トライツコンサルティング株式会社

AIが営業の指南役になる?広がる電話セールスとAI活用の未来

businessman is picking up the phone in office

この記事を読むのに必要な時間は約 9 分です。

皆さんは電話セールスについてどんなイメージをお持ちでしょうか。
「新規開拓のアポ取りで、若いころにやって大変だった」
「話を聞いてくれなかったり、忙しいからと怒られたり、つらいことが多かった」
などと、良くないイメージを持っている方も多いかもしれません。

しかし、アメリカではその電話セールスが、今話題のAI(人工知能)によって進化しているようなのです。

今回のトライツブログでは、B2B営業の電話セールスに対するAIの活用の仕方とその将来像について考えてみたいと思います。

調査結果:B2B営業での顧客との会話分析

アメリカのカリフォルニア州にあるB2B営業向けシステム会社であるGong社は、AIを使った営業支援ツールを開発・提供しています。最近、このGong社が興味深いレポートを発表しましたので、簡単にご紹介します。

そのレポートは、7つのB2B企業の営業担当者とその顧客との25,537件もの商談(すべて電話での会話)を分析した結果、受注につながりやすい会話のポイントが見えてきた、というものです。お時間がある方は、ぜひオリジナル(A Sales Conversation Research Project)をお読みいただきたいのですが、ここではエッセンスのみをかいつまんでご紹介します。

ポイント1:売れる営業担当者は「話す」よりも「聞く」時間が長い
今回の調査によると、平均的な営業担当者は65~75%の時間を使ってしゃべり、25~35%の時間で相手の話を聞いていました。しかし、トップ営業担当者の場合はその割合が逆転し、自分が話す時間は43%だけで、残りの57%を顧客の話を聞くことに使っていました。

ポイント2:うまくいく商談では価格の話は3~4回がベスト
会話の中で価格の話が出た回数を数えたところ、その回数と受注確率との間に相関関係が見られました。価格の話が0~3回までの場合だと正の相関、つまり回数が増えるほど受注確率は高くなり、4回以上になると負の相関、つまり回数が増えるほど受注確率は低くなっていました。結果、3~4回がベストだという結果が出たそうです。

ポイント3:受注タイミングを予測するキーワードは「probably(たぶん、だいたい)」
商談の受注タイミングをもっとも正確に予測できる顧客の発言を調べたところ、もっとも正確に予測できるキーワードは「probably」で、なんと73%の精度で受注タイミングを予想できました。反対に、割合が低くなるマイナスのキーワードは「We need to figure out ○○(○○をどうにかしないと)」でした。

ポイント4:受注確率を高めるキーワードは「いつでもキャンセルできますよ」
これまで「顧客のリスクを下げる言葉」には商談の受注確率を高める効果があると言われていました。例えば、「返金保証あります」「いつでも退会できますよ」「長期間の契約ではありませんよ」など。それらの中で最も確率が高かったキーワードは「You can cancel at any time(いつでもキャンセルできますよ)」でした。

営業ノウハウは経験だけでなくAIでも見つけ出せる?

この結果をお読みになって「何が興味深いのか?そんなの当たり前のことじゃないか!」と思われる方も大勢いらっしゃると思います。ポイント1の「顧客の話を聞くのが大事」というのは色々なところで耳にしますし、ポイント2の「価格について話す回数」も、回数が多いと言うことは顧客が難色を示しているからでしょうから、受注確率が下がるのは当たり前です。ポイント3や4についても、さもありなんと思える結論でしかありません。

このレポートを興味深いと思った理由は、レポートの中身ではありません。この分析をしたのが、Gong社が持っているAIだということです。その結果、これまでトップ営業担当者が経験を積み重ねながら身に付けてきたようなノウハウを、AIが大量のデータを解析することで見つけ出してしまったのです。

実は相性が良い「電話セールス」と「AI」

そして、このようなことができた理由として、アメリカのB2B営業において電話セールスが増えてきている、というものもあります。10年前、20年前のアメリカ発の営業ビジネス本といえば「世界で一番○○(保険や車など)を売った営業担当者」などという触れ込みで、訪問販売を前提とするものがほとんどでした。しかし最近では、アメリカのB2B営業に関する調査記事を調べると、電話セールスについての記事が顕著に増えてきています。

さらに、この電話セールスは「営業担当者が話したこと」と「顧客が話したこと」を細大漏らさず記録・保存できるため、AIによる分析にうってつけなのです。訪問営業の場合は、「営業担当者が話したこと」「顧客が話したこと」だけでなく、両者がどのように振る舞ったかまで記録する必要がありますが、その場でビデオカメラを持ち込むわけにもいきませんし、商談後に営業担当者が記憶を頼りに商談の会話を再現してSFAに入力するのも大変です。

このように考えると、簡単かつ自然に商談時の会話をすべて記録でき、かつテキスト情報に変換しやすい電話セールスだからこそ、今回のような分析ができたのだと言えるのではないでしょうか。

「電話セールス×AI」は今後どうなる?

それでは、今後この「電話セールス×AI」はどのようになっていくのでしょうか。それには、大きく2つの変化があるように思われます。

1つ目の変化は「AIによる電話セールスの洗練化」です。AIが進化しよりスピーディに分析できるようになると、最終的には顧客と電話で話しているリアルタイムでのフィードバックやナビゲーションが可能になるでしょう。顧客と話しているのをAIが分析し、「話しすぎだから、もっと話を聞け」「『○○』というキーワードを伝えろ」などとその場でナビゲーションしてくれる。それはまるで優秀な営業コーチがそばについてくれている状態で商談しているようなもの。AIを活用することで、電話セールスの質は飛躍的に洗練されていくことでしょう。

そして、1つ目の変化によって引き起こされると思われるのが「顧客による営業の選択」です。適切かつ気持ちのよい話をしてくれる「AIを使った電話セールス」での体験に慣れていくことで、「よく分かっていない営業担当者と対面で話すよりも、電話セールスの方がいいや」と、顧客が営業のやり方や営業担当者を選ぶようになる可能性があります。そのようになると、商品知識や業界知識が豊富だったり、顧客が心地よく感じる商談ができたりする対面型の営業担当者は生き残っていけるでしょうが、そうでない対面型の営業担当者は電話セールスに置き換えられてしまうかもしれません。

今後広まる可能性ある「電話セールス×AI」は要チェック!

これまで日本のB2B営業の中で、電話セールスは新規開拓のためのテレアポというイメージが強かったりして、企業によってはメジャーな営業手法ではなかったかもしれません。しかし、インターネット環境が整い、B2Cでのオンラインショッピングが当たり前のものとなってきた現在、B2Bでも電話セールスを取り入れている企業が増えつつあります。また、テレワークや在宅勤務などのような、政府が提唱している「働き方改革」という追い風もあり、今後さらに広まっていく可能性があります。

今後伸びる可能性のある「電話セールス」と、さまざまな分野に適用されてきている「AI」。その組み合わせはもしかしたらB2B営業の姿を大きく変えるものになるかもしれません。「電話セールス×AI」の動向について、これからもウォッチしていきたいと思います。

以前からある新規開拓に、広がりを見せつつあるインサイド・セールスなど、今でもB2B営業には電話セールスが欠かせません。トライツコンサルティングでは、営業プロセスの設計と併せて電話セールスのスクリプトづくりにも取り組んでいます。「電話セールスをもっと効率的にしたい」「インサイド・セールスに取り組みたい」という方は、お気軽にお問合せ下さい。

モバイルバージョンを終了