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皆さんの営業組織ではどのような営業ツールを使っているでしょうか。
会社案内に商品カタログ、導入事例集に価格表。最近では自社のHPにあるホワイトペーパーを印刷して顧客のところに持っていくなど、全て営業活動に不可欠な道具、すなわち営業ツールです。これらは自分たちの商品やサービスがどのようなものかを正しく・魅力的に伝えるためのものです。
これらの営業ツールは顧客のやりたいことや欲しいものが明確になっていればいいのですが、顧客自身でやりたいことがあいまいだったり、まだ情報収集したいなどと考えている段階にこれらのツールを使うと、どうしても「売り込む」感じになってしまい、「また何かありましたらご連絡します」と相手からあっさりとクローズされてしまうことが少なくありません。
そうならずに上手く商談を発掘するためにはどんな営業ツールがあればいいのでしょうか。今回のトライツブログでは、商談発掘の場面で効果のある営業ツールとその考え方をご紹介したいと思います。
仮説提案型営業ツールには限界がある
商談を発掘するために重要なことは「こちらから何らかの提案をすることである」このように考えている営業マネージャ、担当者は少なくありません。ただ、最初からピンポイントで相手の課題にヒットさせるのは難しいので、「業界ではこういうことが課題になっていますが、御社ではいかがでしょうか」や「御社の競合が開発したこのような商品がヒットしているので、それを超えるものを開発しませんか」などと、なんらかの「仮説」に基づく「提案」を重ねてポイントを絞っていくのが一般的です。
そこで活躍するのが、具体的な商品やサービスの紹介ではなく、顧客の課題とその解決策の仮説に基づく、仮説提案型の「興味付けツール」です。このツールの出来が良ければ大きな効果を発揮します。B2B営業を中心に調査している米国のRain Group社の調査レポート「5 Sales Prospecting Myths Debunked」でも、買い手の購入意欲を高める商談の要素として、「価値のある洞察を提供してくれる(92%)」「新しいアイデアを教えてくれる(92%)」を挙げていますし、良い「興味付けツール」は良い商談を発掘してくれるでしょう。
ただ、このやり方も決して万能ではありません。顧客や自社にある程度想定された課題しか出てこないことが多いですし、競合他社も同じようなアプローチを仕掛けてくるので、差別化をはかるのが難しくなっているという面もあります。特に取引が始まったばかりの企業や完全に新規の企業を攻略しようとするときに、余程ユニークな仮説を持たない限り、自社の特徴を出して顧客のドアを開けるのは大変です。
そこで、トライツが支援する営業改革プロジェクトで作成しているのが、「顧客と一緒に俯瞰で見る営業ツール」です。
「俯瞰で見る営業ツール」が気付きを与える
これは営業する側で課題を絞り込むのではなく、顧客と一緒に現状を俯瞰してその場で課題を一緒に考えるためのツールです。具体的にどういうものかと言うと、顧客の業務プロセスをビジュアル化するための「顧客の業務プロセスマップ」や、顧客が作っている数多くの商品を一覧できるように商品画像と商品名を整理した「顧客商品一覧表」というものです。このようなツールを使って、顧客と一緒に実態を俯瞰で眺め、現在の問題や課題を一緒に整理するのです。
上の説明を読んでお感じになったと思いますが、「顧客の業務プロセスマップ」も「顧客商品一覧表」も一見すると何の変哲もない営業ツールです。「そんなものを持って行っても何の気付きも与えられないのでは?」とお思いでしょうが、実際に使ってみると意外なことに顧客からの評判がすこぶる良いのです。
業務プロセスを整理したり商品の一覧を見ながら会話することで、顧客は新たにやりたいことや大事なことに気付いてくれ、これから一緒に具体化していくビジネスチャンスが見つかります。そして商談の終わりには、業務課題や改善案が書き込まれた「顧客の業務プロセスマップ」は「写真に撮らせてくれ」と言われますし、「顧客商品一覧表」は「頭を整理するのに便利だから1枚もらえませんか?」と持っていかれそうになったりします。
営業が思うより顧客は自社を俯瞰できていない
このようなことを何度も経験して分かったのが、顧客は自分たちの業務プロセスや商品について俯瞰して考える機会を持っていない、ということです。業務プロセス改善や商品開発を考える際には、当たり前に「俯瞰」というものが必要なのですが、特に大企業の場合は業務プロセスごとに担当部署が分かれていたり、商品カテゴリーごとに開発チームが分かれていたりするので、俯瞰するすべを持っていないということが往々にしてあるのです。
そのようなときに「顧客と一緒に俯瞰で見る営業ツール」は役に立ちます。業務プロセスや商品を俯瞰で見ながら、現在困っていることや悩んでいること、改善したいと思っていることを一緒に棚卸することで、課題が見えてきます。先ほど紹介したRain Group社の調査にも、「自分たちの課題の理解を深めてくれる(92%)」「一緒になって考えてくれる(93%)」ことで買い手の購入意欲が高まるというデータがあります。課題を絞り込んで仮説を示すというやり方以外に、一度立ち止まって現状を俯瞰するというやり方でも、「価値のある洞察を提供」できます。
押してもダメなら引いて(俯瞰して)見よう
昨年から、当時中学生の藤井聡太棋士が公式戦最多連勝記録を更新したことをきっかけに、将棋に多くの注目が集まっています。そこで話題になったのが、対局中に席を立って相手の後ろから遠目で盤面を眺めるという行為。昨年現役を引退した加藤一二三元九段がよくやっていたことから、「ひふみんアイ」と呼ばれているようです。この「ひふみんアイ」はまさに俯瞰で見るということ。実際に盤面を相手側から俯瞰で見ることで、良い手筋が見えることがあるというのです。
今回ご紹介した「顧客と一緒に俯瞰で見る営業ツール」。仮説を絞り込んで提案するのが「押し」であるとするならば、俯瞰するのは「引き」であると言えるでしょう。カメラでも後ろに下がって全体を撮影することを「ヒキ」と言うそうです。営業においても「押し」だけでなく、顧客の業務プロセスや商品の全体を俯瞰する「引き」も、使い勝手の良いツールがあれば商談を発掘するのに有効な一手となります。「押してもダメなら引いてみな」という言葉は人間関係の駆け引きで使われますが、商談発掘の場面でも使える考え方なのです。
トライツコンサルティングでは、これらの考え方をベースに、営業現場で本当に「使える」営業ツールの開発を行っています。顧客とのコミュニケーションの質を高め、結果に導くことができる営業ツールにご興味がある方はお気軽にご相談ください。
参考:「5 Sales Prospecting Myths Debunked」(Rain Group)