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DXを身近にする「ローコード/ノーコード」を知っていますか?

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映画やTVドラマでの天才エンジニアといえば、パソコンのコマンド画面にキーボードでコマンドやプログラムを高速で打ち込んでいく姿を想像されるのではないでしょうか。黒色や緑色の無機質な画面にドットが粗めのフォントで入力して、サーバーの中に侵入したり敵のウイルスの弱点を突いたりして、仲間や地球を守るといったものです。

普段の仕事でパソコンのコマンド画面を開くことがほぼなくなった現在でも、映画やドラマの演出ではプログラム言語を自在に操るのがプロフェッショナルの証となっているようです。確かに、Excelなどの画面を開いてマウスでカチカチとクリックしているのでは、ものすごいことをやっている雰囲気は出にくそうです。

プログラミング言語を使って記述・開発することをコーディングと言うのですが、そのコーディングが不要になる動きが最近より顕著になっています。今回のトライツブログでは営業DXにも関連するキーワード「ノーコード/ローコード」について、改めて考えてみたいと思います。営業現場でのデジタルツール活用や業務効率化をお考えの方は、ぜひお読みください。

ノーコード/ローコードが加速「話し言葉でプログラム」

ノーコードはプログラミング言語をまったく使わないで開発することで、ローコードは少ししか使わないで開発することを言います。ノーコードやローコードでどうやって開発するのかというと、PowerPointで資料を作るのと大きく変わりません。あらかじめ用意されている素材の中から、データ表示エリアやボタンなどのパーツを選んでドラッグ&ドロップして配置し、必要な設定をすればアプリケーションが出来上がるというものです。

このノーコード/ローコードのツールとして徐々に使われるようになってきているのが、マイクロソフト社のPower Apps(パワーアップス)です。これはOffice365の中にあるツールで、PowerPointのような感覚で手軽にアプリケーション開発ができるというもの。このPower Appsがさらに便利になるという記事が、最近発表されました。

それは「話し言葉でプログラム」(日本経済新聞、5月27日朝刊)という記事で、人が話す言葉をAIによってプログラミング言語に翻訳する機能を、米国マイクロソフト社が開発したとのこと。この機能はPower Appsという業務アプリの開発ソフトに搭載され、コーディングの知識が乏しい人でも、実現したいことを話し言葉で伝えたらアプリケーション開発ができるようになるそうです。まずは英語版を北米から試験公開し、その後に英語以外の言語への対応も進めていくということですので、日本語でアプリ開発ができるようになるのはもう少し先のようです。

どれぐらいの実用性があるのか、文の構造が複雑だと言われる日本語でもちゃんと動くのか、話し言葉だけでアプリ開発を完了できたりするのか、など気になるところがいろいろありますが、ノーコード/ローコードの未来の姿となりうる興味深い記事だと思います。

「業務生産性の向上」により急拡大する業務アプリ開発ソフト市場

この記事で紹介したPower Appsのようなノーコード/ローコード型のアプリ開発ソフトの市場は急速に拡大しています。少し前からTVでCMを流しているサイボウズ社のKintone(キントーン)、多くの営業組織で利用されているSFAソフトSalesforceの開発用プラットフォームであるSalesforce Lightning Platformsなどがその代表格なのですが、Gartner社のデータによると年率30%で市場規模が拡大しているということです。

ノーコード/ローコード・ソフトが急拡大している要因として、ここ数年のDXブームや昨春以降のリモートワークの拡大などがありますが、やはり最大の要因は「生産性の向上」という利用者が体感できるメリットの存在だと私は思います。

例えば、オンラインセミナーを開催するのでそれをメールで案内するために、対象企業のデータを更新するという作業をするとします。具体的には、営業担当者ごとに、それぞれが担当する対象企業の社名や担当者の氏名・部署名・連絡先(メールアドレス)を最新の状況に更新する、というものです。

Power Appsなどを使わずにこの作業をやろうとすると、まず全体リストを営業担当者ごとに分割した個別のExcelシートにしてメールに添付して送信し、各担当者がデータを更新してメール等で返信し、集まった個別のExcelファイルを再度集約するという作業が必要になります。期日までに全員から返信が来ればよいのですが、集まりが悪い場合は未提出の人を特定して督促しなければなりません。また、シートを分割したり集約したりするのも面倒です。

その代わりにPower Appsなどの業務用アプリを使えば、先ほどの作業がずいぶん軽減されます。Excelの一覧表を読み込むだけでアプリが自動で生成され、集計したい項目などを設定すれば準備完了。担当者を選べば、ほかの人のデータを間違えて上書きしてしまうこともないので、個別にファイルを分ける必要もありません。作成したアプリのURLを送って各担当者がそれを開いてデータを入力すれば、自動でデータが集計されます。Excelのファイルをメールでやり取りする必要はありませんし、誰が入力を終えていて誰が未入力なのかをリアルタイムで把握することも可能です。

このように普段Excelなどを使って行っている作業を業務アプリ化することで、集計や作業管理といった面倒な手間を自動化することができるようになります。この「業務の生産性の向上」というメリットは皆さんイメージしやすいと思います。

ノーコード/ローコードによる「開発生産性の向上」

しかし、業務の生産性向上は手作業の業務をアプリ化することで実現されるものです。ノーコード/ローコード・ソフトを使うことによる最大のメリットは、業務アプリの「開発の生産性の向上」なのです。

米国Quixy社のデータによると、業務アプリの構築・設計・展開には平均4~9か月かかります。また、外部の開発会社に依頼するとコストも発生しますし、業務を詳しく知らない人にアプリに求める要件や自社のシステム環境を理解してもらうための手間も余計にかかります。先ほどの「オンラインセミナーの送付先リストの更新」のような単純な作業であれば、アプリ化によって生産性が上がるとは言え、開発の外注コストを上回るメリットは考えにくいでしょうし、そもそも4か月も待ってはいられないという場合がほとんどでしょう。

一方で、ノーコード/ローコード・ソフトを使えば、業務を熟知している現場の担当者がアプリを開発できるようになります。そのため、要件を入れ忘れることも、自社のシステム環境に合わないアプリを開発してしまうこともまずありません。しかも、PowerPointのスライドを作るように簡単に短時間で開発できるので、先ほどのセミナーの送付先リスト更新など、今まではシステム化の対象にならなかったような比較的軽微な作業でもアプリ化の対象となります。一つひとつのボリュームが小さくてシステム化されないままになっている大量の作業を、低コスト・短時間で業務アプリ化できるようになるのです。

ノーコード/ローコードによる「開発の民主化」を体験してみよう

今回ご紹介した業務アプリ開発のノーコード/ローコード化のことを、海外の記事では「Citizen Development」、日本語に訳すと「市民による開発」「開発の民主化」という名称で呼んでいます。プログラミング言語に秀でた少数のプロフェッショナルに頼らざるを得なかった業務アプリ開発が、ユーザー自身の手によってできるようになったことを、貴族などの一部の為政者による統治から人民自身による統治へと転換した、近代の民主化の歴史になぞらえたものです。

まだPower Appsなどの開発ツールを試していない方は、ぜひ一度使ってみてください。マイクロソフトのPower AppsはOffice365標準のアプリですので、Teamsを使っている方はすぐに使うことが可能です。「それでも、いきなり使うのはおっくうだ」という方は、YouTubeなどに「はじめてのPower Apps」「Power Apps入門」といった解説動画がたくさんありますので、参考にしてみてください。

営業DXを進めようしているときに、日々のこまごまとした業務のアプリ化は遠回りに見えるかもしれません。しかし、実際にアプリ開発を自ら試してみることで、自分たちの業務をどのようにデータ化すればよいのか、どういう手順で入力させるのかなど、DXに必要な大事な考え方「プログラミング的思考」を実践的に学ぶことができるという、もう一つの大きなメリットを享受できるようになるのです。

☆「プログラミング的思考」に関係するトライツブログはこちら☆
実は営業にとって大切なスキル!プログラミング的思考とは何か
営業DX人材に求められるスキルとは【前編】
営業DX人材に求められるスキルとは【後編】

参考:「話し言葉でプログラム」(日本経済新聞、2021年5月27日朝刊)

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