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デジタル化だけではない!テレワーク時代の営業生産性向上に不可欠なこと

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先日からはプロ野球やJリーグなどのイベントへの規制も緩和されたり、観光促進のためのキャンペーンの開始時期が公表されたりと、7月に入ってから経済活動が元の姿に戻りつつあります。ただ、東京都を中心に新規感染者数も増えてきており、まさにウィズコロナとして、経済を回しつつも正しく自衛する生活/仕事の仕方が求められています。

そのウィズコロナ時代の仕事のスタイルとして、テレワークを外すことはできません。GoogleやFacebook、モバイル決済大手のSquareなどの各社がテレワークを優先する「リモートファースト」を標榜するのと同じように、日本国内の企業の中にもテレワークを継続する企業が多くあります。これからのテレワークは、「緊急事態だからやむを得ず」ではなく、「平常時の働き方として自ら選ぶもの」になりつつあります。

テレワークを自ら選ぶためにはメリットがなければありませんし、その最大の誘因はDX(デジタルトランスフォーメーション)を組み合わせることによる「生産性の向上」でしょう。B2B営業分野において、テレワークで生産性は高まるのでしょうか。高まるのだとしたら、何がポイントなのでしょうか。海外の調査事例が色々と出てきていますので、それらを見ながら一緒に考えていきましょう。

生産性に対してプラス方向とマイナス方向の両方に働くテレワーク

そもそも、実際にここ数か月のテレワークの普及によって労働生産性は向上したのでしょうか。

これについては、皆さんご存知のとおり、「うまくいった」という話と「そうでない」という話が入り混じっています。「テレワーク成功事例」というキーワードでWeb検索をすると、華々しいサクセスストーリーをいくつも見ることができますが、その一方で5月22日に日本生産性本部が発表した「第1回 働く人の意識調査」では、およそ6割の人が「テレワークによって仕事の効率が下がっている」と回答しています。

実はこのテレワークの賛否が二分されるという傾向は、海外でも同じです。B2B営業の分野においても、テレワークで生産性が高まったという調査記事もたくさんありますし、反対に労働生産性低下について警鐘を鳴らしている記事も同程度に数多くあります。

それらの記事を眺めながら頭の中を整理してみたところ、以下のように考えるとしっくりくることが分かってきました。それは、
B2B営業はテレワークに向いており、生産性向上のメリットを享受しやすいプラス方向の因子を本質的に持っている。
その一方で、現在のコロナ禍という非常事態における継続的なテレワーク環境では、メンタルヘルスが蝕まれて生産性を低下させるマイナス方向の因子も同時に存在している。
ということです。

では、このプラス方向の因子と、マイナス方向の因子が具体的にどういうものなのか、見てみることにしましょう。

生産性を高めるテレワークのプラス因子

まずプラス方向の因子について、新しい観点を示してくれているのがSellingPower誌の「How to Solve the WFH Sales Management Challenge」です。以下、手短に要点を抜粋してご紹介します。

営業担当者がやる気を出し、積極的に仕事をし、生産的であるためには、彼らが好きなこと、すなわち「営業活動」をさせる必要があります。(中略)見込客と多くコミュニケーションを取ることで、営業担当者の生産性とモチベーションが高まるのです。そのように営業活動を多くさせるために2つの要素が必要です。1つは、営業担当者一人ひとりを信頼して任せること。2つめは、適切なツール/システムを使わせることです。

記事では続けて、テレワークの期間に新規顧客への営業活動の量が7%増えた企業で、商談化率が38%向上したという事例を紹介しています。また、「以前は1か月程度かかっていた新規顧客の意思決定者とのコミュニケーションが、テレワークによって短いステップで刻むことができるようになったため、営業活動が効率化されている」とも書いています。

2020年5月上旬のトライツブログで、トライツとしての実体験から「テレワークでの商談には『短いスパンで顧客とアポイントを取りやすい』というメリットがあり、商談を小さく刻むことで効率化できる」という記事を書いたのですが、まさにそれと瓜二つの結果でした。このように、テレワークには営業の生産性を高める力があると言えるのです。

生産性を低下させるテレワークのマイナス因子

しかしその一方で、現在の危機的状況下のテレワークは生産性を低下させるデメリットがある、と警鐘する記事も複数あります。その中から、データによる裏付けがあるものを2つピックアップしてご紹介します。

テレワークしている従業員に共通してみられる問題は「仕事の時間と家庭生活の時間」を区別できないこと。(「テレワークの脅威は燃え尽き症候群(Sales & Marketing誌、June 15, 2020)」)

コロナによるテレワークの導入などの大きな外部変化が起こったとき、人の意識は自動的に最悪のシナリオに固定される。「10-80-10の法則」では、10%だけが落ち着いて行動し、80%は麻痺し、10%は事態をより悪化させるように動く。(「テレワーカーの低いモチベーションに取り組む(Partner In Leadership, June 15, 2020)」)

これらの記事にあるような、テレワークによるデメリットやリスクは今に始まったことではありません。テレワーク先進国である米国では、組織心理学や産業心理学においてテレワークによって生産性が実際に低下してしまったという調査データがいくつも報告されています。

テレワーカーとその同僚との関係性は、週に3日以上テレワークする場合に悪化する(Journal of Applied Psychology, Vol. 92, No. 2, 2007)

テレワーカーの業務時間は通常の勤務時間を超え、日常生活の時間や家族との時間も阻害する傾向がある(同上)

テレワーカーはオフィスで働いている人と比べ、週に4時間多く仕事をしている(2013 Gallup poll)

これらのデータから見えてくるのは、現在のコロナ禍のような状況では「協調的な職場コミュニティ」というリソースが欠如/不足することで、労働生産性が低下してしまいやすいということです。バージニア大学の臨床心理学者ジム・コーン氏によると、数千年の人類の進化の歴史において、発展した集団に唯一共通していた要素は「結束力の高いグループに属する協調的な他者の存在」であり、人類が適応してきた生態系として共通しているのは協調的なコミュニティだけだそうです。そのように考えると、継続的なテレワークによる生産性の低下を防ぐために、協調的な職場コミュニティの維持という観点からメンバーをケアする必要があると言えるでしょう。

テレワークで営業の生産性を高めるために必要なこと

ここまでの内容をまとめると、次のようになります。

このように考えると、テレワークで営業の生産性を高めるために、やるべきことが見えてきます。

まずはメンバーが安心して働くことができるよう、協調的な雰囲気でのコミュニケーションを充実・維持する必要があります。

そして、メンバーの裁量に任せる部分を増やしたり、必要なシステム/ツールを充実させたりするなど、メンバーが自律的かつ効率的に営業活動をおこなえる環境を整えなければなりません。このようにメンバーに自律的に動いてもらうためには、マネジメントと育成の考え方・やり方を大きく見直す必要もあるでしょう。それは例えば、「細かくモニタリング・指示出しするのではなく、基本的な進め方に合意したら詳細のやり取りの内容や進め方はメンバーに思い切って任せてみる」「メンバーが自分で判断して営業活動を進められるように、シナリオを自分で組み立てる方法を教える」といったことです。

テレワーク時代の営業改革にはマネジメントと育成の改革が不可欠

テレワークの普及に歩を合わせて、デジタルツールの活用が注目されています。もちろんテレワークという環境で生産性を高めるためには、紹介した記事にあるように「適切なツール/システムを使わせる」ことは不可欠です。しかし、テレワークの時代における営業改革を成功させて生産性を高めるためには、デジタルツールだけでなくマネジメントや育成の改革も併せて必要とされているのです。

トライツコンサルティングは、テレワーク時代の営業改革の一環としてのマネジメント改革や育成改革を支援しています。

参考:
How to Solve the WFH Sales Management Challenge」(SellingPower, May 25, 2020)
Burnout Becomes a Bigger Fear in WFH Environments」(Sales & Marketing、June 15, 2020)
Tackling Low Morale Among Remote Workers」(Partner In Leadership, June 15, 2020)

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