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あるB2Bの大手企業から「営業マニュアル作成」という仕事を依頼されています。その企業は「営業に強い」というイメージの強い会社で、実際に具体的なノウハウが豊富です。かつそれらは環境変化に合わせて進化しています。
それを一冊の営業マニュアルにまとめるだけでなく、毎年バージョンアップを重ねています。
一般的にB2B企業には「必要ない」「合わない」という営業マニュアル否定派が多いのですが、この企業は営業マニュアルを使って継続的な業績拡大に成功しています。そこにはどんな秘訣があるのでしょうか?
今週のトライツブログでは営業マニュアルに焦点を当てて考えてみたいと思います。
現場に根強い営業マニュアル否定論
マニュアルというと、ファーストフードの店頭での対応を思い出す方が多いようです。そして、「ウチの営業はあんなパターン化されたマニュアル対応でできるものではない」と否定されます。
「マニュアル=人の活動を型にはめるもの」というイメージがあり、臨機応変に顧客対応する自社の営業の価値を否定するものであると考える方が多いようです。
確かに一人で来てハンバーガーを10個購入する顧客に「店内でお召し上がりですか?」と尋ねるようなことをしたら、B2Bなら一発で客先から追い返されそうです。
しかし、実際に営業マニュアルを有効に活用し、成果を上げている企業のそれを見てみると、ファーストフードのマニュアルのように「こういう時はこうしろ」と業務手順が細かく規定されているものでないのです。むしろ大切な考え方とか、営業のコンセプトがわかりやすく解説されたその企業オリジナルの「営業のバイブル」のようなものが多いように思います。
そんな営業マニュアルであっても、先程の営業マニュアル否定派の方に見ていただくと、「新人の教育には有効だと思うが、ベテランは十分にわかっていることなので、自社には不要」という意見が返ってきます。とにかく「自社には営業マニュアルは合わない、必要ない」という考え方が根強いのです。
営業ツールは現場で勝手に丸くなっていく
ちなみに皆さんの営業現場で毎日のように客先で使っている提案書や、ミーティングや上司への報告のためのExcelのシートなど、いろいろな営業ツールが存在するでしょう。そのツールには大きく2つの狙いを持たせることができます。
一つは営業が「やりたいことがやれるように支援する」ということです。わかりやすい商品説明ツールがあれば、口頭で説明するよりもわかりやすくすることができますし、よく出来たマネジメントツールは報告時間を短縮できます。この狙いだけであれば、わざわざそのツールの活用方法を示した営業マニュアルを作らなくても、「自分のやりたいように使ってくれればいい」でOKでしょう。
そしてもう一つは、「営業活動を正しい方向に導く」ということです。例えばついつい相手の話を聞かず、一方的に売り込んでしまう営業担当者に、まずヒアリングシートを使ったヒアリングを義務付けることで、最初に顧客の話を聞くように「矯正」ができるわけです。
ただし、こちらは営業にとっては当初、違和感のある尖った「意図」になります。従って、誰かがその「意図」を伝え続けなければなりません。それが不十分だと、いつの間にか現場で「やりたいことがやりやすいようにカスタマイズ」され、尖った部分がなくなって、丸くなってしまいます。
また、新人が入ってきた時に、しっかり意図を伝えずに「とにかくこれを使ってヤレ」と指示してしまったりしても、「やれることだけやる」という運用になり、益々そのツールは丸くなってしまうでしょう。
このようなことにならないためには、「意図」を誰にでもわかりやすくまとめ、説明できるようにしておく必要があります。その役割を担うのが営業マニュアルとなるわけです。
営業力のある会社の営業マニュアルは読むだけで面白い
冒頭にご紹介した営業マニュアルを上手く活用している企業では、現場の工夫をキャッチアップするだけでなく、本社から「もっとこうして欲しい」という「意図」を反映させるカタチで、年に1回の更新につなげています。
それは、営業の行動を決められた型にはめるという考えよりも、より良い営業活動をするために、しっかりとマネジメント側の考える「あるべき営業」を伝えたいという気持ちの現れのように思います。
しかもそれを社内だけでまとめるのでなく、いろいろな業種・業態の営業を知っている我々のような外部戦力を使って行うことで、より良い、よりわかりやすいものを効率的に作ろうと考えておられるようです。
それだけこだわりの詰まった営業マニュアルなので、じっくり読むとそれだけでとても興味深く、その営業を「やってみたい」と思うような内容になっています。
現場にしてみると、現在の自分の工夫がもしかすると来年のマニュアルに反映されるかもしれないという期待もありますし、皆で作り上げてきたものであるという気持ちもあるようです。また、毎年どんどん更新されるので、取り残されないようにしっかり中身を理解しなければならないと認識されており、営業マニュアルが現場と本社をつなぐコミュニケーション・ツールとしての役割を果たしているのです。
今一度、営業マニュアルの価値を考えてみる
さて、皆さんの会社では、そもそも営業に対して「伝えたい」「わかってほしい」と思うことが具体化されているでしょうか。
営業マニュアル否定派の話を伺っていると、「状況に合わせて上手く料理する」のが営業の腕の見せ所であり、それに必要なスキルとモチベーションを各個人が持てれば良いと大きく捉えているだけのことが多く、それ以上の深掘りがなされていないように思います。
これは言い換えると営業マニュアルにしてまで伝えたいことがないと言えるでしょう。
その状態のままで時間とお金を掛けて営業マニュアルとしてまとめても、一般論に毛の生えたようにしかならず。確かに新人教育にしか使えないように思います。
しかし・・・例えば、「自社の営業が顧客に提供する価値」を簡潔に定義してみるとどうなるでしょうか。それだけでいろいろな議論があるはずです。そのようなそもそも論からしっかり議論し、読むだけでわかる1冊の自社の「営業のバイブル」としてまとめることを行えば、それがその企業の「営業の基本」になますし、何が強みで、何を強化しなければならないかも明確になると思います。
また、SFA導入や研修などの施策も位置付けがはっきりしますし、人事評価にも活用できるというメリットも出てくるでしょう。
今、やっていることをまとめるのではなく、これからやっていきたいことを作り上げていくインフラとして営業マニュアルを位置づけるのです。
頭ごなしに否定したり、決めつけるのではなく、今一度、営業マニュアルの価値や必要性について考えてみてはいかがでしょうか。
この記事でご紹介したように、営業マニュアルはその設計と運用に一本筋を通すことで非常に強力な営業の現場力強化ツールとなります。「形骸化している営業マニュアルを作り直したい」「これからの営業に合わせて新しく設計したい」という方は、いつでもお気軽にご相談ください。