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現代の最重要戦略「顧客体験(CX)」を向上させるために知っておくべきこと

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「CX(顧客体験、顧客体験価値)」という言葉はすっかり営業・マーケティング分野を中心に定着しているようです。今から10年前の2012年の日本経済新聞への登場回数はわずか4回でしたが、2021年には84回。そして今年2022年は今現在(11月末まで)で92回と、すっかりなじみの用語になりました。

様々な企業が重要視しているCX。「顧客体験の理解」や「顧客体験価値の向上」といった言葉はよく見聞きするものの、具体的に何をしたらよいかわからない、という方も多いのではないでしょうか。

購買活動のデジタル化によって、顧客の行動や体験が売り手からは見えにくくなっている現在。そのためCXは私たちにとってよく見聞きする用語である一方で、それがどういうものなのかが実は見えにくい存在なのです。なぜCXが重要なのか。そしてCXの理解と向上のためにどうすればよいのかを、改めて確認していきましょう。

CXデータ集①優れた顧客体験は取引額上昇につながる

今回ご紹介するのは、B2B企業向けの各種調査データを1つにまとめたキュレーション記事で有名なSuperOffice社の最新記事「32 Customer Experience Statistics You Need to Know for 2023」(2023年に向けて知っておきたい32のCXデータ)。Gartnerなどの調査会社やPwCなどのコンサルティング会社がこれまでに発表した、CXに関する様々なデータの最新版を上手にまとめているので、とても読み応えのある記事になっています。この記事の中にある数多くのデータから、特に重要なものを抜粋してご紹介します。

まずは、優れた体験をした顧客についてのデータです。

購入者の86%は、優れたCXに対してより多くの支払いをいとわない

顧客は優れたCXに対し、最大18%の価格プレミアムを喜んで支払う

優れた顧客体験によって、取引金額の上昇につながるというデータです。顧客に喜んでもらえたことで取引が増えたという経験をされた方にとっては、イメージしやすいのではないでしょうか。

CXデータ集②悪い顧客体験は共有され、複数回で顧客が離れる

しかし、顧客が体験に満足していない場合には話が変わってきます。

満足した顧客の72%は6人以上にCXを共有し、満足していない顧客の13%は15人以上に共有する

3人に1人の顧客が1回の悪い体験で、92%が2~3回の悪い体験でその企業から離れる

SNSの普及もあってか、良い体験も悪い体験も多くの人に共有される傾向があるようです。また、複数回の悪い体験を受けるとその企業から買わなくなるというのは、買い手としての皆さんの経験を思い出していただくと、納得のいくデータだと思います。

CXデータ集③CXの重要度が高まっているが、力を入れている企業は半分以下

このようにCXの良し悪しによって顧客の行動が大きく変化するため、企業にとってCXを理解し顧客が感じている価値を向上させようというのは当然の流れです。ただ、実際はどうやら異なっているようです。

CXに基づいて競争している企業は、2010年の36%から現在では67%以上に伸びている

しかし、CXへの投資を増やす企業は44%だけである

最初のデータからは、競合と差別化し顧客を獲得する戦略としてのCXの重要性が高まっていることが窺えます。しかし、CXの理解・向上に力を入れようとしている企業は全体の半分以下しかいない。だから、今がCXの理解・向上に取り組むのは競争に打ち勝って市場を拡大するための絶好のチャンスなのだと、記事では主張しています。

CXを理解・向上するために必要なこと

とは言え、「CXが大事なことも、今がそれを把握・向上させる絶好のチャンスであることもわかったけど、具体的にどうすればいいの?」とお思いの方もいることでしょう。この記事の結論にその質問への答えが書いてあります。

CXの理解・向上に本気で取り組む企業だけが、熾烈な競争から抜け出して、ロイヤルティの高い顧客を獲得することができます。そのために1つ確実に重要なのは、より良い顧客体験を提供するためには、これまで以上に顧客のことを理解しなければならない、ということです。具体的には、自社とのすべてのチャネル・接点での顧客の行動を把握・理解して、完全な顧客体験の全体図を作成しなければなりません。

(中略)顧客とあなたの会社とのやり取りがスムーズで快適なものになっていて、それが継続的に改善されていれば、あなたの会社への顧客のロイヤルティが高まります。しかし、もしそうでない場合には、競合他社に最高の贈り物、つまり顧客を提供することになるのです。

ここでの「完全な顧客体験の全体図」とは、商談の段階や、商談後に自社の商品・サービスを利用している段階での顧客と自社との接点をすべて洗い出し、そこで顧客がどのような行動をしていて、どんな経験をしているのか、そしてそれぞれの経験に対してプラスマイナスどちらの価値を感じているのかを、具体化したもののことです。

1件ずつコツコツと理解・改善することからCXへの取組を進めよう

近年のデジタル化の加速によって、顧客はWebやSNSを活用して自らどんどん情報収集を行って、私たちが気づかないうちに購買プロセスを先に進めています。そして、このように顧客が購買プロセスを進めるのを、コンサルタントのように支援する「顧客中心営業」という考え方が広まりつつあります。この顧客中心営業においてCXを理解することは基本中の基本ですし、CXのうち特に購買プロセスを改善すること自体が顧客中心営業そのものでもあります。

このように、現代のB2B営業ではCXの理解・向上は不可欠の要素なのですが、先ほどのデータにあった通り、多くの企業がまだ手つかずになっているというのも事実です。私たちが顧客の立場でいるときに、「なんでこうなってるの?」「もっとこうしたらいいのに!」と思う場面が少なからずあるのがその証拠でしょう。

確かに、CX理解し改善しようとすると、やらなければならないことがあれもこれもと出てくるので大変です。また、悪い体験をした顧客も多くの場合は無言で離れていくので、自社のCXに問題があることになかなか気づきにくく、知らず知らずCXの問題を放置したままになっている、ということもよくあります。

いきなりすべての接点を大変革するのは難しいので、まずは自社のCXについて顧客から定期的に聞き取り調査を行うこと、そしてそこで見つかった問題については1つずつでいいので改善すること。地味ではありますが、このようなことから1つ1つ着実に取り組むことが結果的にCXの理解・向上の近道になるのだと思うのです。

私たち自身の顧客体験を自社の営業に取り入れよう

そして、CXを理解・向上させるためにもう1つ有効なのが、私たち自身が買い手としての体験をたくさんすることです。自分がされて嬉しかった体験や、嫌な気分になった体験を頭の片隅に残しておき、「自分たちの顧客に同じような嬉しい気持ちになってもらうにはどうしたらいいか」「同じような嫌な気分にさせないためにはどうしたらいいか」を考えるヒントにするのです。

聖書や論語などに共通して出てくる文章に黄金律と白銀律というものがあります。黄金律は「自分がされて嬉しいことを人にもしなさい」、白銀律は「自分がされたくないことを人にしてはいけない」というもの。私たちが経験する顧客体験から学び、それを自社の営業のしくみに取り入れていく。そのためには、私たち自身がバラエティ豊かな顧客体験をすることが大事なのです。

参考:「32 Customer Experience Statistics You Need to Know for 2023」(Niklas Stattin, SuperOffice, 15 November, 2022)

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