トライツコンサルティング株式会社

「営業デジタル改革で顧客管理を強化し売上拡大を実現する」(前編)

Silhouette of a medieval knight on horse carrying a flag on dramatic scene

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2018年4月17日に日本経済新聞社主催の日経BizGateセミナー「顧客管理を強化し売上を向上させる方法とは」で、当社の角川が特別講演を担当しました。そこで「営業デジタル改革で顧客管理を強化し売上拡大を実現する」というテーマで、SFA/CRMシステムを導入・活用する上で大事なポイントをお話しました。

そこで、今回および次回のトライツブログでは、そのセミナーでお話した内容の一部をここでご紹介したいと思います。
前編となる今回は、「営業デジタル改革のこれまでと、今起こりつつある変化」について見ていきましょう。

営業デジタル改革とは

セミナーのタイトルに「営業デジタル改革」という耳慣れない言葉がありますので、まずはその確認から始めましょう。
トライツでは「営業デジタル改革」を「デジタルツールを導入し、営業活動の生産性を飛躍的に向上させる取り組み」と定義しました。

こう定義すると、実はこの取り組みは今に始まったことではなく、営業担当者に一人1台パソコンが支給されるようになり、初期のSFAブームが起こった約20年前からずっと続いていることだと言えます。当時はExcelやeメールを使うことから始まりました。これらのデジタルツールは、全て営業活動の生産性を向上させる、言い換えれば「今よりも効率的に稼ぐようになる」ことを最終目的としていますし、最新のMA(マーケティングオートメション)やAIなども、狙いは同じです。

ただ、途中からその方向性が変わってきたように思います。そこをわかりやすくするために、「営業デジタル改革」を第一次と第二次の2つに分けて考えてみましょう。

第一次は20年前から始まったパソコンやオフィス系ツールなどの流れです。携帯電話やモバイル運用も加わって、いつでもどこでも仕事ができる環境が整いました。そして、第二次は最近のMAやAI、スマホなどの新しいツールを活用した改革です。

この第一次と第二次の違いは何でしょうか?

第一次営業デジタル改革を簡潔に説明すると、営業担当者の活動を支援するものだと言うことができます。営業担当者に武器を提供し、営業活動の効率を上げることを目的としています。それぞれのデジタルツールを導入することで、社内の報告などの資料作成が効率的になったり、情報共有がしやすくなったりしました。

第一次営業デジタル改革がもたらしたもの

ではこれらの第一次営業デジタル改革は、我々に何をもたらしたでしょう。これらが全く存在しなかった20年前と比較し、営業現場の生産性は大幅に向上したでしょうか。

この間、日本は失われた10年などと言われ、リーマンショックなどもあって、とにかくコストダウンに力を入れた時期が長く続きました。営業所には内勤のスタッフがいて、資料を作ってくれたり電話番をしてくれたりしましたが、コスト削減のためにいなくなり全て営業担当者の仕事になりました。マネージャーもプレイングマネージャーとして担当を持ちながら、マネジメント用の資料も自ら作成するということが当たり前になっています。

この状況を我々は「営業担当者の多能工化」と呼んでいます。こう言うとちょっとカッコいいのですが、いわゆる何でも屋になってしまったということです。お客さんとも直接携帯電話でいつでも会話できますから、誰かを介在する必要もなくなりました。そのため、ますます営業活動の内容が他の人から見えなくなったりもしています。

結果、目先の出ていくコストは下がりました。ただ、業務時間の調査を行うと、どの企業の営業担当者も社内で資料ばかり作っている。営業活動は全て営業担当者がやるもの・・・ということを大前提として、営業担当者に色々なデジタルツールを与えてきたのです。

結果、営業担当者とそのマネージャの業務が増大し、本当に営業生産性は向上したのか?と考えなければならない状況になっているように思います。

B2B営業を取り巻く環境の変化

そのような中、営業を取り巻く環境が大きく変わってきました。一つはWebの普及による顧客の購買活動の変化です。

購買活動のプロセスは顧客自身が何を成し遂げたいのか、それを明確にするということから始まります。そして、そのための課題を発見し、解決策を探す。見つけた解決策を比較し、どうするか意思決定を行います。この意思決定は組織として行うため、稟議や決裁などの顧客社内の手続きを経ることになります。

以前であれば、顧客はこの購買プロセスを進める中で、何かあればすぐに営業担当者に声をかけてくれていたのですが、最近はWebですぐに必要な情報収集ができてしまいます。そのため、営業からは顧客の動きが見えにくくなってしまいました。

顧客の中である程度意思決定ができてしまってから「価格だけ教えて!」と言われているのに、営業担当者は改めて「きちんと説明させて!」「課題を聞かせて!」と言っている。このようなズレが発生してしまい、苦労するという姿は珍しくなくなっています。

また、営業スタッフを採用するのに苦労するという「人手不足」の問題もありますし、政府が進めている「働き方改革」で労働時間の短縮化も会社として避けて通れない課題です。

環境変化の中、「営業の仕事は営業担当者がやるものである」ということを大前提としている第一次営業デジタル改革の考え方で、これらの課題を克服していけるでしょうか?

残念ながら答えはNOです。課題の克服にはそもそもの営業の在り方、営業のやり方を根本から見直して、大幅に生産性を高めないといけなくなってきているのです。

第二次営業デジタル改革とは

そこで、大事になってくるのが第二次営業デジタル改革です。これがどのようなものかについて考えるには、営業活動を「顧客発掘」「商談発掘」「商談受注」の3つの機能に分けると理解しやすくなります。

「顧客発掘」と「商談発掘」について、最近ではその一部をMAが担うようになってきています。AIは人間の考える力を支えるという方向で、顧客や商談の優先順位付けや、顧客へのメール文章の自動生成など、色々な場面で活用されるようになっています。

第二次営業デジタル改革とは、デジタル技術で営業担当者の生産性を向上すると考えるのではなく、Webも営業もどちらも顧客接点の手段のひとつとして位置づけ、これらの3つの営業機能の生産性向上をトータルに実現するというものです。

次回のトライツブログでは、この第二次営業デジタル改革への取り組みに大切な考え方と、取り組みを阻む壁の乗り越え方をご紹介します。次回のトライツブログもご期待ください。

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