トライツコンサルティング株式会社

顧客から「戦略的」に選ばれるパートナーになるために必要なこと

Two businessmen shaking hands from below with an illuminated ceiling background. They are using both hands for extra emphasis.

この記事を読むのに必要な時間は約 9 分です。

長い間、B2Bの営業において大切なのは「顧客のニーズ、課題を聞き出すこと」であると言われてきました。そして、いかに顧客のニーズや課題に応える付加価値の高い提案ができるか。それも競合他社よりも低コストで行うためにどうするかについて、営業担当者は知恵を絞っています。

また、顧客企業内での購買に関する手続きに必要な資料を作成したり、購買の意思決定権者を説得する方法を一緒に考えたりと言った、「顧客の購買支援」も、買ってもらうためには有効な営業活動になっています。

これらは顧客に選ばれ、購入してもらうための「売り手」側からの有効なアプローチです。しかし、どうも「買い手」のスタンスが変わってきていると言う興味深い米国の調査結果を見つけました。

この調査結果を元に、今回のトライツブログでは、いつもと少し違う「買い手」の側から「これからの営業として大事なこと」を考えてみたいと思います。

顧客は「戦略的パートナー」を求めている?!

米国のB2C(Business 2 Community)というサイトのブログの中に「Research Says B2B Buyers Want Strategic Partners(調査によるとB2B顧客は戦略的パートナーを求めている)」というものがあります。ここではある調査結果を紹介しています。

Aberdeen Group(PJA Advertising and Marketingとの共同研究)による最近の調査によると、B2Bの顧客は、経営戦略を実現し、差別化で競争力を高め、新たな成長機会を特定できる取引相手を探しています。この調査レポート「B2B顧客は何を求めているか?」は様々な業界および企業規模から250人以上を対象に実施しました。

調査参加者に、購入の意思決定に影響を与える要因(複数回答)を聞いたところ、上位3つの要因は次のとおりでした。

1.初期投資から維持までのトータルコスト(回答者の45%が選択)
2.取引相手/ソリューションが自社のビジネス目標の達成をどのようにサポートするか(42%)
3.効率性の向上(ROI)(40%)

また、このアンケートの回答者に「購入の意思決定を判断する際に、他に検討する要因は何か?」を質問したところ、67.2%の人が「取引相手が自社の差別化/競争力を高めること」、55.7%が「新しい成長/収益機会の特定を支援すること」と回答しています。

これらのアンケートの結果から、2つのポイントが見えます。第一に、B2B顧客は依然としてコストとROIに重点を置いており、それらの経済的要因は依然として購入の意思決定の中心を占めています。第二に、このアンケートの回答者の多くは、経済的な条件さえ満たされれば、購入の意思決定の際により戦略的な視点を重視しています。

回答者のうち3分の2(67.2%)が「ビジネス戦略として戦略的なパートナーを求めている」と答えたのは実に注目すべきことです。

私がこの記事の中でとても興味深いと思ったのは、記事の最後にある「ビジネス戦略として戦略的なパートナーを求めている」という部分です。買い手側の要望を満たした提案をしてくるからとか、購買担当者にとって便利だからとかという理由で購買先を選ぶのではなく、もっと中長期的な視点から「ビジネス戦略」としてパートナーを選ぶと言っている回答者が多いのに驚きました。

「本来であれば自社でやるべき」ではなくなりつつある

もちろん、日本においてもビジネスの戦略として「売り手」を選ぶということは行われてきましたが、限られた分野・領域だけのことのように思います。それに対しこの調査結果は、今後多くの企業が「自社のビジネス戦略として外部の力をより有効に活用するようになる」ことを示唆していると感じます。

私がいろいろな会社の営業企画部門の方とお話しをしていると「本来は自社でやるべきことなんですが・・・・」と言う発言をお聞きすることがあります。それは、「本来であれば外部の力など借りることなく、自社だけでやることであるが、能力的、時間的、コスト的など様々な要因から外部の力を借りざるを得ない」という、どちらかというと消極的なスタンスからの発言が多いように思います。

これはB2Bの営業においてもよくあることです。顧客が「本来であれば自分たちでやるべき」と認識していることに「売り手」が介入したり、支援したりして、その見返りとして自社の商品を買ってもらうという営業アプローチです。

ちなみにこんなことを書くと「自分の担当している顧客の購買担当者は“本来であれば自社でやるべきこと”などとは一切考えず、あれヤレ、これヤレと何でも丸投げしてくる」などと思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、それはあくまでもその購買担当者の方のスタンスであって、会社として戦略的にそうすると決めていることは少ないはずです。

それに対し、「ビジネス戦略として戦略的なパートナーを求める」というのは、「買い手」の組織としての積極的なスタンスです。「本来は自社でやるべき」という「本来」の部分がそもそも違っていて、積極的に外部の力を借りてビジネスをより成功させようという考え方であり、「売り手」に対しても積極的な姿勢を求めてくるものです。

「企画力」「プロジェクトマネジメント力」「コンサルティング力」が営業の不可欠な能力に

顧客のスタンスが「ビジネス戦略として戦略的なパートナーを求める」ようになると、顧客のビジネス戦略を理解し、自社のリソースと組み合わせることで、どのようなビジネスの発展が描けるか、これを考え、実際に組み立てられる「企画力」や「プロジェクトマネジメント力」「コンサルティング力」などが必要になります。これらが弱いと顧客の言いなりで何でもやらされるだけになり、自社にとってメリットのない関係になってしまうからです。

また、これまでのような、「ヒアリング」→「提案」→「受注」というような単純なプロセス管理も通用しなくなるので、営業のマネジメントのあり方、やり方も大きく変わっていくでしょう。

これまでこのトライツブログでもITの進化によって顧客の購買プロセスが変わり、それに伴いB2Bの営業のあり方も変わるとお伝えしてきましたが、顧客が「売り手」に求めるものもこのように変わってくるとなると、益々これまでの営業が通用しない時代がすぐそこまでやってきていると感じます。

まずは、営業そのものの「自前主義」から見直してみては?

そんな中、改めて皆さんに考えてみていただきたいのは、自分たち営業の戦略的パートナーについてです。

顧客が「もっと外部の力を有効に利用しよう」と変化している中で、皆さん自身は外部の力を有効に活用することができているでしょうか。例えば重要な案件の提案をする際に、一緒になって提案を考えてくれる「売り手」や販売パートナーはいるでしょうか。わかりやすい企画書を作ってくれる知り合いの企画屋さんはどうでしょうか?

顧客が自前主義にこだわらず、取引先に戦略的パートナーとしての役割を求めてくるとしたら、顧客の求めに応じられる体制をつくる必要があるでしょう。そのためには「売り手」側も外部の力を積極的に活用するべきだと考えます。

また、外部の力を有効活用した成功体験を積んでおくことは、顧客と同じ視点から考えることにつながります。他の人の力を上手く使えるからこそ、人にも上手く使われるようになるのです。

このように、顧客から「戦略的パートナー」として選ばれるためには、まず自社の営業として「戦略的パートナーを有効活用する」と決め、試行錯誤を重ねていくことが近道のように思えます。

まずは、営業の「自前主義」を見直してみてはいかがでしょうか?どのように見直せは良いか知りたい、実際に自社の営業を見直してみたいとお考えの方は、ぜひトライツコンサルティングにご相談ください。具体的なアイデアをご提供できると思います。

参考:
「Research Says B2B Buyers Want Strategic Partners」(Business 2 Community, Jan 30, 2018)
What Do B2B Buyers Want?」(Aberdeen Group)

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