トライツコンサルティング株式会社

いなくなる?生き残る?B2B営業の未来を予測する

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現在、日本を含めた世界中で、B2B購買のセルフサービス化が進んでいます。営業担当者が商談の主導権を握っていたのは昔の話。今では「顧客中心営業」と呼ばれるように、顧客がWebなどを活用して自ら情報収集し、購買プロセスを主体的に進めています。そして、売り手企業もそのような顧客に合わせて、商品の技術情報や導入事例、簡単な見積ツールなどを自社のWebページで公開していたりします。

このようにセルフサービス化が進んでいくのを見ていて、不安になる方も多いのではないでしょうか。
「顧客が自分で購買するようになっても、営業の仕事は必要なのだろうか?」
「今の人員体制を維持できるのだろうか?」
「これからのB2B営業はどんな仕事をしているんだろう?」

そこで今回は、「セルフサービス化が進むB2B営業の未来」を各種調査レポートを通じて見てみることにします。私たちは将来どんな仕事をするようになるのか、そのためにどのようなスキルを身につければよいのか、早速見てみましょう。

B2B営業の未来その1「コンピューター/AIに人間が取って代わられる」

最近では、起こる可能性のある未来の姿のことを「世界線」と呼ぶそうです。もともとはアニメで使われていた言葉ですが、数年前に大ヒットした曲の歌詞にも、もっと違う設定で、もっと違う関係で出会える世界線(を)選べたらよかった、というものもありますので、耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

B2B営業の未来として数年前まで主流だった世界線は、「営業担当者がコンピューター/AIに取って代わられる」というものでした。

2013年にオックスフォード大学のマイケル・オズボーン教授が論文「雇用の未来」で、今ある仕事の47%がコンピューターに取って代わられる可能性がある、と発表して世界に大きなショックを与えました。その取って代わられる仕事の中には受注係や販売員なども入っていましたので、なんとなく覚えているという方もいらっしゃるかもしれません。

それから2年後の2015年には、フォレスター・リサーチ社が「BtoBセールスマンの死」という、これまたショッキングなレポートを発表しました。これは、AIの進化により米国のB2B営業担当者の22%が失業するという予測で、コンサルティング型の営業職は10%増加する一方で、それ以外の受注処理型や説明型などの営業職は15~33%減少するというもの。

「BtoBセールスマンの死」という煽情的なタイトルにつられて、「未来では皆がAIを相手に購入するようになるので、B2Bの営業担当者はお払い箱になる」と主張する記事が多かったように思います。

B2B営業の未来その2「生身の営業担当者が生き残って活躍する」

その一方でここ数年では、「生身の営業担当者が生き残って活躍する」世界線も、ちらほら目にするようになっています。

以前のトライツブログでもご紹介した米国の労働統計局のデータによると、2018年から2028年にかけて訪問販売やテレマーケティング、レジ係などの雇用数は減るものの、B2B営業の雇用数はテクノロジー関連を中心に逆に増えると予想されています。

最近このデータが最新化されましたが、B2B営業の雇用数は依然として7.4%(サービス業)、4.8%(製造業)の増加が予想されています。その一方でB2C営業の雇用数は4.2%の減少を見込んでいます。

このレポートは雇用数の増減を予想するだけで、その世界で私たちがどんな仕事をしているのかを教えてくれるものではありませんでした。しかし、つい最近、未来のB2B営業担当者がどのような仕事をするのかが垣間見えるレポートが2つ発表されました。まずは1つ目のレポートから見ていきましょう。

未来のB2B営業担当者の仕事その1「顧客の購買活動のモニタリング」

最初にご紹介するのは「What is ecommerce doing to the sales rep’s job?」(「eコマースで営業担当者の仕事はどうなるのか?」)。このレポートが示している未来のB2B営業担当者の仕事を一言でまとめると、「顧客の購買活動のモニタリング」です。記事にはこのように書いてあります。

顧客が営業担当者と話すことなく、オンラインで直接購買活動を進めるようになります。(中略)
このような未来の世界での営業担当者の大事な役割は、個々の顧客の専門家であること。それぞれの顧客のニーズや期待、競合製品などを把握し、購入の進捗状況や今後の予測を継続的にモニタリングします。(中略)
デジタルツールによって顧客の購買活動を分析してエラーを早期に見つけ、対応策を実施するのです。

未来のB2B営業担当者の仕事その2「顧客の購買活動のコンサルティング」

そして、次にご紹介するのは「The New ABCs Of B2B Selling: Always Be Consulting」(「B2B営業の新しい『ABC』:常にコンサルティングせよ」)というForbesの記事です。

記事のタイトルに、新しいABCを「常にコンサルティングせよ(Always Be Consulting)」と表現していますが、これは昔からあるB2B営業のABC「常に成約を目指すべし(Always Be Closing)」を今風にアレンジしたもの。そのため、B2B営業担当者の未来の仕事は「顧客の購買活動のコンサルティング」そのものだとしています。

B2B営業担当者の今後の仕事は、顧客のデジタルな購買体験を熟知し、顧客が希望するゴールに到達できるように必要に応じて製品の相談に乗る、というものになります。

モニタリング+コンサルティング=顧客の購買活動の管制官

この2つのレポートを重ね合わせることで見えてくる、未来のB2B営業担当者の仕事は、デジタルツールを使って顧客の購買プロセスの進捗をモニタリングしながら、顧客の購買上のトラブルを検知/予測して必要な打ち手をアドバイスする、いわば顧客の購買活動の管制官です。管制官は、パイロットや車掌が操縦する飛行機や鉄道の様子を観察し、基本はそれぞれの機体/車両が自走するのに任せるものの、異常発生時にはトラブルシュートを手助けします。これをB2B営業に置き換えたものになるはずです。

では、この世界線でも成果を出せるようになるために、私たちにはどのようなスキルが必要になるのでしょうか。

管制官に求められるデジタルスキルとコンサルティングスキル

1つは、データからそれぞれの顧客の購買の状況を的確に読み取るデジタルスキルです。顧客の自社Webサイトの閲覧状況や、こちらからメールやSNSで送っているコンテンツの開封状況などから、顧客が今どの段階にいて、順調なのか停滞しているのかを見定められなければなりません。

そしてもう1つは、顧客の購買が停滞している場合に、顧客と会話しながら詳細の課題を把握して、有効な打ち手をアドバイスするコンサルティングスキルです。

最近では、後者のコンサルティングスキル向上に取り組む企業が増えてきました。私がお手伝いしている広告サービス企業でも、従来の営業スタイルから顧客の集客や店舗経営といった課題にまで踏み込んだコンサルへと変化しつつあります。

その一方で、なかなかスキルアップが難しいのが、前者のデジタルスキルです。というのも、このスキルを身につけるためには、そもそも顧客の購買状況を把握できるMAツール、管制官の例で表現するならレーダーやセンサーなどの計器そのものが揃っていなければなりません。しかし、MAツールが整備されていなかったり、それを営業担当者がリアルタイムで見られなかったり、という企業が少なくないのです。そのような企業の場合は、まず顧客の購買活動の様子を把握するためのツール整備からスタートしなくてはならないでしょう。

未来のB2B営業の世界でも成果を出すために必要な、デジタルの仕組みとスキルを考えよう

現在、顧客がWebを活用して自ら購買活動を進めるようになっていますし、今後もその流れは続くことでしょう。そして、どうやらその延長線上にある未来のB2B営業では、営業担当者がコンピューターやAIに取って代わられるのではなく、デジタルツールを活用しながら顧客の様子をモニタリングし、必要に応じてコンサルティングするという仕事の仕方になりそうです。

そのような世界線が現実になっても困らないようにするために、どのようなデジタルの仕組みが組織に必要なのか、そしてどのようなスキルが営業担当者各人に必要なのか、トライツブログでは引き続きリサーチします。一緒に未来のB2B営業について考えていきましょう。

参考:
What is ecommerce doing to the sales rep’s job?」(Yana Persky, Digital Commerce 360, May 27, 2022)
The New ABCs Of B2B Selling: Always Be Consulting」(John Bruno, Forbes Technology Council, Jun 1, 2022)

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