トライツコンサルティング株式会社

御社は営業「を」売れますか?日本におけるソーシャルセリングの課題

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アメリカでは「B2B企業の購買担当者の75%が購買の際にソーシャルメディアの情報を活用している」(International Data Corporation社調べ)というデータがあるように、B2B営業でのソーシャルメディア活用が浸透しています。このようにFacebookやLinkedInのようなソーシャルメディアで情報発信することで商談を発掘したり、顧客の購買プロセスを前に進めたりすることを「ソーシャルセリング」と言います。

日本でもこのソーシャルセリングの導入を検討している、という話を耳にするようになりましたし、「うちの会社でソーシャルセリングをやっても上手くいかないように思うが、どうしたらいいだろうか」などと言われることもあります。

そこで今回のトライツブログでは多くの日本企業でソーシャルセリングが上手くいかない2つの理由から、会社として取り組んでいくべき重要な問題を探ってみたいと思います。

ソーシャルセリングが上手くいかない理由1:情報開示ができない

第一の理由は、ソーシャルセリングを成功させるために必要な情報開示ができないということです。

例えば、海外のコンサルタントがFacebookなどに投稿しているものを見ると、「今日はプロジェクトのキックオフです」という文章とともに、一目でどこの会社か分かるような本社の写真が載っていたりします。しかし、私も含めて日本のコンサルタントは、クライアント名が分からないよう気を遣って投稿していることが多いようです。

コンサルタントを探している人の立場で考えると、日本の多くのコンサルタントによるソーシャルメディアへの投稿は、情報としてあまり価値がないものが多いでしょう。一方、海外のコンサルタントが投稿しているような、具体的なクライアント名やプロジェクトのテーマなどが分かる投稿は、買い手にとって有効な参考情報になりえます。

もちろん顧客の内情をソーシャルメディア上に書き連ねることは、守秘義務違反となりますのでやってはいけません。しかし、どんなクライアントにざっくりとどんなサービスを提供したのかという程度であれば守秘義務違反とはならないものの、多くの日本企業・日本のビジネスマンは契約で定めていること以上に情報開示を強く自制しているように見えます。

クライアント名や取り組んでいる仕事の内容などをオープンかつ積極的に情報開示しようとするのか、それを好ましくないものとして情報を制限しようとするのか、ここがソーシャルセリングの導入および成功において、大きな岐路になっているのだと思いますが、日本の企業の多くが後者の判断をしているのです。

だからソーシャルメディアを使っていい仕事実績をPRしようとしても、具体的な顧客名が出せないと説得力がないということになってしまいます。

ソーシャルセリングが上手くいかない理由2:魅力あるキャリア形成ができていない

もう一つの理由は、売り手側が魅力的なキャリア形成ができていないということです。

LinkedInのようなソーシャルメディアには「電子職務経歴書」という一面があります。そのため、買い手はその人がどのようなキャリアを積んできたのか、どんな仕事をしてきたのかを見て、「信頼できるか」「取引をしても大丈夫そうか」を判断しています。つまり、ソーシャルセリングでの売りものの大事な一部に、売り手個人の専門性や信頼感というものがあるのです。

しかし、日本のビジネスマンのキャリア形成は「売れるキャリアづくり」というものが考慮されていないように思います。それは企業としてだけでなく、各個人においても「自分で自分のキャリアを作り上げていく」という意識が薄いのです。例えば大企業の営業組織に接していると、解せない人事異動というものをよく目にします。営業企画として経験を積んできたのに急に内部事務をやることになったり、今までの経験がまったく活かせない関連会社に出向したりと、「人事はこの人にどういうキャリアを築かせようと考えているのだろう」と考えてしまいます。

従って、せっかくインターネットで広く個人を売れるようになったにも関わらず、魅力的にPRできるキャリア形成ができていないというそもそもの問題があるのです。

「売れる人づくり」という視点から自社のことを考えてみよう

営業のテクニック本などに「営業とは自分を売ること」などと書いてありますし、以前から営業担当者は目の前の顧客に自分を売ることは心がけてきたでしょう。ソーシャルセリングとは、それをインターネットで多くの人に効率的にできるようになったということなのです。

アメリカでのソーシャルセリングの台頭と隆盛。それは、単に購買活動がWeb化しているということでなく、信頼できる専門家/プロから商品・サービスを買いたい、という買い手の要望を実現できるようになったということでもあるのだと思います。そして、この要望はきっと日本においても同じことでしょう。それに応える手段がソーシャルセリングであろうとなかろうと、営業担当者には自分を「○○のプロ」「○○という経験を積んだ人」として魅力的に情報発信することが求められているのではないでしょうか。

しかし、日本で実際にやってみようとすると「そんな情報を出すべきではない」とブレーキを掛けられる。また、自分で自分のキャリア形成をしようとしても、会社都合でキャリアを分断するような人事異動を強いられたりして自分の意思でキャリアをつくっていくことができなかったりするのです。

今、若い人を中心にInstagramが流行っています。これは画像の持つ「インパクト」「わかりやすさ」を活用したSNSですが、注目されるためには「インスタ映え」などと呼ばれるようなInstagramで見られることを意識した画像を撮る必要があります。
これと同じように、ソーシャルセリングで成果を上げるためには「SNS映え」するわかりやすい実績やキャリアが必要なのです。いぶし銀の良さで長年の付き合いで伝わる…というのではソーシャルセリングには合わないので、意図して作っていく必要があるということです。

これからパターン化できる営業活動については、どんどんシステムに移行されていくはずです。そんな中で、営業担当者がいるからこその付加価値が求められるようになるでしょう。しかもそれがわかりやすく、伝わりやすいものでなけれなばならない。これは営業担当者の「人づくり」を大きく見直さなければならないことを意味すると思います。

自社はソーシャルセリングができるか?という視点だけで考えるのではなく、これからの「人を売れる環境づくり」「売れる人づくり」というところから、改めて考えてみるのはいかがでしょうか。

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