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営業とコンサルは紙一重?意外と難しくないコンサルティング営業へのアップデート

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顧客が取り組む課題が複雑になり、購買の意思決定も高度化するのに伴って、営業、特にB2B営業担当者に求められる役割も高度になっています。最近では、自社の商品・サービスだけでなく顧客の業界や業務について精通した「コンサルティング営業」がキーワードです。 

ただその一方で、「ウチの営業にはコンサルなんて無理」「コンサルみたいにアドバイスしているだけじゃ売れない」という声もよく耳にします。どうやらコンサルティングという仕事に対して、「なんだか難しそう」「浮世離れしている」というイメージをお持ちの方が多いように思います。 

ただ、私としては現在の営業、特にB2B営業とコンサルティングとの間にはそこまで大きな違いがないようにも感じてもいます。そこで今回は、コンサルティングという仕事がどういうもので、営業とどのような類似点があるのか、何が違うのかを考えてみたいと思います。知っているようでも意外と知らない、コンサルの世界を見てみましょう。 

コンサル育成の世界的大家に学ぶ「コンサルについての13の真実」 

今回ご紹介するのはコンサルティングの世界的な大家、エレーヌ・ビーチ氏がATD 2025というカンファレンスで行った講演「5日間でコンサルタントとして成功する方法」(5 Day Challenge to Your Successful Consultant Career)。タイトルだけを読むとなんだか情報商材的なうさん臭さがあるのですが、実はこのビーチ氏はATDという世界最大の人材育成の団体で長年要職を務め、研修設計などの書籍を89冊も世に出しています。以前のトライツブログ「自社のニーズに合った研修設計に役立つ『ADDIE』モデル」でも同氏の研修設計についての書籍を参考にしていました。 

そんなビーチ氏が最近精力的に取り組んでいるのが、コンサルティングに必要なスキルの体系化とコンサルタント育成。そのため、ATDでの講演「5日間でコンサルタントとして成功する方法」は、コンサルタントに転身したい人や、コンサルタントとしてのスキルを高めたい人で入場制限がかかるほどの大盛況となっていました。 

その講演の最後の方で紹介された、「コンサルティングについての13の真実」というリストが、コンサルティングという業務、コンサルタントという職業に対するイメージを持ちやすいものでした。以下、適宜順番を入れ替えてご紹介します。 

コンサルの真実①:専門性だけでなく人間性で信頼と契約を勝ち取る 

まずは、コンサルタントにとっての専門性と人間性についてです。 

3. 専門知識だけではコンサルタントとして成功できない

11. 契約を取るのは専門知識ではなく、あなたの人間性

5. 専門性が高すぎると仕事が得にくく、逆に一般的すぎると見込客からの信頼が得にくい

コンサルと言えば何かの専門家であることは間違いないのですが、それでもビーチ氏が強調しているのは人間性の大事さ。専門バカになるのではなく、人として親しみやすく信頼される存在であることを決して忘れてはいけない。この点においては、コンサルと営業がまったくの別モノではない、とてもよく似た職種だということがお分かりいただけると思います。 

コンサルの真実②:常に「営業」、忙しいときほど「営業」 

では、さらに近づけてコンサルにおける営業活動について見てみましょう。 

1. コンサルタントはクライアントを必要としているが、クライアントは必ずしもコンサルタントを必要としているわけではない

6. 営業すべき時は「常に」

7. プロジェクトが忙しくて営業ができないときこそが、最も営業をすべきタイミング

1番はまさに現在の営業においても言えること。競合する商品やサービスがあり、顧客は自分でWebやAIを使って情報収集や比較検討ができてしまいます。また、コンサルはコンサルで競合との差別化を図り、WebやAIでは代替できない特別感を言語化し、さらには「絶対にやらなくてはいけないというほどではないが、やった方が良い」プロジェクトに取り組んでもらうための動機づけをしなければなりません。このように、自身の存在価値を示さなければならないというのは、営業でもコンサルでも共通の大事なテーマなのです。 

また、忙しいときほど次の商談の種を仕込まなければならないという、6番と7番も営業の皆さんにとっても体験として実感いただける内容ではないでしょうか。 

コンサルの真実③:アウトプットの品質と顧客満足が最重要責任 

続けて、仕事の質へのコミットについてです。 

2. クライアントの話を真剣に聞くことが絶対条件

10. クライアントを満足させることがコンサルタントの最重要責任

13. 一に品質、二に品質、三四が無くて五に品質

これも営業の皆さんにとっても、「うちもそうだ」と思えるものばかりではないでしょうか。顧客/クライアントを向いて、最高の品質を届けられるよう仕事に取り組み、満足していただくというのはコンサルでも営業でも、そしてどんな仕事においても共通して大事なことです。 

コンサルの真実④:お金ではなくコンサル業務そのものへの情熱が不可欠 

最後は仕事に取り組む情熱について。 

4. 自分のしていることを心から信じていなければならない

9. お金目的だけでは成功しない

12. コンサルタントをする最大の理由は、「自分がそれをやりたいから」であるべきだ

これについても巷の営業本やトップ営業パーソンのYouTubeでよく言われていることですね。相手に商品・サービスの良さを理解してもらうためには、自分がその商品・サービスにほれ込んでいなければならない。コンサルにおいても、お金目的ではなくコンサルと言う業務そのものが大好きな人でないと、長く続けられないというのは真実だと思います。 

営業と共通点が多い「コンサル」 

ここまでビーチ氏による、コンサルタントの13の真実をみてきましたがいかがでしたでしょうか。高い専門性という大前提はあるものの、人間性が大事であったり、顧客満足や品質を意識し、自分の仕事に情熱を持つ必要があったりと、営業において大事だと言われるものと酷似していることがお分かりいただけたと思います。また、常に営業/マーケティング活動をしなければならないなど、まったく「浮世離れ」していないこともお分かりいただけたのではないでしょうか。 

それでは、営業におけるコンサルティング的要素とはどういうものなのでしょう。私は、「自社商品・サービス起点ではなく、顧客の課題解決のために自社商品・サービスの最適な買い方と使い方を顧客に合わせてアドバイス/支援し、顧客への献身と専門知識の習得によって存在価値を高め続ける」営業が、コンサルティング営業なのだと考えています。営業におけるコンサルティングは特別に難しいものではなく、顧客への課題解決へのコミットの強さ、自身の存在価値に対する意識の強さによって誰でもなれるものだと思うのです。 

ぜひ、現代の営業に求められているコンサルティングを、「難しいもの」や「浮世離れしたもの」ではなく、意識の持ちようによって誰でも身に付けられるものとして認識していただき、そのためのヒントとしてこのトライツブログや各種の営業本などを活用してください。 

オマケの真実:コンサルへの転職を目指す人へ 

ちなみに、ビーチ氏の13の真実のうち、まだ紹介していないものが1つだけあります。それは、コンサルタントへの転職を目指そうという人へのアドバイスです。 

8. 今の仕事を辞めてしまう前に、コンサルタントとしての仕事を試してみよう

営業からコンサルタントへの転職や独立を考えている人もいるでしょう。そのような場合、まずは今の職場/会社で小さく試してみることをビーチ氏は推奨しています。副業や社内の新規プロジェクトへの参加、または営業企画への異動など、コンサルの仕事を「味見」する機会は複数ありますので、それらでご自身の適性を試してみてください。 

「コンサルティング営業」へのバージョンアップは決して難しくはない! 

現代の営業においてキーワードとなっている「コンサルティング営業」。ただその中身を見てみると、意外と私たちが普段取り組んでいる「営業」に近く、共通しているポイントが多数あることがお分かりいただけたと思います。ぜひ「コンサルティング営業」へのバージョンアップを難しいものだと捉えず、これからの勝ち抜くための必須スキル/スタンスとして身に付けるべく、日々の学習や仕事でのチャレンジを進めてみてはいかがでしょう。 

参考:「5 Day Challenge to Your Successful Consultant Career」(Elaine Biech, ATD’s CPLP Fellow, ATD 2025, May 28, 2025

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