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リモートワークのメリット/デメリットから考える「アフター・コロナ」の働き方

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2020年3月現在、新型コロナウイルスの影響で多くのビジネスマンの働き方が変わっています。東京などの都市部では通勤ラッシュを回避するために、時差通勤が推奨されるようになり、リモートワークが推奨/指示されている企業も多くあります。また、会議の出席人数も最低限に抑えようというところも出てきていますし、夜のお付き合いもずいぶんと減っているようです。

この中でも特に影響が大きいのが、リモートワークの導入だと私は思います。FacebookやTwitterで知人の投稿を見ていても、リモートワークの快適さを満喫している人もいれば、自宅で缶詰になって働くことで逆に疲れてしまうとこぼしている人もいます。

そこで、以前からリモートワークの導入が進んでいる海外での調査研究結果をもとに、リモートワークのメリット/デメリットと、B2B営業に携わる人が快適にリモートワークするためのヒントをご紹介したいと思います。

世界でも浸透しているリモートワーク

まず、そもそも海外ではどの程度リモートワークが浸透しているのでしょうか。新型コロナウイルスが登場する前から、欧米ではかなりの数のビジネスマンがリモートワークを実践しているようです。

全従業員の約16%である、2,600万人以上のアメリカ人がリモートワークで働いており、その人数は2005年から2015年の間に115%増加している(米国労働統計局)

イギリスでは過去4年間の間に、リモートワークを前提とする求人が51%を超え、2倍以上に増えている(CV-Library)

調査データ:リモートワークのメリットとデメリット

このようにリモートワークが広く浸透しているために、多くの組織心理学者や産業心理学者がそのメリットやデメリットを調査しています。その中でも引用されることの多い有名な文献から、メリットに関するものをご紹介します。

リモートワークは従業員の仕事の満足度とパフォーマンス、組織に対するコミットメントを向上させる。また、リモートワークをした人は、仕事の疲労やストレスが少ない傾向がある。(Timothy Golden, et al. Psychological Science in the Public Interest, Vol. 92, No.2, 2015)

ただし、この文献では「社会的な孤立や、情報共有の機会の減少、仕事と個人生活の境界の不鮮明化」というデメリットについても触れています。このデメリットについては、他の調査研究の中で興味深いデータがいろいろとありますので、まとめてご紹介します。

リモートワーカーとその同僚との関係性は、週に3日以上リモートワークする場合に悪化する(Journal of Applied Psychology, Vol. 92, No. 2, 2007)

リモートワーカーの業務時間は通常の勤務時間を超え、分け入ってくる日常生活の時間や家族との時間も阻害する傾向がある(同上)

リモートワーカーはオフィスで働いている人と比べ、週に4時間多く仕事をしている(2013 Gallup poll)

リモートワーカーは、勤務時間外にEメールに応答するなどの行動によって、組織へのコミットメントを示そうとする傾向がある(Personnel Psychology, Vol. 62, No. 2, 2015)

いかがでしょうか。ここ数週間リモートワークで働いている人の中には「わかる!」と感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。オフィスで働かないことによる不安感や居心地の悪さといったものが滲み出ているデータだと、私は感じます。

また、リモートワークの受け止められ方が分かる、面白いデータを見つけましたのでご紹介します。

リモートワーカーは、所属する企業でリモートワークが一般的でない場合に最高のパフォーマンスを発揮し、多くの従業員がリモートで仕事することを認められている場合にはパフォーマンスが改善しない(Personnel Psychology, Vol. 62, No. 2, 2015)

これらのデータを見ると、リモートワークは特別な従業員に与えられた特権だと受け止められているものの、実際にリモートで働く人は「自分が周りからどう見られているか」という不安を抱えながら仕事をしている、ということではないかと思います。そして、この不安を緩和するために、リモートワークを実施する企業のマネージャーと従業員のためのガイドラインを作成する、という研究も進んでいるようです。(The Psychologist Manager Journal, Vol. 17, No.2, 2014)

B2B営業担当者がリモートワークをする上でのヒント

とは言え、このガイドラインが完成して日本にやってくるのをじっと待っているわけにもいきません。ですので、営業担当者が生産的にリモートワークを行ううえで、今すぐ参考にできるヒントを「A Sales Career as a Remote Woker」(B2B Sales Connection, 2020)から2点抜粋してご紹介します。

リモートワークで商談をする場合に、多くの営業担当者は普段よりも強く顧客に売込をかけてしまい、必死な印象を顧客に与えてしまいます。そのため、受注することではなく、販売のプロセスを次のステップに進めることに集中してください。

可能な限り規則正しく仕事をし、生産性を維持する必要があります。1日を2時間ごとのブロックに分けて、その間に休憩を入れるようにしましょう。また、注意をそらすことがないように、他のガジェットをオフにしておきましょう。

一見するとシンプルで当たり前なアドバイスではありますが、リモートワークによる不安感や後ろめたさ、居心地の悪さからつい「長く仕事しているところを見せよう」「結果を出そう」と焦ってしまいがちになる、という前述の調査データを踏まえると、意外と味わい深く参考になるアドバイスだと思えるのです。ぜひ参考にしていただき、リモートワーク疲れを起こさないようにしてください。

「アフター・コロナ」の働き方を今こそ考えよう

これまで、日本企業の働き方は規制などの外的原因や、日本人ならではの世間のトレンドに従う力などによって、ゆっくりとではありますが大きく変化してきました。20年前と比べて深夜残業や休日出勤をしている人は目に見えて減りましたし、クールビズも浸透して今では年間通じてノーネクタイだという人も多くいます。昔は夏場でもスーツとネクタイを身に付けるのがマナーだ、などと言われていましたが、ここ数年はクールビズで快適に仕事をするのが当たり前になりました。

そして今では、リモートワークの導入が多くの企業で進んできています。幼い子供がいたり、家族の介護や自分の健康不安などで、家を長時間空けられない人の就業機会の拡大にもつながりますし、通勤時間の有効活用など多くの人にとってメリットのある施策です。「災い転じて…」ではないですが、これもぜひ日本の社会に定着してほしいものです。

ただ、多くの産業で業績の悪化が懸念されていることもあり、「顧客が購買活動を控えている」「市場が冷え込んでいて新規開拓できない」など、本来やるべき営業活動をできていない方も多いでしょう。そのように考えると、今急速に進んでいる働き方改革は本来やるべき業務を一部犠牲にしている「非常時の働き方改革」だと言えます。

しかし、まだ時期こそ見通せませんが、新型コロナが終息し、私たちが本来やるべき業務に取り組む日が確実に戻ってきます。その時に、リモートワークや時差通勤などの今回手に入れた新しい働き方を活用して、いかに効率的かつ生産量を落とさずに本来やるべき業務をできるようにするかという「本来の働き方改革」を考えなければなりません。

現在、新型コロナ対策のためのリモートワーク等の働き方が多くの企業で軌道に乗りつつありますし、かつてのクールビズのように、きっとその多くがビジネスの新しい当たり前になってくることでしょう。この先は、ウイルスが終息して本来の業務ができるようになる「アフター・コロナ」の世界で、新しい当たり前の働き方を活かした営業活動の進め方を考えなければならないと私は思うのです。

トライツコンサルティングでは、デジタルツールを活用した営業の生産性向上と働き方改革の実現を支援しています。また、リモートワークだからこそできる営業活動の進め方についても研究しています。「営業でも多様な働き方を実現したい」「新しい働き方に合わせて営業を進化させたい」という方は、ぜひご相談ください。

参考:「The future of remote work」(American Psychological Association, Vol. 50, No. 9, 2019)
A Sales Career as a Remote Worker」(B2B Sales Connections Inc., 2020)

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