トライツコンサルティング株式会社

段取り力欠乏症 -その発病及び傾向と対策に関する一考察-

Demoralized businessman looking at his laptop

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「段取り八分」という言葉があるように、前もって計画を立て、自ら準備をおこない、必要な他者にも話を通しておく「段取り」は、仕事をする上で当たり前に必要なスキルです。皆さんも新入社員のころに「段取りが命」と耳にタコができるくらい指導されてきたのではないでしょうか。

今回のトライツブログでは、B2B営業における「段取り力」について考えてみたいと思います。

営業担当者は実は「段取り」のスペシャリストだ!

仕事を段取りするスキル「段取り力」は、B2B営業においても非常に重要です。営業担当者が当たり前にやっていることをよく見てみると、いろいろな段取りの組み合わせになっているものです。
少し列挙してみるだけで
✓提案の内容を一定の商談期間の中で選定・企画・設計する段取り
✓提案する商品・サービスを決められた納入時期までに手配・構築・製作する段取り
✓顧客の購買プロセスに沿って稟議・予算化・発注を後押しする段取り
✓自社・自部署の予算達成のために受注・売上の時期と規模を調整する段取り
と、1つの商談だけでもたくさんの段取りを立てて、それを進めていることが分かります。いわば、営業担当者は段取りのスペシャリストでなければならないのです。

とはいえ、段取り力が高い人もそうでない人もいるのは世の常。「この人に任せておけば大丈夫」という人もいれば、「あの人は一生懸命なのだけど、どうもバタバタしてスケジュール通りに進まない」という方もいるようです。

このB2B営業における段取り力問題について考えてみると、どうも2つのパターンがあるように思われます。

段取り力問題その1:視界不良型段取り力欠乏症

1つ目のパターンを名付けるなら、「視界不良型段取り力欠乏症」。これは、自分の仕事の全体像がよく見えていないために、次から次へとやらなくてはいけないことが押し寄せてきたり、抜け漏れが発生したりして、スケジュールがパツパツになってしまうタイプです。若手や新しく営業部門に来られた方に見られることが多いように思われます。

このタイプはよく見られますが、その仕事を習熟していくにつれて快方に向かっていきますので、長引くことはそれほど多くありません。新人が3年目、4年目になっていくにつれて仕事の安定感が出てくるように、経験を積むことで段取り力をつけていくことでしょう。

段取り力問題その2:相手任せ型段取り力欠乏症

しかし、仕事に慣れていくと2つ目のパターンに陥ることがあります。それは「相手任せ型段取り力欠乏症」とでも言うもので、顧客や社内の誰かに仕事をお願いしているときに相手に任せっぱなしになってしまうのです。結果、相手がわで作業の遅れが発生するなどして、段取り通りに進められなくなってしまう。これは本人には自覚がなく、うまく進まないのは相手のせいだと思っているので、1つ目のパターンよりも治すのが難しいように思います。

この「相手任せ型」に罹っているかどうかを判別する良いキーフレーズがあります。それは「今は向こうにボールがあり、連絡待ちです」というもの。営業会議や社内の打合せで商談の進捗について話をしているときにこのキーフレーズが出てきたら、高い確率で2つ目のパターンに罹ってしまっていると考えてよいでしょう。

ボールを出す相手は敵ではなく仲間だ!

トライツとして現場に関わっていると、この「相手任せ型」に罹っている人を見ることがあります。そのようなときに話をするのは、「初心者がやるバレーボールみたいに、ボールが相手のコートにある間は何もしないでただボーッと待ってるだけにしないで」ということです。

仕事を「ボール」でたとえると、敵味方の区別のある球技でイメージしてしまいがちです。しかし、相手を敵と捉えるのではなく、むしろ同じチームの仲間だと捉えることが必要なのだと思うのです。例えばサッカーやラグビーのようにポジションが分かれている団体の球技だと捉えてみてはどうでしょう。サッカーで仲間がボールを持っていて相手に囲まれてしまったら、ポジションは違っていてもパスをもらいに行くことでしょう。ラグビーで仲間がボールごと密集に巻き込まれてしまったら、自分が別のポジションであってもその密集の中に入りボールを取りに行くことでしょう。

同じように、味方に仕事というボールを渡したら、ちゃんと前に進めているか、敵に囲まれるなど苦境に陥っていないかを注意深く見守り、必要があれば手助けしにいく、というようにイメージしておくことが必要なのではないでしょうか。

「相手任せ型」を治すには営業担当者の意識改革が必要

このように「相手任せ型」に罹ってしまっている場合は、単純にタスク管理のツールを導入するだけでは解決しません。仕事の段取りについてその人が持っているイメージや考え方から変えてもらわなくてはいけないのです。

そのため、トライツとして「相手任せ型」に罹っている営業担当者がいる部署を支援する場合は、そのような意識改革につながるような手を打ちます。例えば、営業部署の中で実施されているミーティングの中で少し時間をもらって「B2B営業に必要な段取り力」といった内容で話をする場を設けたりしています。また、それ以外の策を考えた事例もありますので、手短にご紹介します。

事例:マネージャーの段取り力アップで予算達成を加速!

広告サービス業を営んでいるある会社では売上数字が期の終盤にならないと上がってこない、ということに悩んでいました。現場には営業力のある営業担当者が多いのですが、どうも期の初めのころはエンジンがかからず、追い込み型で数字を作る傾向がありました。それに対し、営業計画と実践の段取り力を高めようということで、営業企画部が段取り強化型営業活動を進めるための簡単な営業マニュアルを作成しました。そして、それを全国の営業マネージャーのところに出向いてこんこんと説いていき、予算見込を立て、顧客の広告計画をヒアリングし、他社に先んじて企画提案を出すという営業活動を早期に実践させるようにしたのです。

その結果、それまでは社内で「駆け込み乗車型」と呼ばれる程、期末ギリギリに間に合わせる形の予算達成が多かったのですが、その期に入る前に予算の8割程度が達成しているという状況を作ることができました。段取り力を高めることで予算達成のスピードアップを実現できた好例だと言えるでしょう。

段取り力不足がブレーキになっていませんか?

どれだけ良い商品・サービスを取り扱っていても、どれだけ専門知識に秀でた営業担当者や技術スタッフがいても、段取りが良くなくてはなかなか成果につながりません。「どうも成果が出るのが遅い」「成果の出方にムラがある」と思われたら、段取り力という観点で自社の営業を見直してみてはいかがでしょうか。
いつでもトライツコンサルティングにご相談ください。

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