トライツコンサルティング株式会社

あなたの営業活動は「AIフレンドリー」か?新時代の営業がやるべき3つのこと

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2025年7月16日に東京国際フォーラムにてトライツコンサルティング・ビジネスセミナー「AI×営業戦略のリアル ~AI時代における営業の付加価値向上策とは~」を開催しました。当日会場にお越しいただいた方には、御礼申し上げます。 

そのセミナーの最後に記入いただいたアンケートの自由記述欄で、一番コメントの数が多かったのが「顧客もAIを使っていることを改めて強く認識した」というもの。営業としてAI活用に取り組むだけでなく、AIを活用して調査・分析している顧客に対していかに人間ならではの価値を提供するべきか、という大きなテーマに思いを巡らせた方が多かったのだと思います。 

そこで今回は、購買・調達におけるAI活用の最新トレンドをご紹介します。顧客はどれくらいAIを活用して購買活動をしているのか。どんなことにAIを使っているのか。そのような顧客の変化に対応するためにどうすればいいのか。ぜひ一緒に考えてみましょう。 

購買活動における生成AI活用はグローバルのトレンド 

「顧客もAIを使っている」としてセミナーでご紹介したデータの出典は、世界トップクラスの調査会社Forrester Research社が発表したレポート、「2024 Buyers’ Journey Survey」。この中に「90%の企業が購買活動の中で生成AIを活用している」というデータがあります。また、今年5月のATD 2025というカンファレンスでの同社のピーター・オストロウ氏の講演では、「最新のデータでは顧客企業の生成AI活用の割合は93%にまで高まっている」という発表もありました。 

このように、購買活動における生成AI活用はグローバルで待ったなしのトレンドになっているのです。 

購買担当者が使うAIツールの2分類 

それでは具体的にどのようなAIツールを使っているのか、「15 AI Procurement Tools You Should Know in 2025」(2025年に知っておくべき15のAI購買ツール)を見てみましょう。この記事では、購買活動でよく使われているAIツールとその活用法を紹介しています。 

記事で紹介されているツールを分類すると、ChatGPTなどのチャット形式で使う汎用的な生成AIツール(DeepSeek、Gemini、Claude、IBM Watsonxなど)と、AIを搭載した購買・調達専用業務ツールとに分かれます。 

このAI搭載型購買・調達専用業務ツールの代表格がSAP Ariba。最近は日本企業でも導入している組織が増えています。また、JaggaerやCoupa、Globality、Zycusなどの海外では有名な購買業務システムもリストの中に含まれています。また、Resilincはサプライチェーンのリスクマネジメント、Kira Systemsは契約書のリスク分析という、調達・購買業務の中でも特定領域に強みがあるツールも先ほどのリストの中に入っています。 

この2つの分類があるということはつまり、顧客のAI活用とは、ChatGPTなどのAIツールを使うだけでなく、Aribaのような普段使う業務ツールの中でAIによる機能をはっきりと意識しないまま使う、ということもありうるということ。「いつの間にかAIを使って購買していた」というのが普通な世界になりつつあるということなのです。 

汎用AIツールとAI搭載型購買・調達ツールができること 

ではこれらのAIツールを顧客はどのように使うのでしょうか。先ほどの記事から、ChatGPTとSAP Aribaの活用方法をそれぞれ見ていきましょう。 

1. ChatGPTのAI機能:
・発注書管理や請求書処理などの日常的なタスクの自動化 
・サプライヤーデータの分析によるベンダー選定と管理の改善 
・契約をレビューしてリスクを特定し、改善を提案する 
・価格設定と交渉戦略をサポートする市場洞察の提供 
・情報に基づいた意思決定のためのレポートとデータ要約の作成

2. SAP AribaのAI機能:
・過去の調達データを分析してコスト削減の候補を発見し、戦略的な調達の決定をサポートします。
・サプライヤー・データベースと市場動向を評価して、最適なサプライヤーを推奨します。 
・ユーザーを優先サプライヤーに誘導し、コンプライアンスの遵守とコスト最適化を実現します。 
・潜在的な混乱を軽減するために、サプライヤーと市場のリスクを特定して評価します。 
・契約書の草案を生成し、交渉をサポートし、潜在的なリスクを特定します。 
・請求書の処理と承認を合理化し、効率を高めてエラーを削減します。

ベンダーとサプライヤーという言葉が両方使われていますが、共通しているのは「購入する企業・ソリューションの調査・選定」と、「契約書のレビュー」。特に「購入する企業・ソリューションの調査・選定」は、Forrester Research社の調査でも顧客企業のAI活用用途のトップとして紹介されてもいました。まさに現在進行形で、顧客はAIにソリューションや企業を調べさせ、提案書を分析・評価させながら購買を進めているのです。 

2025年6月時点での日本のAI業務導入率は3~5割 

では、この購買活動でのAI活用というグローバルのトレンドは、日本にどのくらい浸透しつつあるのでしょうか。残念ながら日本企業の購買部門に閉じたデータはありませんが、類推を可能にする参考情報が最近発表されています。インディードリクルートパートナーズ社が日本とアメリカで実施した「AI活用に関する日米就業者調査」です。 

これによるとアメリカで生成AIが業務に導入されている割合は68.1%(営業)から93.0%(エンジニア)であるのに対し、日本では29.8%(営業)から47.6%(企画)と、およそ半分程度となっています。この数字を見てどう思われるでしょうか。 

もっとも懐疑的・保守的な見方をするならば、生成AIの業務への導入割合はパンデミック後のリモートワーク実施率のように、現在の3~5割程度で頭打ちとなりこれ以上は増えないとも考えられます。その場合は、自分たちの顧客や業界で導入が進まなければ現在のまま何もしなくてもよい、ということになります。 

日本でもAI活用が購買の当たり前に 

しかし、昨今の様子を見ているとこの導入割合が数年以内に8割以上にまで伸びるという考えるのが妥当でしょう。トライツでも普段から生成AIを使っていますし、20代の若手社員や大学生・高校生はAIと対話するのが当たり前の日常になっています。また、SAP AribaなどのAI搭載型購買・調達用ツールも大企業を中心に導入が加速しています。さらに人材不足が多くの業界・企業で恒常化しているため、AIを使った業務効率化は避けては通れないものになっています。 

このように見ていると、日本でもいつしかSFAが当たり前のものとして営業現場に普及したように、AI活用が購買活動の当たり前になるのももうすぐだと思います。 

それでは、そのような世界に向けて私たちはどのような準備をすればいいのでしょうか。 

購買でのAI活用が当たり前の社会に備える「3つのやるべきこと」 

まず一番最初にやるべきことは、AIに推奨されやすいWebページ/SNSページを作成するというもの。Web活用が一気に広まった20~15年ほど前は、「Web検索で見つからないということは、世の中に存在していないのと同じ」という言葉がよく使われ、SEO(検索エンジン最適化)という技術/マーケティング施策が一気に普及しました。それと同様に、これからはAIに見つかって推奨されないと顧客の購買の土俵にすら上がれない、という状態になってしまいます。SEOではなくGEO/AIO(生成AIエンジン最適化)という言葉も出てきており、生成AIフレンドリーなWebページ作りが不可欠です。 

ちなみにトライツも最近Webサイトのリニューアルをしたのですが、それはこのGEO/AIOを取り入れたもの。ChatGPTに企業サイトを評価し推奨するアルゴリズムを質問し、得られたアドバイスをもとに生成AIが読み取りやすいように事例ページを構造化しています。 

そして2つめにやるべきは、顧客の目線で生成AIを活用してみるということ。顧客の課題を解決するソリューションとして自社商品・サービスが推奨されるかどうかを確認する。自社の提案資料と他社企業がWeb上に公開している資料とを対比・評価させて改善点を探す。自社提案資料をもとに顧客が抱きそうな懸念点や、質問事項を事前に生成AIに抽出させる。これらを行っておくことで、AIからも評価される提案書の作り方・コツを学ぶことができます。 

そして最後は、AIではできない生身の営業だからこそできるスキルを伸ばすこと。ヒアリングや対話を通じて課題の真因や構造を明らかにしたり、課題解決に向けて顧客が持っていなかった新しい観点/切り口を提供したりといったことは、人間同士の対話でしか生まれません。このようなハイタッチのスキルを伸ばすことで、「この人に会うのが楽しみだ」と顧客に思われる、かけがえのない存在になれるはずです。 

これから訪れる「AI購買社会」への備えを始めよう 

海外で先行している購買活動でのAI活用というトレンドは、すでに日本にも押し寄せつつあります。そして、今後は当たり前に顧客がAIを使って調査・選定するようになるでしょう。今の自分たちのWebサイトや提案書はAIフレンドリーなのか。そして自社の営業活動はAIでは代替できない特別な価値を生み出せているのか。これから訪れる「AI購買社会」への備えを始めましょう。 

参考:「15 AI Procurement Tools You Should Know in 2025」(Marijn Overvest, Procurement Tactics Inc., June 25, 2025

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