トライツコンサルティング株式会社

リモート時代に合わせて「提案」をアップデートしよう!

Hand holding megaphone - Time to update

この記事を読むのに必要な時間は約 10 分です。

このトライツブログでたびたびお伝えしてきたように、コロナ禍によってビジネスのあり方に変化が起き、営業の仕事の進め方も変化しています。読者の皆さまも日々実感されていることと思います。

この変化によって、過去のブログの中には現状に合わないものが出てきています。そこで今回は、アフターコロナ・ウイズコロナの現在に合わせて、過去のブログをアップデートしてお届けします。

元々、このブログのタイトルは「メタボな提案書にはご用心!顧客との関係づくりと提案書ダイエット」というもので、ある企業の事例にもとづいてボリューム過多な提案書をダイエットする方法について紹介していました。このブログをベースにリモート時代の提案について改めて考えたいと思います。

A社の事例:うまい提案書=分厚い提案書?

つい先日、ある営業マネージャーから提案についての相談を受けました。

これまで取引のない大手企業(以下、X社)の開発担当者から、その営業マネージャーの会社(以下、A社)に1本の電話が入ったそうです。話を聞くと、A社が最近発売した新製品に興味があるので提案を出してほしいとのこと。この電話の対応をしたA社の若手営業担当者は、営業マネージャーに報告・相談してから3種類にパターン分けされた大作の提案書を作り上げました。提案書は製品の技術データから始まり、関連する市場の統計情報や競合他社との比較など、新製品に関する情報がパンパンに詰め込まれています。

この提案書を見た営業マネージャーから「X社は新規だが将来が期待できる企業。今回は大事な商談になるので2週間後のプレゼンに向けてより良い提案書にしてほしい」と連絡もらい、営業マネージャーと若手営業担当者と一緒にX社向け提案書づくりの打合せを行うことになったのです。

その打合せの冒頭で、最初に若手営業担当者から商談の経緯と作った提案書についての説明をしてもらったところ、「説得」という言葉が頻繁に出てきます。そこが気になったのでA社にとっての「良い提案書」とはどういったものなのか聞いてみたところ、

「顧客にとって二度手間にならないよう、知りたい情報が揃っていること」
「顧客の情報が不十分な時は、様々な仮説を考えてパターン分けされていること」
「今回の提案書は、この2点を意識して作った」

と、営業担当者は答えてくれました。

つまり「情報の漏れがないよう十分な情報を盛り込み、顧客の要望を想定してできる限り多くのパターンを用意するのが大事だ」というのです。これまで取引のないX社からの依頼ですから、「念のため」「せっかくだから」と添付資料も沢山付いている典型的な「提案書メタボ」になっていたのです。

コロナ以前の対策:独りよがりは避け、顧客との仲間意識が生まれる提案書へ

この事例に対して、以前のブログではこのような対策を紹介しました。

提案書メタボの最大の問題は、「顧客が理解しようとする気を無くす」ことなのでダイエットが必要。しかし、提案する側の独りよがりで減らしてしまうと、「やっぱり入れておけば良かった」という失敗が起きます。

そこで、A社では提案書には一切手を加えず、提案の際にステープラで留めていないバラバラの提案書を一組持参してもらい、説明の後「この後、〇〇様が社内でご説明される際、どのような順番でお話しになりますか?その順番に並び替えますので教えてください」と言って、バラバラの提案書を並べて顧客に選んでもらいました。すると「これとこれはまとめて」とか「ここはいらない」というリクエストをもらうことができ、商談を前に進めることができました。

商談には必ずと言ってよいほど「提案する側」と「提案される側」という2つの役割が存在し、往々にして対立関係に陥ってしまいます。しかし、バラバラの提案書を机に広げて話し合うと「社内をどう説得するか」を一緒に考える「仲間」になれるはず。もし、顧客が一緒に考えることに乗り気でないなら、そもそもその相手は買う気がないと判断もできるのです。

このように、顧客が理解する気をなくすメタボな提案書はダイエットが必要です。それも提案する側の独りよがりではなく、顧客と一緒に考えてダイエットしていくことは大事なことで、今でも変わりません。

しかし、リモート時代の現在、この事例の根本的なところに変化が起きているのです。

リモート時代の営業コミュニケーションは「小さく刻め」

事例の中のA社の営業マネージャーの発言に注目してください。それは「2週間後のプレゼン」という発言です。もうこの時点でリモート時代の営業に合っていないのです。

リモート時代の営業コミュニケーションのポイントは「小さく刻むこと」。移動時間がかからず、会議室の制限を受けることもなく、様々な関係者が気軽に参加できるといったリモートの良さを活かして、短時間の面談を頻度多く行い、顧客とのトータルの接触時間を増やすというコミュニケーションが向いています。じっくり課題を聞いた上で何日もかけて提案書をつくり、まとまった時間をもらってしっかりとしたプレゼンをする、という従来のやり方は合わなくなっているのです。

さらに言うと、対面であれば席を立つわけにいかないので分厚い提案書を説明しても聞いてもらえました。また、相手の反応もわかるので「飽きてきたな」と感じたら臨機応変にページを飛ばすといった技も使えたのです。しかし、リモートでは相手の行動を制限できないため興味が湧かないと、顧客はカメラを切って違うことをし始めます。また、相手の表情やニュアンスが分かりづらく、臨機応変な対応も難しいのです。

リモート時代の対策:プレゼンに向けて顧客との「ハドルミーティング」を提案せよ

ハドルミーティングとは「必要に応じて開催する10分~30分程度の短時間のミーティング」で、元々はアメリカンフットボールの試合中に行われる選手たちの作戦会議を指す言葉であったものをビジネスに取り入れたものです。プレゼンに向けて、これを顧客に提案するのです。

まず、1本の提案依頼の電話では顧客の課題・要望の全容はわかりません。そのような情報不足の中で顧客にピッタリの提案になるように仮説という名の妄想を膨らますので提案書がメタボになってしまいます。これへの対策は非常にシンプルで「顧客に聞く」以外ありません。そこで、リモートの利点を活かし「プレゼンに向けて目的を絞った短時間のインタビュー」を行うハドルミーティングの実施を顧客に提案するのです。

1回につき20分程度を目安に、1週間に2回ぐらいなら受け入れてくれるでしょう。もし受け入れてくれない場合は、そもそも相手は本気でないと判断することもできます。

このハドルミーティングを重ねることには顧客を理解できること以外にもメリットがあります。それは接点を多く持つことで顧客との関係を深めることができるというメリットです。提案依頼の電話を受けて2週間後に初めて会う顧客に分厚い提案書の説明をすることから考えれば、その差は歴然です。リモートの利点を活かして一石二鳥のハドルミーティングを提案しましょう。

リモート時代の提案書は「ワンペーパー&ワークシート」

それではリモート時代の提案書はどうあるべきでしょうか。従来のようなストーリー仕立てになった提案書は「小さく刻む」コミュニケーションや、インタビューを重ねながらつくり上げるやり方に向いていないので変えていく必要があります。

トライツは、リモート時代の提案書は「ワンペーパー化」「ワークシート化」するべきだと考えます。

短時間のミーティングに合わせて簡潔なワンシートで、顧客の課題・要望を書き込みながら完成させるワークシート形式の提案書です。

このワンペーパー・ワークシートのひな形をPowerPointで用意し、営業担当者は顧客に合わせてカスタマイズした上でミーティングの前に「事前に資料をお送りしておきます。次回の打合せよろしくお願いします」とメールを送るか、TeamsやZoomなどで顧客とグループを作って、そこにファイルを貼り付けるようにします。そして、テンポよくミーティングで話し合ったことを書き込んでいくと最終的にしっかりとした提案書ができあがる。そんなイメージです。こうすることで提案する側が一方的に作ったメタボな提案書よりも相手の理解度、共感度が高い提案書ができると同時に、顧客のモチベーションも高められ、商談の成功率も高まるのです。

今回は、事例をベースにリモート時代の提案について考えました。「ハドルミーティング」を重ねながら「ワンペーパー&ワークシート」の提案書を顧客と一緒につくり上げる方法はリモート時代だからこそできる提案です。リモート時代のメリット・デメリットを理解しながら営業コミュニケーションや提案に工夫を加えてみてはいかがでしょうか。

リモート時代に合った営業に変革したいとお考えならぜひトライツにご相談ください。

モバイルバージョンを終了