思いますか?

ツールがなかったころは文化の違いで済んでいたけれど、ツールが登場することでスピード感や生産性に差がついてきたので、「遅れ」が顕在化してきたと考えています。
ちなみに、文化の違いについてお話すると、「打ち合わせは訪問してほしい」「請求書・契約書の紙の原本を郵送するのが大好き(クレジットカードが嫌い)」「稟議」「名刺交換」「日報」「ヨミ会」。この辺りの話は、海外の人から驚かれるケースが多いですね。

海外から見た「これからの日本における営業改革のヒント」

ーでは、様々な国の営業を見て、これからの日本における営業改革のヒントがあったら教えてください。

難しいお題ですね(笑)
私がよく思うのは、日本では何ごとも「小さく始める」形でスタートすることが大事という考えが多いように思います。しかし、何も考えずに「まず始めてみよう」とするのではなく、まず「いかに成功する」かを考えた上で、成功を積み上げることを考えたほうがうまくいく気がします。
ツールの導入で考えると、ツールを使い始めることを重視して、まずは費用を抑えてミニマムで導入して、活用しながら拡張しよう、と考えてしまうことが多い。しかし「成功するためにはどのようなツールが必要か」をまず考えて、多少の意思決定は必要になるけれど十分なスペックで始めるべきではないか、と。
本の中に出てくる「n年後の営業」に通じる部分があるかもしれませんが、その成功を定義せず、稟議も成功より価格を重視してスタートしてしまうので、中途半端にツールを導入したけど「これなんだっけ?」となることが多いと思います。

ーまずは、どうなれば成功と言えるのかという「成功の定義」が必要ということですね。

それにプラスして、その成功に向けて責任者がしっかりと推進できる体制が必要ですね。
何か始める時に、成功やゴールと人材、組織体制、ツールといったリソースが不一致だったり、不十分だったり、もしくは定まっていないケースを本当に多く見ます。なんでツール導入しちゃったの?というケースは本当によくありますね…。導入を薦めるベンダーにも問題があるのは重々承知していますが…。

ーツール導入の現場にいらっしゃるので、たくさんご覧になっているでしょうね。ちなみに、それは日本特有の問題ですか?どこにでもあるけど、日本は特に多いという感じですか?

どこにでもあるけれど、日本は特に多いですね。
これは営業よりはマーケティングに多いのですが、ゴール、特に数値指標が意外と定まっていなかったりするので、その定まってない割合が日本のほうが多いという印象です。海外は数値(結果)が出てないとすぐにクビになってしまうという事情も影響しているとは思います。

ー確かに、意味のあるゴール・数値指標が決まっていることは少ないように思います。

それで、例えば「ツールが悪いのかな?」という話になって某社のツールから我々のツールに変えるけど、本質が変わらないのでまた失敗しちゃう…というようなことも起こったりします。

ー起こりそうですね。その場合はどうするのですか?

私は最初のヒアリングでそういうところに気がついたら、「そのままだと間違いなく失敗しますよ」ということを伝えます。その後ゴールを一緒に考えつつ、「そのゴールならこのツールから使っていきましょう」といった感じでお話します。ツールの話をするのは最後です。

ーそう言う営業に会えると幸せですね。売らんかな、という営業に当たると不幸ですが。

それは不幸ですね…。そこは逆に海外の営業のデメリットでもありますね
外資系の営業は売ったらもうお客さんとかかわらないので効率はいいのですが、「売ることが僕の仕事・KPI」となっているので、「最初から最後までお付き合い」型の日本営業とは異なります。
そこで、最近「カスタマーサクセス」にも注目が集まっています。

ーそのような背景からカスタマーサクセスも注目されるようになってきたのですね。逆に日本では、カスタマーサクセスはスタンダードな考えのような気がします。「お客様の成功が第一」と言う感覚は多くの会社が持っている気がします。

日本にはカスタマーサクセスという概念は非常にフィットする気がしています。個人レベルで見ても人の役に立ちたい!という気持ちの人は多いと思います。
これからどんどんカスタマーサクセスに関する情報やツールも増えてくるので、どういう変化が生まれるか楽しみです。私も今はカスタマーサクセスの役割を担っているので尚更そう感じます。

ーしかし、どうすればカスタマーサクセスを実現できるか、営業の現場では頭を悩ましています。

そういうところからも「成功の定義」をまずは一緒に考えるというスタイルが必要だと考えています。
何がサクセスなのか定まっていなければ、カスタマーサクセスはないので。

「成功の定義・ゴールを決める」ところから営業改革は始まる

今回のトライツブログでは、海外の企業と日本企業の営業の違いについてのインタビューをご紹介し、これからの日本企業における営業改革のヒントを探ってきましたが、数あるヒントの中で、私が最も重要と考えるのは「成功の定義・ゴールを決める」と言うことです。

弊社代表角川の著書「営業デジタル改革」の中にも、「営業デジタル改革ロードマップ」という考え方があり、そのロードマップは「n年後の営業」というゴールを定めるところから始まります。

営業改革を成功させるためには、まずは「どうなっていれば成功なのか」「どうなればゴールなのか」を定める必要があるという、一見当たり前の話です。しかし、インタビューでも指摘されているように、日本の企業には越えるのが難しいステップなので、つい先送りしてしまうことが多いのではないでしょうか。

これから新年度を迎えるにあたり、新たに営業改革に取り組み始める企業も多いことと思います。くれぐれも「成功の定義・ゴールを決める」ところを飛ばして話を先に進めないようにしましょう。それが成功への近道なのです。

もし、そこでどうもスッキリしない、納得できる方向性が定まらない・・などのお悩みがありましたらお気軽に下記よりご相談ください。いろいろな事例などの情報をお伝えしながらディスカッションができると思います。

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