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【海外カンファレンスレポート第二弾】OUTBOUNDに学ぶイベント運営のあり方

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2022年9月下旬に米国アトランタで開催されたB2B営業専門のカンファレンス「OUTBOUND 2022」。その体験レポート第二弾として、今回は講演の中身ではなくカンファレンス全体の運営の様子についてご紹介します。

B2B企業でも展示会に出展するのが当たり前になっていますし、企業によっては自社が主体となってイベントを開催し、取引先を招待しているところもあるでしょう。日本と米国という国民性の違いはありつつも、イベント運営の参考になる内容だと思いますので、ぜひお読みください。

特徴①エンターテインメントとしての完成度の高さ

イベントの開始時間になり、会場に流れていたBGMが静かになり照明が薄暗くなる。と思いきや、前方の大スクリーンで10秒前からのカウントダウンが始まり、参加者も指で数え声を出しながら参加。ゼロになった瞬間に客席全体が一気にライトアップされ、正面のスクリーンには「OUTBOUND」のロゴが大きく映され、ロック・ミュージック(レッド・ツェッペリンの『移民の歌』)のギターとボーカルが会場中に鳴り響く。ドラムとベースが一斉に「ドン!」と鳴るタイミングで音量がさらに上がると、ロゴが描かれている壁をスポーツカーが突き崩し、映画『ワイルドスピード』シリーズに出てきそうな荒野を疾走する映像へと切り替わる。その途中から講演者の顔写真と名前が、凝った演出とともに次々と映されていく。

実はこれが、今回参加した「OUTBOUND 2022」のオープニングの演出です。もちろんスポーツカーやロゴが描かれた壁はコンピューターグラフィックスなのですが、まるで映画やコンサートのような派手な演出で参加者の期待感を最高潮に高めます。単なるB2B向けのカンファレンスなのに、ちゃんとしたエンターテインメントとして組み立てられているのです。

演出のこだわりはオープニングだけではありません。講演者が登場する前に1~2分間の紹介VTRが流れるのですが、これもまるでTV番組のような出来。過去の講演のベストショットを切り抜いてつなげているだけでなく、その人の著書やワークショップに対するWall Street JounalやNew York Timesなどのコメントの中から、「This Guy is Crazy and Genius !」(こいつはヤバいが天才だ!)といった煽情的なキーフレーズを選んで紹介しています。

毎年12月に開催されTVでも放送されている「M-1グランプリ」では、決勝戦で漫才が始まる前に各コンビを紹介する「煽りVTR」が流されますが、まさにそれのカンファレンスバージョン。参加者の期待値をしっかりと上げた状態でそれぞれの講演がスタートするように設計されており、「これだけ煽ってくれたら気分良く話せるだろうな」と思える演出になっていました。

特徴②参加者を歓待するホストの存在

そしてこのエンターテインメントとしての質の高さはVTRづくりや照明、音響といった会場演出だけではありません。主催企業の代表がカンファレンス全体のホストとして、私たち参加者を歓迎し盛り上げてくれました。

先ほど紹介した派手なオープニングが始まる30分ほど前に会場の入口に到着したところ、ロビー手前に向かうエスカレーターの下に60代半ばごろのおじいちゃんがスーツをビシッと着て立っていて、参加者一人ひとりと陽気に挨拶を交わしていました。もちろん日本から来た私にも満面の笑みで挨拶をしてくれ、気持ちよく会場に入ってコーヒーを飲みながら開演を待っていました。

そして、先ほどのオープニングの動画が流れ終わったところで会場の一番後ろに照明が当たり、開いたドアの間をBGMのリズムに乗って颯爽と踊りながら入ってきたのが、先ほどのエスカレーター下の陽気なおじいちゃん。参加者からの拍手や掛け声に対して手を振り、ガッツポーズを決め、通路側に座っている参加者とハイタッチしながら正面ステージへと進んでいきます。そう、このおじいちゃんこそがこのカンファレンスのメインホストだったのです。

このおじいちゃんに限らず、主催企業や協賛企業の講演者は、休憩時間などにもよく動いていました。「楽しんでる?」と参加者に声をかけ、コーヒーやクッキーのお代わりがいらないか尋ね、「どの講演が面白かったか」などと積極的に情報収集をしていました。このようなホストとして参加者を歓待することへのこだわりも、カンファレンス全体を通じてとても印象に残ったことでした。

このホスト役による盛り上げには、ゲストである参加者の積極的なリアクションが欠かせません。日本だとシラケてしまうような演出であったとしても、参加者がちゃんと歓声を上げたりリアクションを取ったりして盛り上げようとする。このようにゲスト側も積極的にイベントを盛り上げようという姿勢が、上質なエンターテインメント兼パーティーの場を作り上げていたように思います。

特徴③ネットワーク作りの場の充実

そして3つ目に印象深かったのが、ネットワーキングの場の充実です。講演が始まる前の朝の1時間、昼休みの45分、そして夕方の休憩時間など、講演会場の横に設けられた広大なスペースで参加者同士や講演者とのコミュニケーションが積極的に行われていました。

朝であればコーヒーとベーグルやマフィン、そしてフルーツがビュッフェ形式で並び、昼にはサンドイッチやピザ、ブリトーなどの軽食が食べ放題。そのようなリラックスした場を使って、多くの参加者が「参加した目的」「普段どんな仕事をしているか」「これからのキャリアプラン」などについて、熱心に会話していました。

資料作成や電話に追われているなど、コミュニケーションを取っている場合ではない人も中にはいて、そのような人のための静かな休憩スペースもちゃんと用意されているのですが、そこにいるのは会場全体の1割にも満たない程度。近くにあったオリンピック記念公園を散策している人も少なく、だいたい7割程度の参加者がネットワーク作りにいそしんでいたようです。

このネットワーキングの場で感銘を受けたのが、主催/協賛企業のコミュニケーションの巧みさ。日本の展示会では入場料を払って訪れているのに、出展企業からガンガン売り込まれるということが往々にしてありますが、このカンファレンスではそのような体験は皆無。コーヒーを飲みながら普通に参加者同士のような会話をした後で、「夕方の休憩時間に○○というテーマでトークセッションをやるから、あなたの仕事の参考になると思うのでぜひ来てほしい」と控えめな勧誘を受ける程度です。

まず楽しく会話をして親しくなるということを目的にコミュニケーションがなされるので、いやな気持にならずに2日間の会期を過ごすことができました。

イベント全体を通じたユーザー体験を設計し、規律をもって運用する

今回はこれまでと趣向を変えて「OUTBOUND 2022」というイベント運営のあり方について、特に印象深かった「エンターテインメントとしての完成度」「ホストの姿勢」「ネットワーキングの場の充実」という3つの特徴をご紹介しました。

もちろん、ホスト/ゲストとしての立ち居振る舞いや、ネットワーキングに対する積極性など、国民性や文化に根差しているものも多々ありますので、すべてを日本人である私たちが真似するのは無理ですしその意味もないでしょう。

しかしその一方で、
・VTRや会場の演出によって、イベント全体およびそれぞれの講演に対する期待値をしっかりと高める
・主催/協賛企業はいきなり売り込むのではなく、普通の会話でコミュニケーションを取る
といった点は、私たちにも参考になる内容だと思います。この2点に共通しているのは、イベント全体の印象が良くなるようにユーザー体験を設計し、それから逸脱しないように各社が規律をもって振る舞う。きちんとユーザー体験が設計・運用されたイベントに参加し、改めてその大事さと有効性を体感することができました。

質の高いイベントを自らユーザーとして体験しよう

そして、この記事をお読みの皆さんにお勧めしたいのが、このような質の高いカンファレンスや展示会を自ら体験することです。講演の内容についてはブログで抜粋してお伝えすることができますが、今回ご紹介したイベント運営そのものは文字で読むのと実際に体験するのとでは大違い。実際にご自身の肌で感じてみていただきたいのです。

幸いなことにコロナ禍から世界が回復しつつある中で、日本でもリアルでのイベント開催が戻りつつあります。例えば、今年(2022年)の11月30日には、Salesforce社が2年ぶりに大々的なイベント「Salesforce World Tour Tokyo」をザ・プリンスパークタワー東京で開催します。

このようなイベントに足を運び、自らユーザー体験をする。そこから自社のセミナー/展示会の運営のあり方について、きっと多くのことを学べることでしょう。

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