トライツコンサルティング株式会社

購買担当者がAIに変わる?営業が乗り越えるべき購買AI化の波

Businessmen and robot having discussion. Future reality, artificial intellect. Humans vs robots.

この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。

これまで何度もトライツブログではAIの進化によって、B2B営業がどのように変化しつつあるのかを見てきました。人間が行ってきた営業活動の中でAIがどう活用されていくか、それによって営業担当者やマネージャの仕事がどう変わるかということなどを考えていくと、大きなインパクトがあることがわかっています。

ただこれらは基本的に相手が人間であることを前提としています。人間に興味付けし、提案し、購買してもらうためにAIをどう活用するかを考えているわけです。しかし、改めて考えてみると、AIは営業という業務だけでなく、相対する購買業務にも活用されていくはずです。

そこでこれからの営業を考えていく上では、B2Bの購買とAIの関係はどうなっているかということも知っておく必要があります。今回のトライツブログでは、これまでとは趣向を変えて「AIによって変わるB2Bの購買・調達業務」について見てみたいと思います。

調査レポート:AI化が進むB2Bの購買・調達業務

購買管理・調達管理ソリューションの大手企業であるZycus Inc.社。同社が毎年発表している購買・調達業務のトレンドについての調査レポートの最新版である「Pulse of Procurement 2018」が最近発表されました。

レポートの中では購買・調達業務を大きく変えるトレンドとして、在庫棚卸情報や機器のメンテナンス情報などをもとに購買の自動化を可能にする「IoT」や、取引情報を企業間で共有することで取引/決済業務の効率化を図る「ブロックチェーン」などが挙げられていますが、トレンドのトップに君臨しているのが「AI」です。レポートをもとに、B2Bの購買・調達業務におけるAIの現状と今後の可能性について見ていきましょう。

多くの業界や事業領域においてAIは全くの新しい技術ですが、調達業務においてはすでにおよそ20年以上の実績があります。AI技術の活用は取引の仕訳分類から始まり、購買サポートやコスト削減策の自動算出などに活用されるようになりました。

20年以上もの調達業務での機械学習の進歩により、AIは以下のような業務に進出し始めています。
◆需要予測
◆正確な市場価格の決定
◆契約交渉
◆外注プロセスの推進と意思決定
◆請求処理手続
◆戦略に基づく優先順位付け
◆法令順守
◆調達リスク管理
◆管理下支出の範囲拡大

上記のような業務でのAI等の活用が期待されている理由を読み解くヒントとして、同レポートの「Procurement pain points」(調達業務の問題点)ページが参考になります。以下に、企業の購買・調達担当者が回答する問題点のトップ5をご紹介します。

1. 時間とリソースが不足している
2. サプライヤーのパフォーマンスが見える化できていない
3. 調達業務が標準化できていない
4. データソースがバラバラ
5. 長くて面倒な外注プロセス

このように調達業務ではリソース不足の中、業務やデータソースの標準化・見える化が進んでいないという問題があります。これを解決するものとして今、AIをはじめとする技術に大いに期待が寄せられており、そのいくつかが商用化されてきているのです。

企業で進む購買・調達業務のAI・デジタル化

ご紹介したZycus社の調査レポートから、B2B企業の購買・調達業務のAI化についてわかったことは、購買・調達業務においては20年も前からAIの活用が始まっているということです。これは最近になってAIが注目されはじめた営業と比べるとかなり先輩だと言えるでしょう。

そして、これから従来の仕訳の自動化や最適価格の算出といった担当者の業務支援だけでなく、支出の優先順位付けや調達プロセスの実施や意思決定、契約交渉など、サプライヤー企業の営業担当者とのやり取りにまで広がっていく可能性が高いのです。

これはつまり、購買の意思決定の大事な部分をAIが担う日が遠くない将来に訪れるということを意味します。そうなると「人間関係」とか、「営業担当者の熱心さ」というようなAIがスコアリングできない、しにくい要素よりも、「投資対効果」や「スペックと価格のバランス」「過去導入実績」「これまでの取引による成果(パフォーマンス)」など、AIで測定・評価できる分かりやすいメリットや特長・成果で選ばれるようになるはずです。

昔ながらの人間関係を重視した営業のやり方をGNP営業(義理、人情、プレゼント)などと言ったりしますが、それらがAIにとってスコアリングの対象にならないのであれば、やっても意味がないということになるでしょう。

もちろん、米国で起きている変化の全てが日本市場でも起こるとは限りません。しかし、SAPなどのERPによる社内業務のデジタル化、SFAやCRMにMAなどの営業活動のデジタル化という波が日本企業にも広がってきている現状を見ると、購買・調達活動においてもAIを活用したデジタル化の波は間違いなく日本にも訪れると考える方が妥当です。現にSAPやIBMに日本ユニシスなどの各社がAIを活用した業務システムの導入を始めつつあるとも聞きます。

AIにも評価される営業にならなくてはならない

こんな話を聞くと、将来的にはAI同士で自動的にやりとりして取引を決めてしまう・・・というような世の中がくるかもしれないと思えてきます。しかし、それはあくまでもかなり先の話でしょう。

とは言ってもAIは営業活動だけでなく、その対岸である購買活動も大きく変化させようとしているのは事実のようです。購買担当者がAIを活用し、AIに対して商談をしなければいけない時代がSFではなく現実の世界になりつつあるという現実を受け入れなければならないということです。自社の営業でAIが使えるか?有効か?などという議論をしているうちに、顧客の購買がAIを導入し、今までの営業のやり方が通用しなくなる・・・そのXデーはすぐ近くに来ているかもしれません。

そうなると今よりもメリットがわかりやすく、AIに選ばれやすい営業活動をしていかねばならなくなるはずです。そんな時代の変化を理解しながら、我々はこれからの営業を考えていかねばならないのです。

見方を変えると、AIに分かりやすく、選ばれやすい営業活動とは、現在の購買担当者にも分かりやすく、選ばれやすい営業活動とも考えられます。つまりAIの浸透に合わせることなく、今から取り組むべき課題なのです。

これからの営業について真剣に考えていきたいとお考えの方は、ぜひお気軽に下記よりお問い合わせください。

参考:「Pulse of Procurement 2018」(Zycus Inc., Jul 9, 2018)

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