トライツコンサルティング株式会社

乗り遅れるな!B2B営業もセルフサービスの時代へ

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私たちの身の回りのものがどんどんセルフサービス化しています。車の給油はセルフサービスがずっと前から主流ですし、コンビニやスーパーのレジも今やセルフが普通。航空券を買ってチェックインするのも、スマホのアプリで完結できるようになっています。 

そしてそのセルフサービス化の波はB2Bの世界にも広がってきているようです。今回は、企業の購買活動の変化を最新の調査レポートで確認していきます。パンデミックを超えて企業の購買活動がどのように変化しているのか、その変化に対応するために私たち売り手には何が求められているのか、一緒に見ていきましょう。 

調査データ①「セルフサービス経済で顧客が求めるのはデモ、価格、利用者のクチコミ」

今回ご紹介するのはトラストラジウス(TrustRadius)社が先月発表した最新の調査レポート「2023 B2B Buying Disconnect: The Self-Serve Economy is Prove It or Lose It」。北米を中心に、企業の購買担当者1,604人と売り手企業248社を対象にアンケート調査を実施し、それをとりまとめたものです。 

このレポートの副題を訳すなら「セルフサービス経済が勝負の分かれ目」でしょうか。「Prove it or (you) lose it」は新しいトレンドやコンセプトと一緒によく使われる言い回しで、「自らそれを試してみて正しさを確かめるか、さもなければ知らないうちに負けてしまうぞ」という意味。B2B購買に訪れているセルフサービス経済というトレンドが、無視できないものになっているというのです。 

顧客がどのような情報をもとに購買の意思決定をしているかのデータから見ていきましょう。購買担当者が、「購買活動を進めるのに重要な情報」を上位3つまで選択回答したのが、以下のグラフです。 

いきなり「デモ」という項目がありますが、これはこのレポートの主な回答者が、ソフトウェアなどの企業向けテクノロジーツールの購買担当者と営業担当者だからです。例えば材料や素材を扱っている業界なら「試作」や「サンプル提供」など、皆さんの業界に適したアクションに読み替えてください。 

グラフの中で70%を超えているのが、「デモ/試用」と「価格」。以前は企業に連絡して営業担当者に来てもらわないと、デモを見ることも、見積を手に入れることもできませんでした。しかし今や、営業担当者を介さずにこれらの情報が手に入るようにしておかないと、顧客が買ってくれない時代になっています。このことを指して、レポートの副題の「セルフサービス経済が勝負の分かれ目」という表現になっているのです。 

また、「利用者のクチコミ」も50%を超えており、顧客にとって重要な情報源になっています。日本人の私たちにとってクチコミ情報というと、Amazon、じゃらんなどの旅行予約サイト、食べログなどの飲食店情報サイト、就職や転職用のサイトなど、個人向けのものをイメージしますが、アメリカでは企業の購買担当者向けの法人商品/サービスのクチコミサイトが広く使われています。このレポートを作成しているトラストラジウス社も自ら運営していて、規模はG2に次ぐ第2位。大事な情報源だと回答してもらえて嬉しかったことでしょう。 

企業向けクチコミサイト1位G2も元々はITテクノロジーをメインとしていましたが、対象とする商品/サービスがどんどん広がり、今では経営コンサルティングやマーケティング会社などもカバーするようになっています。アクセンチュアやマッキンゼーなどの企業に対しても、一緒にプロジェクトに取り組んだクライアント企業からのクチコミが数多く寄せられており、「購買担当者が見たら確かに参考になるな」と思えるものになっています。 

調査データ②「顧客が重視している情報と、企業が提供している情報には大きなギャップが存在」

それでは、顧客が重視している情報を売り手企業がきちんと提供できているかについてのデータを見てみましょう。売り手企業が顧客に提供している情報と、顧客が購買の参考にしている情報とを、すべて選択回答したのが以下のグラフです。 

先ほどの「利用者のクチコミ」が顧客にとって2番目に多く参考にされているのにも関わらず、G2などのクチコミプラットフォームを活用している売り手企業は半数足らずと、ギャップが発生していることがわかります。また、3つ目の項目は、過去に使っていた利用者が「過去の利用経験」をもとに、異動先や転職先で再度利用するというもの。過去ユーザーのリストを整備し、それに向けた情報発信をしている企業は3分の1しかないようです。 

上から順番に項目を見ていて驚いたのが、6番目に登場する「営業担当者」。企業が購買の参考にしている割合がたったの25%と、ここでも購買がセルフサービス化している様子がうかがえます 

調査データ③「今の顧客は以前よりも購買が大変」

このように購買のセルフサービス化が進むことで、顧客の購買活動は楽になっているのでしょうか。最後に、2022年から2023年の1年間で、顧客の購買活動がどのように変化したかを見てみましょう。購買に関連する様々な要素が、2022年から増えたか、それとも減ったのかを回答したのが以下のグラフです。 

この1年間でアメリカは景気が大幅に減速し、この先は後退局面に入ることが懸念されています。さらにこのレポートの対象であるテクノロジー業界では、シリコンバレー銀行が破綻したりベンチャーキャピタルが投資を手控え始めるなど、景気減速の波をより大きく受けています。このような影響もあるため、セルフサービス化が進んでいても購買活動が全く楽になっていません。 

たくさんの情報を集めて、大勢の意思決定者から合意を取り付けなければならない。つまり、営業担当者として顧客の購買を支援する必要性がより高まっている、と言えるのではないでしょうか。 

日本のB2Bにおいてセルフサービス化は人手不足で加速する

ここまで駆け足でトラストラジウス社の最新レポートを見てきましたが、B2Bの購買活動がセルフサービス化している様子がご理解いただけたと思います。では、このトレンドは日本でも、またテクノロジーとは別の業界でも、これから訪れるものなのでしょうか。 

私はこれからこの流れは「人手不足」という社会的な課題から、広がりをみせていくだろうと考えています。従来型の営業担当者を介した商取引には、ヒアリングしたり相手に合わせて提案書を作ったり、それを説明したりと売り手にも買い手にもかなりの手間が掛かっています。これまでそのやり方を続けることが雇用を守るということになってきた面もありますが、今後はもうそんな余裕はなくなってくるでしょう。汎用品やちょっとしたカスタマイズ品はセルフサービス化の流れが進んでいくと思います。 

また、ご存じのように日本においても事務用品などはAmazonやアスクルなどで購買することが一般化しています。製造現場ではモノタロウやミスミは不可欠な存在になっていると言えるでしょう。これらに共通しているのは、従来の流通を壊す新しい参入者、あるいは従来の流通を担っていた企業が新たに作った流通チャネルだということです。 

このことから、今後B2Bにおいても、新規参入企業がセルフサービス化によって流通構造を大きく変えてしまうということも大いに考えられると思います。 

セルフサービス化後に求められる営業の役割とは

また、だからと言ってB2Bにおける営業担当者が完全に不要になるわけではありません。最後にお見せしたデータにもあったとおり、購買の意思決定のために必要な情報の量はどんどん増えていますし、経営環境が厳しくなれば意思決定に関わる人も必要な期間も増えていきます。セルフサービスだけではうまく社内の調整を付けられず、意思決定が進まない。そのような場面で、そのような目詰まりを解消する役割としての営業担当者が求められるのです。 

ここで求められる営業担当者の役割は、デモや無料トライアル、価格表といった情報の門番ではありません。そのような情報はWebで公開されており、顧客がセルフサービスで手に入れています。そのような情報や利用者のクチコミなど、様々な情報を集めすぎてどう判断したらわからない顧客や、社内の関係者が多すぎて意見のすり合わせが進まない顧客に対して、どうすれば課題を解決できて、どう調整すれば社内の意思決定ができるようになるかを教えられるコンサルタント的な役割なのです。 

自分たちの周りのセルフサービス化の動きを意識してみよう

今回は企業の購買活動に関する最新のレポートをご紹介し、B2Bの購買においてもセルフサービス化が大きなトレンドになっていることを確認できました。 

ちなみに、コンサルティング事業はすでにフリーランス向けに、Webでクライアント企業とコンサルタントをマッチングできるポータルサイトが複数開設されていて、部分的にセルフサービス化の波が押し寄せつつあります。 

皆さんの業界はどうでしょうか。皆さんが取り扱っている商品/サービスをすでにセルフサービスで売っているところはありますか。SNSやGoogleレビューでは、皆さんの企業についてどのようなクチコミ情報が書かれているでしょうか。今回の記事をきっかけにして、皆さんの業界/市場でのセルフサービス化の動きを意識してみてください。セルフサービス化のトレンドに気が付かないままでいると、レポートの副題にあったように本当に「勝負の分かれ目」になってしまうかもしれません。 

参考:「2023 B2B Buying Disconnect: The Self-Serve Economy is Prove It or Lose It」(TrustRadius, June 18, 2023

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