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10月25日に東京日本橋のベルサール八重洲にてセミナー『戦略的営業改革の実践 ~5つのトレンドを取り入れ成果を上げるコツ~』を開催しました。今回は、Webの普及で顧客の購買プロセスが変わるという、営業を取り巻く大きな環境変化のなかで、「SFA(セールスフォースオートメーション)」「MA(マーケティングオートメーション)」「顧客の購買支援」「ソーシャルセリング」「セールスイネーブルメント」という、B2B営業の5つのトレンドをうまく取り入れて戦略的に営業改革を進めるための知恵やノウハウをお伝えしました。
この5つのテーマはこのトライツブログでも何度となく取り上げているのですが、記事がコピーされる数が圧倒的に多いのが「セールスイネーブルメント」です。これは、日本ではまだまだ浸透が部分的で、解説記事も少なく全貌がつかみにくい、というのが理由ではないかと考えています。
そこで、今回のトライツブログでは、海外で急成長しているセールスイネーブルメント・システムの種類と主なシステムについて見てみたいと思います。
必然性から生まれてきたセールスイネーブルメント
成功事例を見る前に、セールスイネーブルメントとは何かについておさらいをしておきましょう。
セールスイネーブルメントとは「営業活動改善のための一連の取組であり、そのための各種施策をトータルでデザインし、それぞれの施策のパフォーマンスを数値化して管理すること」です。
これと似たような考え方に「営業パイプライン」というものがあります。営業活動をパイプに見立て、その中にあるプロセスを商談が進む割合を評価するという考え方です。従って評価される対象はそのパイプを進める役割を担う営業担当者になります。それに対し、セールスイネーブルメントは施策単位でそれぞれの施策の持つパフォーマンスを見ていこうとするものなので、評価対象はそれぞれの施策を仕掛ける人になるのが大きな違いです。
従来のB2Bマーケティング・営業と比べて、最近のB2Bマーケティング・営業はWeb(企業のWebサイトや技術検索サイトにソーシャルメディア)やメールなど、オンラインの上の様々なチャネルを活用するようになってきています。多くのチャネルで様々な施策が同時に動いており、そこには無数のコンテンツやドキュメントで溢れています。その中で何が最も効果的な施策なのか、どのコンテンツ/ドキュメントを使えばいいのかを人の手で処理しきれなくなったために、システムで総合的かつ自動的に管理せざるを得なくなってきた。これが、特に購買のWeb化が進んでいる欧米でセールスイネーブルメントが普及している背景なのだと考えています。
このように、「実務上の必然性から生まれてきたシステム」だ、ということがセールスイネーブルメントについて考える上で非常に大切なことなのです。
「セールスイネーブルメント」というキーワードでシステム販売が盛んな米国
日本ではまだ発展途上でプレーヤーも少ないセールスイネーブルメント市場ですが、米国では数多くのセールスイネーブルメント・システムが販売されており、バブルのような様相を呈しています。新しいコンセプトが生まれると、それに合わせたシステムが雨後の筍のように出てくるというとても米国らしい状況になっていると言えるでしょう。
そこで、まず米国におけるセールスイネーブルメント・システムの種類と、代表的なシステムについて見てみることにします。
2つに分類できる「セールスイネーブルメント・システム」
上で見たように本来のセールスイネーブルメントの目的は様々な営業施策のパフォーマンス管理なのですが、営業施策の中にはパフォーマンス管理をしやすいものと、そうでないものがあります。例えば、メールマガジンやHP上のコンテンツやホワイトペーパー(ダウンロード用資料)などのWeb/メール周りや、社内ファイルサーバー上の提案書やカタログなどは追跡管理しやすく、パフォーマンスも測定しやすい施策です。かたや営業研修などは、そこで学んだことが普段の営業活動にどう発揮されるのかというつながりが曖昧になりやすいため、パフォーマンス管理がしにくい営業施策と言えるでしょう。
そのため、既存のセールスイネーブルメント・システムを大きく分けると、
「メールやコンテンツマーケティングなどのWebマーケティングを中心とするコンテンツ管理系」
「提案書やカタログなどの営業資料を中心とするドキュメント管理系」
の2つに大別することができます。もちろん、これ以外の系統のシステムもありますし、互いの機能をカバーしているシステムも多いので、キレイに2つに分かれるわけではありません。とはいえ、各社はこの中から自分たちの営業に合ったシステムを選んで/組み合わせて使用する、ということになります。
セールスイネーブルメント市場をリードしているシステムいろいろ
それでは、米国ではどのようなセールスイネーブルメント・システムが普及しているのでしょう、主観的な評価で恐縮ですが、様々な記事に取り上げられ、大企業でも導入が進んでいるシステムをいくつかピックアップしてみました。
コンテンツ管理系でよく話題に上るのが、Pitcher、Highspot、Guruの3つです。それぞれ、ドキュメント管理系の機能もありますが、コンテンツの管理やトラッキング、予測分析やコンテンツの自動作成など、コンテンツ系の機能が充実しているのが特徴です。
ドキュメント管理系で有名なのはSeismicやOctivなどです。ファイルのバージョン管理や、顧客の特性や購買プロセスから見た最適なドキュメントの推奨など、ドキュメント周りの機能が充実しています。10月25日のセミナーで簡単に利用イメージを紹介したBigtincan Hubも、このドキュメント管理系のセールスイネーブルメント・システムの1つです。
この2つの分類に当てはまらないのですが、存在感のあるシステムにClearSlideというものがあります。これは、コンテンツ系の機能もドキュメント系の機能も持っていますが、最大の特長がWeb会議システムを中心としたものだというところにあります。
このように多種多様なシステムが、それぞれの特色を持ちながら市場に広がっているのが、現在の米国のセールスイネーブルメント市場の実態であると言えるでしょう。
次回は成功事例と取り組む上での大事な考え方を紹介します
今回のトライツブログでは、今話題のセールスイネーブルメントについて、米国での普及内容をもとにそのおおよその分類と代表的なシステムをご紹介しました。
次回は、セールスイネーブルメントの成功事例と、日本のB2B企業が取り組むにあたっての大事な考え方をご紹介いたします。どうぞ次回もご期待ください。
トライツコンサルティングではセールスイネーブルメント組織の立上、セールスイネーブルメントの考え方を用いた営業改革の取組をご支援しています。具体的な事例を知りたいという方、取組の進め方を相談したいという方は、下記よりお気軽にお問合せください。