トライツコンサルティング株式会社

AIで消える?今後も安泰?営業に顧客が求めること

Man is pitted against a symbol of technology

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4月1日のエイプリルフールでは、今年も各社趣向を凝らしたネタを提供してくれました。毎年の世相を映すエイプリルフールですが、今年は「AI」や「働き方改革」に絡めたものが多かったように思います。オンライン旅行代理店のエクスペディア社の「完全AI化で従業員ゼロ~削減した人件費をお客様の旅行に還元!」というネタはニュースでも取り上げられましたので、目にした方も多いのではないでしょうか。

このネタのように、「AI活用で今まで人間がやってきた業務が置き換えられて、人が要らなくなる」という話が色々な新聞や雑誌で記事になっています。これは営業職についても同じで、以前にも海外の「B2Bセールスマンの死」という記事をこのトライツブログでもご紹介したように、AI活用や顧客の購買活動のWeb化などを通じて人間がやってきた仕事がなくなる可能性がある、という話をよく目にします。

そんな中、これらとは真逆のことを主張している海外の調査レポートを見つけましたので、今回のトライツブログで取り上げてみたいと思います。営業職はこれから消えてしまう仕事なのか、それとも今後も安泰の仕事なのかを見ていきましょう。

海外調査レポート:営業で言われる5つの神話は本当か?

今回ご紹介する記事は、主にB2B営業についての調査会社であるRAIN Groupの「5 Sales Prospecting Myths Debunked」というもの。これはB2Bの購買担当者488人を対象に、営業に期待することを調査・整理したレポートで、世の中で言われている営業に関する5つのMyth(神話、転じて作り話や思い込み)を検証しています。以下、5つの検証結果を少し詳しめにご紹介します。

神話1「顧客は営業の話を聞きたいと思っていない」

「顧客の購買プロセスの67%はWebなどのデジタル周りで行われている」(Sirius Decision社)という調査データがあるように、顧客がモノを買うときに営業に頼らなくなってきているという話があります。最初に検証した神話はこれに関するもので、とても面白いデータが紹介されています。

顧客の購買プロセスのうち、「自社のビジネスを改善できる可能性のある新しいアイデアや可能性を探す」という最初のプロセスでは、71%の購買担当者が営業担当者から話を聞きたいと思っている

購買プロセス全体を通じて、82%の購買担当者は営業担当者との打合せに応じている

上記のデータから、顧客は購買プロセスの初期段階で営業から話を聞きたいと思っているとレポートでは結論付けています。

神話2「テレアポはもう古い」

EメールやLinkedInなどのSNSが広まっている中、アポイントを取る手段として「電話はもう古い」とよく言われます。RAIN Group社はこの神話を検証するべく、購買担当者が好む営業担当者からのコンタクト手段について調査しています。

購買担当者が好むコンタクト手段は上位から順に、
1. Eメール(80%)
2. 電話(49%)
3. DM(36%)
4. カンファレンスやセミナーなどのイベントでのプレゼンテーション(36%)
5. イベントでの展示(32%)
6. LinkedIn(21%)

役員レベルや上級管理職レベルの購買担当者は、それ以外の役職と比べて電話でのコンタクトを好む傾向がある
‐役員レベルや上級管理職レベル(57%)
‐マネージャーレベル(47%)

この結果から、半数近く(役職が高ければ半数以上)の購買担当者に対して、依然としてテレアポが有効なコンタクト手段であるとレポートでは述べています。

神話3「アポイントの獲得は不可能だ」

営業担当者がよく口にする「アポが取れない」という話。これに対しても、以下のような調査データをレポートで紹介しています。

購買担当者が営業担当者とのアポイントに応じる要因は上位から順に
1. 商品・サービスの必要性がある(75%)
2. 予算がついた(64%)
3. 企業から価値ある提案を受けた(63%)
4. その企業と以前から付き合いがある(61%)
5. その企業の商品・サービスを買ったことがある(60%)
※以下略

「必要性」や「予算」など営業担当者としてコントロールできない要因もありますが、「価値ある提案」など営業活動そのものの要因もあることから、レポートでは営業担当者としてアポイントを獲得するためのやり方はいくつもあり、アポイント獲得は不可能なことではないと強く論じています。

神話4「顧客は自社に関する話しか聞きたがらない」

さまざまな営業本で書かれている「営業は自分たちができることではなく、顧客のビジネスについて語れ」というお話。これについてもレポートでは検証しています。

購買担当者が営業担当者との次の打合せに応じるコンテンツは上位から順に
1. 自社のビジネスに関連する調査データ(69%)
2. その企業ができることの紹介資料(67%)
3. 自社の状況に100%カスタマイズされたコンテンツ(67%)
4. 業務課題を解決するための気づき(66%)
5. 企業の専門分野におけるベストプラクティス(65%)
6. 新しいビジネスのトレンドに関する洞察(63%)
7. ROIなどの財務的な裏付け情報(63%)
※以下略

調査結果を見ると、購買担当者はもちろん自社に関する情報を求めていますが、それだけではないことが分かります。レポートの中でも、「気付きや洞察、企業ができることというコンテンツは購買担当者の関心を引きます。自社ができることを話すなと営業は言われているものの、気付きや洞察と自社の提供サービスを組み合わせた情報を購買担当者は求めているのです」とまとめています。

神話5「顧客が前向きでない商談からは受注できない」

レポートでは最初に「58%の商談は購買担当者にとって価値がないと感じられている」というデータを紹介していますが、それに続けて「商談において顧客の購買の意思決定に影響を与える要因」についての調査結果を示しています。

顧客の購買の意思決定に影響を与える商談の要因は上位から順に
1. 提供する価値に集中した会話(96%)
2. 協働での検討(93%)
3. 新しいアイデアを教えてくれる(92%)
4. 業界や市場についての価値ある洞察(92%)
5. 自社の課題・要望への理解を深めてくれる(92%)
※以下略

この結果をもとに、レポートは「商談の中で価値を提供することで、受注という素晴らしい結果を得られる」「5つの神話のことは忘れて、自信を持って商談を作り、より多くの受注を獲得しよう」とまとめています。

自分たちの営業活動は顧客にとって価値があるか?

ここまで、ちょっと詳しくRAIN Group社の調査レポートを紹介しました。さて、このレポートを我々はどう受け止めれば良いのでしょうか。

調査結果を見ると、顧客の多くは営業に会いたいと思ってくれていますし、購買の意思決定に影響を与えることも可能という結果になっています。しかし、単純な「商品・サービスの売り込み」や「御用聞き」には価値を感じておらず、顧客のビジネスにとって価値がある情報がないとダメだ、という厳しいメッセージがこのレポートの行間に潜んでいることを見過ごしてはいけないと思うのです。顧客はどんな営業でも会いたいのではなく、自分達に価値を提供してくれる営業とは会いたいと言っているだけです。

そこで、これは米国での調査結果ではありますが、もしあなたがこの5つの神話を読んで「自分はそうは思わないし、調査結果も驚く内容ではない」とお感じになられたとしたら、あなたは今も顧客のことがわかっていて、しかもその要望に応える対応ができている「顧客から会いたいと思われる営業」なのではないかと思います。

逆に「5つの神話の通りだと思っていたし、調査結果には驚いた」という印象だとしたら、顧客との間にギャップができてしまっている可能性があります。過去のやり方が通用しなくなっているのを、「最近の顧客は◯◯だからダメ」とか、「もうあれは古い」などと言って諦めてしまっているかもしれません。

この調査結果は、一般的に言われるようなことに惑わされたり、AIを闇雲に不安視したりせず、営業担当者がどれだけ顧客のビジネスに対する価値を提供できるかが重要で、それはあなたの工夫次第である、と示唆してくれているように感じました。

一度、あなたのまわりの皆さんで、この5つの神話と調査結果について話し合ってみてはいかがでしょうか。

参考:「5 Sales Prospecting Myths Debunked」(RAIN Group)

トライツコンサルティングではAIをはじめとする最新テクノロジーをいかにB2B営業・マーケティングに活用するか、という観点で定期的にセミナーを開催しております。また、セミナーと同じ内容で個別企業向けの勉強会も行っておりますので、ご興味のある方は下記よりお気軽にお問い合わせください。

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