トライツコンサルティング株式会社

KPIで営業活動は変わる!「顧客中心営業に適したKPI」の具体例をご紹介

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先日(2023年11月15日)に弊社セミナーを開催しました。テーマは『デジタル営業時代の新コンセプト:顧客中心営業で成長し続ける営業組織をつくる』。顧客がWebなどを活用して自ら情報を集めて購買プロセスを主導するようになった現在の営業に求められる「顧客中心営業」の役割やスタンスについて、お話しました。 

そこで何名の方からご意見をいただいたのが、KPIについてでした。今まで「当たり前」としてきたKPIを見直すことで、もっと変化する顧客の購買プロセスに合った営業活動になるということだったのですが、今回はその部分に焦点を当て、具体的に解説してきたいと思います。 

KPIに何を定めるかによって営業活動が変わる 

まず、なぜKPIを見直す必要があるのでしょうか。 

それは目標やKPIによって私たちの行動が変わってしまうからです。営業プロセスを測る指標として「提案件数」や「見積提出件数」が設定されていれば、特に課題がない顧客や自社に興味がない顧客に対しても「一度簡単なご提案の場を持たせてください」「概要の提案書ですのでお時間あるときにお読みください」「お見積だけ出させてください」のような、指標を満たすためだけの営業活動をしてしまいがちです。 

この目標やKPI、そしてそれに基づくマネージャーとメンバーの会話によって、営業活動が変わってしまうことについて、リサ・マクロード氏は「Selling with Noble Purpose」(未邦訳)にて以下のように述べています。 

営業において社内の会話、つまりマネージャーとメンバーがしている会話がそのまま社外、すなわちメンバーと顧客との会話になるのです。もし社内の会話が数字目標やノルマのことばかりで、顧客にもたらす価値についてほとんど触れられていなければ、その通りに営業メンバーが顧客に接してしまうことでしょう。

このように、どのようなKPIを設定するか、そしてどのようなKPIに基づいてマネージャーとの会話がなされるかが、営業活動に大きな影響を与えます。 

従って、顧客がWebなどで情報を収集し、自ら購買プロセスを進めることが多くなっている中で、従来の「自分たちの営業プロセスを進める」ということを基本にしたKPIでマネジメントを行うということは、顧客が望んでいないことに営業活動をミスリードしてしまうリスクがあるのです。 

まだまだ改良の余地がある「顧客中心営業に適したKPI」 

では、顧客の購買プロセスに焦点を当てたKPIとしてどのようなものがあるのかというと、顧客中心営業というコンセプトが新しいこともあって実はあまり明確になっていないようです。国内外のブログや書籍などを調べてみたのですが、一番まとまっていると思えたのは2020年に出版された「Selling is Hard. Buying is Harder」(未邦訳)で列挙されていた、以下の項目です。 

1. 特定された意思決定者数

2. 発見された購買関係者数 

3. 発見された購買グループ数

4. 関心を持っている購買グループ数

5. 自社のコンテンツにアクセスした(エンゲージしている)購買グループ数

6. 賛成している(自社優位な)購買グループ数

7. (自社が提供している主要コンテンツの購買グループ内での)共有率

8. 購買プロセス完了率

8つの項目をよく見てみると、1~3は顧客の購買プロセスを把握しそこに参画できているかを測る指標で、4~6は競合に対して自社が優位な立場にあるかを測る指標。そして8番目は顧客の購買プロセスが進捗しているかを測る指標と、それぞれの指標で何を測定しようとしているかという種類が異なっていることがわかります。ただ、肝心かなめの「顧客の課題が解決されたのか」を測る指標が抜けていたりと、まだまだ改良の余地がありそうです。 

トライツが考える「顧客中心営業に適したKPI」の4つの観点 

そこで、私なりに考えてみた「顧客中心営業に適したKPI」の一覧表を次に示します。 

ここでポイントになるのが、「顧客の購買グループ」という考え方です。これは顧客が購買プロセスを進める上で、その関係者の集まりのことです。組織横断で何名かが集まった検討チームを発足している場合はもちろんですし、検討担当者とその上司が意思決定権者というようなものであっても、購買グループと考えます。営業としてはそれをいかに見つけて、支援するかということを基本にしています。 

まず1つめの大事な観点が「顧客の購買プロセスを把握し、そこに参画する」ことです。どれだけの会社の購買グループと会えているのか、またそれぞれの購買グループの中の購買関係者を網羅できているか、意思決定者(複数可)に会えているかをチェックするのです。 

2つめの観点は、購買プロセスにただ介在しているだけでなく「それを後押しする」こと。顧客の購買プロセスを前に進められているかをチェックします。この観点は、業界や企業によってさらに具体化する必要があります。例えば、MRが医者に新薬を使ってもらおうとしたら、まずは初回処方のための患者を誰にするかを医者に決めてもらうというのが、購買プロセスの中でも特に重要なポイントです。また、最終メーカーである顧客の新商品に自社の素材や原料を入れてもらう営業の場合は、顧客内の商品化決定というイベントがとりわけ大事になります。 

3つめの観点は、ただ便利屋さんとして顧客の手助けをするだけでなく、「自社の購買につなげる」こと。どれだけ顧客の購買を後押しできて、顧客に満足してもらえたとしても自社の売上につながらなければ、ただのボランティアになってしまいます。そのためには、まずホワイトペーパーやデモ動画へのアクセスといった自社コンテンツへの接触から始まり、顧客の購買の意思決定基準をどれだけ満たせているか、自社を支持する顧客の関係者がどれだけいるかといった項目を見ていく必要があります。 

そして最後の4つめの観点が、「顧客の課題を解決する」こと。顧客は満足しているか、購買によって実現しようとしていた目標を達成できているのかをフォローするのです。 

項目に多少の粗さはあるかと思いますが、「自社が顧客中心営業を実現できているか」「顧客の購買/課題解決を支援できているか」を見ていくにはこの4つの観点が大事だと思います。 

マネージャーはKPIを使ってメンバーと会話をしよう 

そして、KPIを顧客中心営業にしたら、次にやるべきことはマネージャーがこれらのKPIを使ってメンバーと会話し、マネジメントすることです。 

上の表をそっくりそのまま取り入れた営業チームでは普段から以下のような会話がやり取りされているはずです。 
「この企業で会えている購買関係者が少ないみたいだけど、増やすための方法って考えられる?」 
「購買プロセスの進捗が止まっているみたいだけど、顧客の誰が何に引っかかっているのかな?」 
「今の提案は、顧客の意思決定基準をどこまで満たせている?満たせていなかったり競合優位になってる基準はある?」 
「導入開始したあの顧客の満足度は?当初の目標に対する進捗はどのくらい?」 

マネージャーが普段からこのような会話をメンバーとし、メンバーがこれらのことに意識づけられていれば、顧客と接する場面でもきっと顧客中心営業にふさわしいスタンスで行動/会話してくれるのではないでしょうか。 

顧客中心営業に変える第一歩としてのKPI 

今回は、顧客中心営業に取り組む第一歩としての「KPI」に焦点を当ててみました。ぜひ今回ご紹介したKPI項目のうち、皆さんの業界や商品/サービスに適したものを選んで実際に取り入れてみてください。きっと、商談のマネジメントの仕方やメンバーとの普段の会話、そしてメンバーの顧客との接し方が少しずつ変わってくるはずです。 

また、皆さんの業界に合わせたチューニングや、SFAへの反映の仕方、マネージャーによるコーチングの仕方などについて詳しく知りたい方は、ぜひトライツにご相談ください。皆さんにとって、そして皆さんの顧客にとって最適な顧客中心営業について、一緒に考えてカタチに、そして行動にしていきましょう。 

参考: 
Selling is Hard. Buying is Harder」(Garin Hess, Consensus Sales Inc., River Grove Books, 2020 
Selling with Noble Purpose」(Lisa Earle McLeod, John Wiley & Sons, Inc., 2020

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