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営業のモチベーションアップにつながる「12の質問」

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最近、営業のマネージャーの方から「若手営業のモチベーションの上げ方がわからない」という話を聞くことがよくあります。「目標達成や大きな仕事の受注にとりわけ熱意があるわけでもなく、出世に興味があるわけでもなさそう。真面目に言われたことはやるんだけど・・・」。 

Z世代会議がZ世代の若者、つまり1995~2009年に生まれた人たちに実施したアンケート調査の結果によると、周りの空気を読んで自己主張をあまりしない、目立つ特徴がなく無気力に見えてしまう「様子見フォロワー」という属性がこの世代の4割以上。男性に限るとさらに多くいるそうです。確かにこのようなタイプの人にモチベーションを持ってもらうのは難しそうですね。 

若手に限らず営業担当者へのモチベーションアップは海外でも問題になっており、さまざまな調査記事や研究や提言がされています。そこで今回は「現代の営業担当者のモチベーションアップ」をテーマに、複数の調査記事をご紹介します。今どきの営業担当者にやる気を引き出す要素は何なのか、営業組織としてどんな手が打てるのか、一緒に考えていきましょう。 

金銭以外のモチベーション要因が重要になってきているアメリカの営業 

最初にご紹介するのは「Motivate Your Sales Team with Five Non-Monetary Rewards(5つの非金銭的報酬で営業チームのモチベーションを高めよう)というSales & Marketing Management誌の記事。アメリカの営業担当者と言えば、出来高制のコミッションというわかりやすい金銭報酬をモチベーションにしているイメージがありますが、今はそれだけではないようです。 

営業担当者は金銭によって動機付けられているため、報酬プランにはインセンティブやコミッションが含まれることがよくあります。他社より高い給料やボーナスはもちろん重要ですが、金銭以外の福利厚生もモチベーションを高めることが可能です。 

現代では、すべての業界の従業員がワークライフバランス、リーダーシップの質、従業員への待遇といった金銭以外の職場環境にいっそう注意を払い始めています。  

アメリカの営業担当者でも、金銭以外の要因によってモチベーションが影響されるようになっているみたいですね。 

マッキンゼー社が明らかにした営業担当者にとっての上位のモチベーション要因 

ちなみに、この説に近いデータを2023年9月にアメリカで開催されたカンファレンスでも聞いてきましたので、併せてご紹介します。以下は、マッキンゼー社が調査した、営業担当者が重要視しているモチベーションを業績グループ別に整理したものです。 


(「Sales Acceleration in a Slowing Economy」Jennifer Stanley & Richelle Deveau, McKinsey & Company, Inc., Sales 3.0 Conference, September 7, 2023をもとに作成) 

このように、トップパフォーマーだけでなく平均的な業績の営業担当者にとっても、モチベーション要因としての金銭報酬の重要度は低くなっています。また、両グループに共通して「能力の発揮」や「仕事の意義/パーパス」が上位のモチベーション要因になっていることもわかる、とても興味深いデータだと思います。 

非金銭的なモチベーション要因は従業員エンゲージメントにも大きな影響を与える 

では、先ほどのSales & Marketing Management誌の記事に戻って、続きを見てみましょう。 

ギャラップ社の「State of the Global Workplace: 2023 Report」では、勤務場所がどこか(出社を強制されるか)より、 従業員エンゲージメントの方が従業員が日々感じるストレスに3.8倍大きな影響を与えていることがわかりました。

最近見聞きすることが増えた「従業員エンゲージメント」というキーワードが出てきました。これは、自分が所属している会社や組織のために貢献したい/頑張りたいと従業員が思っている状態のことを表します。ここで記事の論旨をまとめると、仕事に対するモチベーションを高めたり、会社や組織のために頑張りたいと思ってもらうためにも、ワークライフバランスや待遇といった金銭以外の要因が大事になってきている、というのです。 

126か国中で最下位タイの日本の従業員エンゲージメント率 

それでは非金銭的なモチベーション要因としてどのようなものにケアしたらいいのでしょうか。実はそのヒントが、先ほど出てきたギャラップ社の「State of the Global Workplace: 2023 Report」というレポートの中に隠されています。このレポートは世界各国で働く労働者122,416人(合計)を対象に実施した大々的なもので、基本的には各国の回答者数が1,000人以上になるように調査しているそうです。 

まずは世界各国の従業員エンゲージメントのスコアがどのようになっているかを見てみましょう。ギャラップ社が推計した各国の従業員エンゲージメントが高い労働者の割合が下のグラフです。 


(「State of the Global Workplace: 2023 Report」をもとに作成) 

横にずらずらと並んでいるのがデータを集計することができた126の国です。あまりにも小さすぎて見えにくいので、部分的に拡大して見てみましょう。まずはエンゲージメント率が高い国々から。 

従業員エンゲージメント率が最も高いのはアフリカ西部にあるマリ共和国の47%。その後にモンゴルなど意外な国が続きます。アメリカは上位の34%で、世界平均は23%だそうです。続けてエンゲージメント率が低い国々を見てみます。 

残念ながら日本は126か国中でイタリアと同率の最下位(5%)でした。 

従業員エンゲージメントが低いグループの中には、日本以外にフランスやイギリス、スイス、ベルギー、台湾、韓国、ドイツなどの先進国ではあるものの経済成長が落ち着いている国が多く含まれていて、反対に高いグループの中にはアメリカ以外にインドやブラジル、メキシコ、フィリピン、タイ、インドネシアなど安定して経済成長が続いている国が多く含まれています。実際に従業員エンゲージメント率と経済成長率の相関係数を見たところ、高くはないものの確実に関連があると言える(r=0.19, P<0.05)という結果でした。「売上はすべてを癒す」という言葉と同様に、経済成長率が高い国ほど今の職場環境への満足度が高くなる傾向があるのではないかと思っています。 

ちなみにこの数値には注意が必要です。このパーセンテージは「会社のために頑張りたい/貢献したい」と回答した人の割合ではありません。ギャラップ社が独自に開発・設計した、職場環境に対する各従業員の満足度を問う12個の質問への回答データをもとに、非公開の計算式を用いて求めた数字なのです。最初にグラフを紹介するときに「ギャラップ社が集計した」ではなく「ギャラップ社が推計した」と書いていたのは、このような理由があるからでした。 

従業員エンゲージメントを構成する12個の質問項目 

では、職場環境に対する満足度を問う12個の質問がどのようなものなのかを見ていきましょう。 

Q01. 職場で自分に何が期待されているかを知ってい

Q02. 自分の仕事に必要な材料や設備、機器が揃っている

Q03. 職場では、自分が得意とする業務を行う機会がある

Q04. この1週間で、仕事の内容を認められたり、褒められたりした

Q05. 上司や職場の人は、自分という人間を気にかけてくれている

Q06. 職場に自分の成長を促してくれる人がいる

Q07. 職場では、自分の意見が大事に扱われている

Q08. 会社のミッションやパーパスによって、自分の仕事が重要だと感じられる

Q09. 職場の同僚は、質の高い仕事をしようと努力している

Q10. 職場に親友がいる

Q11. この6カ月間に、職場で自分のキャリア開発について話をしたことがある

Q12. この1年間で、職場で学び、成長する機会に恵まれた

確かにこれらの項目がすべてそろっていたら、理想の職場だと言えるでしょうし、そのような組織のために頑張りたい/貢献したいと素直に思えそうな気がします。 

この従業員エンゲージメント率の実態は、従業員のやる気や貢献意欲ではなく、組織が従業員のやる気を起こさせる環境を提供できているかどうかを測っているもの。そして、先ほどの日本の低い従業員エンゲージメント率は、これらの職場環境に対して満足だと回答している人の割合が、イタリアを除く他の124か国よりも低い。つまり、従業員のやる気が低いことが問題なのではなく、従業員をやる気にさせる職場/組織が少ないことが問題なのです。 

12個の質問項目をヒントにモチベーション/エンゲージメントを高めよう 

ただ、この12個の質問は従業員エンゲージメントを高めるために組織として、またマネージャーとして何ができるかを教えてくれるヒントとしても活用できます。「メンバーに期待することを明確に伝える」「必要な機器やツールは惜しまず用意する」「メンバー各自が得意な業務を割り当てる」「こまめに感謝や称賛の声をかける」など、意識すれば今すぐにでも実施できる項目が結構あるのです。 

このブログの冒頭でご紹介したような、今の若手のモチベーションアップに困っているという方にも、万能薬的な処方箋として参考にしていただけるのではないでしょうか。 

モチベーション/エンゲージメント機会と打ち手は日々の仕事やコミュニケーションの中にあり 

今回はSales & Marketing Management誌の記事と、Sales 3.0でのマッキンゼー社の講演をもとに、仕事の意義やパーパス、能力の発揮といった非金銭的な要因が営業担当者のモチベーション向上において、より重要になってきていることを確認しました。また、従業員エンゲージメントの基礎となる12個の質問項目から、会社や組織のために頑張りたい/貢献したいと思える従業員を増やすためのヒントを学ぶことができました。 

メンバーが得意な業務を任せる。自分たちの仕事によって顧客の成長にどのような貢献ができていて、産業の発展や経済/社会のためにどんな寄与ができているかをメンバーと共有する。モチベーションやエンゲージメントなどというとついつい難しいことのように感じてしまいますが、それを高めるための機会と打ち手は、毎日の仕事内容やコミュニケーションの中にたくさん含まれているのだと思うのです。 

参考:
Motivate Your Sales Team with Five Non-Monetary Rewards」(Prashant Kumar, Sales & Marketing Management, October 18, 2023
Sales Acceleration in a Slowing Economy」(Jennifer Stanley & Richelle Deveau, McKinsey & Company, Inc., Sales 3.0 Conference, September 7, 2023
State of the Global Workplace 2023 Report: The Voice of the World’s Employees」(Gallup, Inc., 2023

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