トライツコンサルティング株式会社

【コンサルティング事例紹介】バラバラだった営業人材育成を標準化しスピードアップ!

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現在(2022年4月)、上場企業および一部の非上場企業が作成している有価証券報告書の見直しが、金融庁・金融審議会のワーキンググループで議論されています。サステナビリティやガバナンスなどを法定記載事項に新たに追加する方向での内閣府令の改正を考えているそうで、早ければ2023年度から適用されることになるようです。

議論されている法定記載事項の中に、人材育成やダイバーシティなどの「人的資本」も含まれているとのこと。すでに人材を「人財」と表記している企業も一部にありますが、改めて公式に「人材は企業の資本(資産)である」と位置づけられる歴史的な見直しになりそうです。

企業にとって重要な資本(資産)である人材の価値を高めるために、業務の標準化や研修などの育成は当然欠かすことができません。しかし、属人性が強く、1つ1つの商談や顧客対応の場面が個別のものであり、「デジタル活用」や「顧客の購買活動の変化への対応」など高度化・複雑化している現在のB2B営業では、育成はなかなか難しいのが実態です。これをお読みの方の中にも、悩んでいる方が少なくないのではないでしょうか。

そこで今回のトライツブログは、あるクライアント企業とトライツが経験した「B2B営業人材育成の事例」をご紹介します。営業組織内に散逸しているベストプラクティスやナレッジを取りまとめ、「SFAの使い方研修」や「提案書作成研修」のように単発になりがちな育成施策を体系化し、営業人材育成という業務そのものも標準化した事例です。営業人材育成に興味/課題をお持ちの方はぜひお読みください。

新人営業の育成が進まない・・・

事例企業は、日本全国のサービス業・店舗向けに集客をはじめとした様々な自社ソリューションを販売・提供している情報サービス業。約600名の営業担当者が積極的に営業活動を行っています。

この企業の営業企画部のマネージャーからの最初の相談は、「若手営業担当者向けの営業マニュアル(Book)をまとめたい」というものでした。人材輩出企業として有名なこの企業の営業職の平均年齢は低く、毎年数十名の新人が卒業/入社しています。新人を育成するのは各拠点のリーダー/マネージャーの役割なのですが、拠点ごとに教える内容も、新人が一人前と認められるまでの期間もバラバラ。また、別のリーダー/マネージャーの拠点に異動すると、その拠点のやり方に合わせてまたイチからOJTしなくてはならず、新人が戦力化するまでに時間がかかってしまっていました。

そこで、企画のマネージャーが、若手営業としてやるべき活動をBookにまとめようとしたものの、リーダー/マネージャーによって新人に指導している内容や使っているツールもバラバラ。組織の中に使えそうな素材は色々あるのですが、どうやってまとめたら良いかが分からずに困っている、というお話でした。

営業の手順/ツールのプロトタイピングでBookづくりが動き出した

そこで、企画のマネージャーとその部下2名、そしてトライツとでプロジェクトチームを作って最初に取り組んだのが、4名の営業部長を集めての「営業の業務/スキル要件の定義」でした。新人から中堅までの各階層ごとに、組織として求める業務/スキルを具体的に言語化・定義しました。そして、定義された個別の業務/スキルごとに、組織内のベストプラクティスからエッセンスを抽出して汎用的な手順/ツールにデザインし直し、Bookとしてまとめていったのです。

この際に、改めてデザインし直した主な手順/ツールは以下の通り。

メンバーからベストプラクティスを聞き出し、そのエッセンスが何なのかをプロジェクトメンバーで議論したら、手順/ツールのプロトタイプをトライツがさっさと作り、それを百戦錬磨の営業部長に見てもらって精度を高める、というサイクルでプロジェクトを進めました。トライツがプロトタイプづくりを担ったことで、それまで停滞していた営業マニュアル作りが勢いよく動きだしたのです。

営業人材育成の型をつくり、展開する

プロジェクトが始まってから数か月経ち、完成目前のBookを営業系の本部長・部長にお披露目したところ、「これはうちの財産だ」「自分たちがメンバーやマネージャーの頃にこれが欲しかった」という声をいただき、半期ごとに実施している新人営業向けの導入研修をこのBookに沿って進めることが決定。手順やツールの使い方を解説するスライドと、研修の中で取り組んでもらうワークの作成まで、そのプロジェクトで継続して取り組みました。

最初は「営業マニュアル作成」からスタートしたプロジェクトでしたが、その前提となる「業務/スキル要件の定義」と、マニュアルの内容を教育するための「研修作成」へと範囲が広がったということ。そして、このことによって営業人材を育成するために必要な3つの要素、「業務/スキル要件」「営業マニュアル」「営業研修」が統合的に整備されたのです。

最近になってジョブ型人事制度が先進的な企業で取り入れられるようになっていますが、この企業で実施したのはまさに「ジョブ型の営業人材育成」。業務/スキル要件というジョブを最初に定義し、それに沿って業務手順/ツールを標準化したBookを作り、Bookの内容を習得する研修を提供する、という独自の営業人材育成の型が出来上がりました。

この育成の型はその後、中堅営業担当者、リーダー職、マネジメント職、そして営業スタッフ職の育成にも展開されています。そして、同社を取り巻く環境や事業戦略の変化に合わせて、「業務/スキル要件」「マニュアル」「研修」の3点セットを定期的にブラッシュアップし続けています。標準の型が出来上がったことで、戦略が変わるたびにイチから育成方法を考える必要がなくなり、営業人材育成に関わるスタッフの業務そのものも効率化できました。

今では営業企画部長になった当時のマネージャーに改めてお話を聞いたところ、一連のプロジェクトによって次のような変化が組織に生じたそうです。
「若手営業が一人前に育つ速度が上がった」
「そのため、中堅以上に対して大手アカウント営業や自治体営業などの、高度な業務役割を与えられるようになった」
「業務を標準化して研修でスキル付与するという育成のサイクルが短くなったので、短期間で事業戦略をムリなく進化させられるようになった」

最初は若手向けの営業マニュアル作りから始まったこのプロジェクトは、今ではこの企業の営業人材の早期育成と事業のスピーディな進化に不可欠な重要な業務となっています。

プロジェクトの成功に不可欠な「プロトタイピング力」

このプロジェクトでのトライツの価値を、営業企画部長は「難しくて自分たちだけではスピードが落ちてしまう局面でも、アイデアや叩き台をサッと出してくれる『打開力』」だと表現していました。この「アイデアや叩き台をサッと出す」ことを、トライツは「プロトタイピング力」と呼んでいます。Bookでも研修でも、現場から情報収集したりメンバーと議論したりして目指す姿や要点といった骨格が見えてきたら、さっさとカタチにしてみる。そしてその叩き台をベースにしてさらに中身を進化させていくのです。

例を挙げると、この企業の営業はエリアごとのマーケット・トレンドを分析した上で顧客に集客のアドバイスをするのですが、このマーケット分析の観点やポイント、マーケット指標と提案商品の関連付けのルールが、完全に個人のノウハウに閉じられていました。そこで、特に優秀だと言われているマネージャーと一緒にマーケット分析の手順とロジックの棚卸/言語化に取り組みました。そこで得られたエッセンスを、この企業で普段から使っているSWOT分析のフレームに変換した「マーケット分析シート」にして、次のプロジェクト会議へ持ち込んだのです。

メンバー全員が見慣れているフレームだったこと、そのマネージャーと実例を使って棚卸できたので具体例で見られたことから、そのマーケット分析シートはその場で採用が決定。さらに、そのシート上でテーマとして設定されたものが自動でSFAに取り込まれるようになるなど、効率的に使われるための工夫が現在も加えられ続けています。

TVや雑誌などで「ゼロイチ」という言葉がよく使われています。これは、新しいものを作りだすことを表す言葉で、このスキルのことは「ゼロイチ力」、そしてそのスキルを持つ人材は「ゼロイチ人材」と呼ばれています。トライツがこのプロジェクトで貢献した最大のポイントは、アイデアを最初にカタチにする「ゼロイチ」の部分。それぞれのプロジェクトの状況に合わせたプロトタイプをスピーディに、かつある程度のクオリティで作成することで、プロジェクトが前に進むようになったのです。

今回のトライツブログでは、営業人材育成の事例をご紹介しました。今後も定期的に、トライツがクライアント企業と一緒に取り組んだ事例と、そこから学んだ営業改革を加速させるためのポイントをお伝えしていきますので、ご期待ください。

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