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あなたのまわりにも、「あの人、急に伸びたな」と感じる営業がいませんか。その差は本人の素質より、「定期的に振り返る相手がいるかどうか」かもしれません。
そんな仮説を裏づけるヒントが、営業コーチング専門のMySalesCoachが公開した「The State of Sales Coaching 2026」にありました。これはアメリカ市場を対象にした調査ですが、週次でコーチングを受けるチームの目標達成率は76%、月次だと56%、四半期に一度以下だと47%。頻度が高いチームほど成果も出やすい、という関係が見えてきます。
ところが、その週次の頻度で受けられている人は、わずか28%。41%にいたっては「ほぼ、あるいは全く受けていない」状態です。頻度を上げる余地は大きい——そう読めます。これは成果を上げたいと考える営業現場にとって朗報だと思います。
ただ、日本でこの数字をそのまま当てはめる前に、押さえておきたい前提があります。
アメリカでコーチングが回るのは、「受けて育った世代」がやっているから
アメリカでは昇進・昇格のスピードが速く、今のマネージャーの多くは、自分が若手だった頃に営業コーチングを受けています。良いコーチングも、残念ながら良くないコーチングも、一通り体験したうえでマネージャーになっているのです。
だから「コーチングとはこういうものだ」という肌感覚があり、自分が受けてきたものを下の世代に渡せます。先ほどの調査で、頻度に差はあれど多くの人がコーチングを「受けている」と答えられるのは、この土台があるからだと考えられます。
裏を返せば、この調査が映しているのは「コーチング文化がすでにある国の中での、頻度の話」。従って、同じ数字を日本でそのまま追いかけることはできないのです。
日本のマネージャーに足りないのは、「良いコーチングを受けた経験」
日本の場合、マネージャーの多くは、自分自身が営業コーチングを受けてきていません。コーチングに触れたのは管理職になってからの研修で——つまり「知識」としては知っているけれど、「体験」としては持っていないことがほとんどです。
良い問いを投げられて、自分の中の考えが整理されていく。あの感覚を一度も味わわないまま「さあ、メンバーをコーチングしてください」と言われても、手本がないものは再現のしようがありません。
ここに、日本固有の壁があります。頻度を上げること自体は正しいとしても、そもそも良いコーチングの手触りを知らないまま回数だけ増やすと、「やったかどうかの確認」が増えるだけで、中身は伴わないでしょう。
まずはマネージャー自身が「良いコーチング」の体験を
そこでまず必要なのは、マネージャー自身が「良いコーチングとはこういうものか」と体感する機会を、意図的に作ってあげることです。
いちばん身近なのは、上司が手本を見せること。マネージャーがメンバーに向き合うのと同じ温度で、上司もマネージャーに向き合い、良い問いを実際に投げ掛けてもらう。私たちトライツの実践支援でも、営業担当者だけでなくマネージャーにも商談の振り返りに同席いただき、「良い営業コーチングの手触り」をその場で体験してもらうことを大切にしています。
外部の力を借りる、社内の経験者とペアを組む、良いコーチングの場に同席する——やり方は組織の数だけあります。大事なのは、マネージャーを「知識」だけで現場に放り込まないことです。
「すでにある場」と「行動直後の10分」で、頻度を担保する
マネージャーがコーチングの本質を理解したら、次はいよいよ「頻度」を支える仕組みづくりです。
大事なのは、個人の気合いや頑張りに頼るのではなく、「新しい施策」を足さずに現場に無理なく組み込むことです。
- すでにある面談を活用する
おすすめは、すでに安定運用されているマネージャーと上司の定期面談などに、「メンバーへのコーチング状況」を議題として一行加えることです。これだけで、組織のサイクルとして頻度が守られます。ここで「今月やった?」と回数だけを確認するのではなく、「先週のAさんとの面談、どんな手応えだった?」と中身に踏み込むことが重要です。
- 「1回1時間」の思い込みを捨て、行動直後の「10分」を活用する
頻度を劇的に高めるもう一つの視点は、コーチングに対する「時間の概念」を変えることです。コーチング=「会議室を押さえて1時間じっくり話すもの」と思いがちですが、それではスケジュール調整の段階で頓挫します。 商談を終えた帰り道や、オンライン提案直後の5〜10分を活用した「マイクロコーチング」を取り入れてみてください。「今の商談、お客様の反応はどう見えた?」と、記憶が鮮明なうちにワンテーマで振り返ることで、マネージャーの負担を増やすことなく自然に頻度を高めることができます。
マネージャーも、メンバーも。組織全体で育む
「余裕があればやること」から「マネージャーの役割」へと位置づけを変え、上司がマネージャーに対してコーチングの手本を見せる。そうやって組織全体に「本質の理解」と「継続の仕組み」が浸透していけば、結果は必ずついてきます。
2026年現在、AIは準備や記録の時短を助けてくれますが、「人と人が向き合い、気づきを引き出す」というコーチングの本質そのものを代行することはできません。
日本の営業組織には、まだまだ計り知れない伸びしろがあります。本物の価値を知り、それをすでにある場や日常の隙間時間に埋め込んでいく。マネージャーもメンバーも、まずはそこから考えてみませんか。
