トライツコンサルティング株式会社

営業担当者必見!商談を『続けてるだけ』から『前進』に変える3つのステップ

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「顧客と会えているし、会うたびに宿題はもらえている」 
「次のアポイントもそこでやることも決まっている」 
「なのに、なかなか売上に至らない」 

このような経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。商談がないわけではないし、顧客も興味を持って会ってくれているし、会うたびにリクエストももらっていてそれにきちんと応えてもいる。それなのになかなか受注には至らない。もしかしたらそれは「忙しいだけ営業」なのかもしれません。 

そこで今回は経験が浅い営業担当者が陥りがちな「忙しいだけ営業」がどのようなもので、どう回避したらいいのかを海外の営業本を参考にして考えてみたいと思います。ご自身の営業活動が非効率だとお悩みの方も、一生懸命頑張っているのに結果がなかなか出ない部下や後輩をお持ちの方も、ぜひお読みください。 

頑張っているのに商談が先に進まない「忙しいだけ営業」とは 

営業コンサルタントとしてクライアント企業の営業担当者とお話をしていると、忙しくしているのになかなか商談が先に進まないという方がいらっしゃいます。 
「セミナーで使った資料を送ってほしいと言われたので、その企業に合うように手直ししてから送ろうと思います」 
「商品を紹介したら詳細の説明を求められたので、社内の関連資料を調査しています」 
など、顧客から求められたことに応えようとしています。 

このような商談に共通しているのが、顧客からあれこれリクエストされていることに応えても、それが購買プロセスを進めることにつながらない、ということです。このブログでは、このことを少し厳しい表現ですが「忙しいだけ営業」と呼ぶことにします。自分では頑張って営業対応しているつもりなのに、それが結果につながらないというものです。 

商談の一部にこの「忙しいだけ営業」が紛れ込んでしまうのは仕方ないのですが、商談の多くがこれになってしまうと大変です。どの商談でもやることがあって忙しいのに結果は出ない、という状態が長期間続いてしまいます。 

この「忙しいだけ営業」に陥らないようにするためにはどうすればいいのか。そのヒントが以前紹介した営業本「The Perfect Close」の中にありましたので、以前とは切り口を変えてご紹介します。 

購買プロセスを前に進める「前進」とそうでない「続けてるだけ」を見分ける3つの条件 

この本の中では商談における顧客と営業の活動を大きく2つに分類しています。1つは購買プロセスを前進させるのに役立つ活動で、「前進」(Advance:アドバンス)と呼びます。そして残る1つの購買プロセスを前に進めるのには役立たない方の活動のことはContinuum(コンティニューム)と呼んでいます。これを日本語に直訳すると「連続体」なのですが、顧客とのやり取りは続いているものの先には進まないという意味で、ここでは「続けてるだけ」と訳すことにします。 

そして顧客からリクエストされた活動、例えば「資料を送ってほしい」「上司に会って説明してほしい」などが購買プロセスを進める「前進」なのか、そうではないただの「続けてるだけ」に過ぎないのかを見極める条件として、著者のミュアー 氏は以下の3つを挙げています。 

1. 顧客が主体的に行動するものである

2. 顧客のエネルギー/コミットメント(腹決め)を必要とする行動である

3. 購買/営業プロセスを前進させるものである

つまり、この3つの条件を満たしていないものは、顧客の購買プロセスを前に進めることに役立たないただの「続けてるだけ」の商談でしかないというのです。 

営業で頻出の8つの「続けてるだけ」活動 

さらに、本の中では営業の場面でよく出会う「続けてるだけ」の例として、以下の8項目を列挙しています。 

1. 顧客からの提案依頼

2. 顧客への提案書送付

3. 送付/提出された提案書や関連資料の確認

4. 提案書や商品に対する顧客からの質問

5. 詳細の説明を顧客が求めること

6. 顧客の関係者からの情報提供依頼

7. 顧客のウェビナー参加や、オンラインデモの視聴

8. 他の見込客の紹介

確かに上記8項目のいずれも、顧客が主体的に行動するわけではない営業担当者の宿題だったり、顧客が主体的に行動はするものの特にエネルギーやコミットメントが不要な質問や問合せのたぐいだったりします。そして一番の問題は、これらをいくら積み重ねたとしても商談の受注には至らないということ。8番目の「他の見込客の紹介」は、紹介された新しい見込客との商談が増えて嬉しいのですが、目の前の顧客での受注には直結しません 

顧客の購買プロセスを進めるには、意思決定に関わる人を巻き込んでもらったり、その人に事前に内々で打診や相談をしたりと、顧客に主体的かつエネルギーやコミットメントをもって動いてもらわなければなりません。そのため、先ほどの8項目は、いずれも「前進」ではなく「続けてるだけ」でしかないのです。 

顧客からリクエストされた「続けてるだけ」を「前進」に転換させる3つの工夫 

とはいえ、これらは普段の営業活動の中でよく出会うものでもあります。 
「ぜひ検討したいので資料を送っていただけますか」 
「以前お送りいただいた提案書に対して詳しくお聞きしたいのですが・・・」 
「うちのシステム部からこのような質問が来ていまして・・・」 
などと言われると、顧客からのリクエストでもありますし、応えないと不誠実だと受け取られてしまわれかねません。その一方で、このままリクエストに応えるだけでは顧客の購買プロセスは前に進まないというジレンマもあります。 

そこで、本の中ではこれらの「続けてるだけ」を「前進」に転換させるための工夫として、以下の3つを挙げています。 

1. メールやリモートでの打合せを対面で直接やり取りできるものにする

2. 打合せの目的に応じて、顧客社内やカンファレンス会場など、打合せの場を最適なものにする

3. 購買プロセスを前進させられる人を打合せに招く

当たり前でシンプルな工夫ですが、顧客に対して提案しやすいものばかりだと思います。そしてこの提案をする際に特に大事なのが、「売りつけたい」という自分本位な思いからではなく、「顧客により良い購買をして欲しい」「購買によって課題解決を支援したい」という顧客のためを思って提案すること。 

そして、もしこの提案に対して顧客が特に理由を明確にせずに難色を示すようであれば、その商談に乗り気でなく、時間やエネルギーをかけるつもりがないことの証拠だとも言えるでしょう。 

「The Perfect Close」から学ぶ「忙しいだけ営業」を回避する3つの鉄則 

ここまで、「忙しいだけ営業」を回避するための方法として、海外の営業本「The Perfect Close」をもとに顧客の購買プロセスの推進に役立つ活動である「前進」とそうでない「続けてるだけ」な活動の見極め方と、顧客からそれをリクエストされた際に「前進」に転換させる工夫例を見てきました。 

これまで見てきたことから言える、「忙しいだけ営業」に陥らないための鉄則は以下の3つです。

1. 顧客からリクエストされたら、反射的に引き受ける前にそれが顧客の購買プロセスの前進に役立つものかどうかを考えよう。

2. そのリクエストが前進でなければ、対面の場を設けるなどして、購買プロセスを前進させる場になるよう提案しよう。

3. 少なくとも「後ほど提案書をお送りします」「とりあえず今回お話に上がった資料をメールでお送りします」などと、自分から「続けてるだけ」を顧客に対して提案しないようにしよう。 

顧客からのリクエストに応えるだけでなく、それを購買プロセスの前進に役立つものにしよう 

営業をしていると、顧客からの色々なリクエストを打ち返すことに手一杯になってしまうことがあります。しかし、営業として求められる成果は、顧客の要望にすべて応えきることではなく、顧客の購買プロセスを前に進めて購入に至らせることによって得られます。顧客のリクエストを聞きながら、「これは購買プロセスを前に進めるのにどう役立つのか」と考え、わからなければそれを顧客に質問し、次の打合せの場を購買プロセスの前進により役立つものにする。そのような意識を持つことが重要なのだと思うのです。 

参考:「The Perfect Close: The Secret To Closing Sales」(James Muir, Best Practice International, 2016)

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