トライツコンサルティング株式会社

統計データから見た、営業施策としての「ウェビナー」のこれから

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この2年間でB2Bの世界でも、オンラインのセミナーやイベントが当たり前になりました。
仕事をしながらスマホやタブレットで視聴する。同時に開催されている複数のイベントを両方とも視聴する。時間がなくて当日に見られなくても、後からゆっくり視聴する。セミナーやイベントのオンライン化によってこれらのことが可能になり、ずいぶん便利になりました。

しかし、主催する側の方の声を聞いていると、「手早く安価に開催できるから、オンラインが普通になって本当に助かっている」という意見がある一方で、「オンラインは対面と比べて手ごたえを感じにくい」「見込客発掘や商談化という生産性で見たら、対面には劣るんじゃないか」という意見を耳にすることがあります。参加する側としては便利なことこの上ないのですが、主催者側には肯定的に捉えている人もいれば、効果について懐疑的・否定的な人もいるというのが実情でしょう。

今回のトライツブログでは、オンラインイベントのうち特に広く普及している、オンラインセミナー/ウェビナーについての統計データを参考にしながら、その今後の趨勢を占ってみたいと思います。ウェビナーの効果について疑問を感じている方、よりよい開催方法についてお悩みの方にとって参考にしていただける内容ですので、ぜひお読みください。

調査データ①ウェビナーの有効性

最初にご紹介するのは、Zippia社の「25 Webinar Statistics 2022: Facts About Webinars In The U.S.」。LinkedInをはじめとする各社が発表したデータを網羅的に集め、端的に整理してくれています。この中から、ウェビナーの有効性に関わるデータを抜粋しましたので、早速見ていきましょう。

・B2Bウェビナーの参加者のうち、73%が見込客になります
・ウェビナーの参加者のうち、15%がその企業の製品やサービスを購入します
・マーケティング担当者の83%が、ウェビナーが効果的なマーケティング施策であると回答しています
・B2Bの購買担当者の48%が、ウェビナーが意思決定に最も役に立つコンテンツであると回答しています

米国での調査結果ではありますが、ウェビナーが見込客や売上の獲得に有効であることを示す、とても前向きなデータが並んでいます。このデータだけだと、B2Bのマーケティング担当者も購買担当者ももろ手を挙げてウェビナーを歓迎しているように見えますが、他のデータを見るとどうやらそういう訳でもなさそうです。

調査データ②今後の利用意向

Forrester Research社が昨年B2Bマーケティング担当者200人を対象に実施した調査の結果データ、「B2B Marketing Event Trends: Virtual Is Here To Stay; Hybrid Is On The Way」を見てみましょう。

・63%の回答者が、2022年には2021年と同程度またはそれ以上のオンラインイベントを実施する予定だ、と回答しています
・28%の回答者は、オンラインイベントはうまくいかないので、安全が確認され次第すぐに対面形式に戻す予定だ、と回答しています

ここで書いている「イベント」は、Salesforce社が日本でも開催しているDreamforceのようなもの。講演者が登壇して話をするセミナーがメインでありつつも、隙間の時間には出展企業のデモを見ることができたり、初日もしくは最終日にネットワーキング(参加者同士の交流のための立食パーティーなど)が開催されたりします。対面形式のイベントは壮大な催し物なのでセミナーとは別物なのですが、オンラインイベントはほぼウェビナーと同じものになっていますので、ここでご紹介しました。

さて、データの中身に戻りましょう。このデータを見ると、過半数(63%)のマーケティング担当者がオンラインイベント(≒ウェビナー)をこれまで以上に実施しようとしている一方で、約3割(28%)の担当者は、オンラインは対面に及ばないと判断しています。この3割の回答者に対して、記事の書き手は手厳しいコメントを寄せています。

このように回答した組織は、効果的なオンラインイベントを計画・開催することに失敗したため、参加者との関係構築の機会と、本来なら獲得できたはずのマーケティング収益を失ってしまったのです。

調査データ③効果的なウェビナーの条件

それでは、どうすれば効果的なオンラインイベント、ウェビナーを実現できるのでしょうか。最初にご紹介したZippia社のレポートの後半に、参加者が求めているウェビナーの条件が挙げられていますので、それをまとめて確認しましょう。

・一般的なウェビナー1回当たりの時間は60分で、参加者の平均視聴時間は56分です
・60分のウェビナーを希望する参加者は10%だけで、44%が45分、41%が30分という短い時間を希望しています
・ウェビナーを開催するのに適した曜日は、水曜日と木曜日です。月曜日と金曜日は参加者が少ない傾向があります
・登録者の出席率が高い時間帯は、午前11時、午後1時、午後2時です
・参加者のうち67%が、情熱的で魅力的なプレゼンターを、成功しているウェビナーの最大の要因だと回答しています

水曜から木曜という一週間の真ん中の曜日で、お昼前後という一日の真ん中の時間帯に、1時間未満の短時間、というのが参加しやすいウェビナーの条件だとのこと。これは、私たち日本の参加者も同じなのではないかと思います。また、最大の成功要因とされている「情熱的で魅力的なプレゼンター」についても、主催者側で用意できるかどうかは別として、参加する側の意見としてはうなずけるものではあります。

今後のセミナーは対面とオンラインを組み合わせたハイブリッドが当たり前に

ここまでのデータを見ていると、
・適切に計画・実施できればウェビナーは見込客の創出や売上獲得に効果的
・多くのマーケティング担当者が、ウェビナーを有効だと評価していて、2022年もこれまで以上に実施を計画している
・購買担当者の約半数も、ウェビナーが意思決定に最も役立つコンテンツだと認識している
ということですので、適切に設計されているウェビナーは現時点で有効だ、というのは間違いがなさそうです。

それでは、今後コロナが終息して人々が気兼ねなく自由に出歩けるようになったときでも、ウェビナーは使われ続けるのでしょうか。こちらについては、シャノンが昨年実施した「企業の情報収集とウェビナーの参加状況に関するアンケート」の中に、参考になるデータがあります。それは、「コロナが落ち着いた場合、ウェビナーとセミナーのどちらに参加したいですか?」という質問に対する回答で、「セミナー」が32.5%、「ウェビナー」が23.0%、「どちらでもよい」が30.5%。対面のセミナーに参加したいという人が多くいるものの、ウェビナーの方が良いという人も少なからず存在します。つまり、今後もセミナーは対面とオンラインを組み合わせたハイブリッド形式が継続することになりそうなのです。

これについては、先ほどご紹介したForrester Research社の記事でも同様のことが述べられています。

「2年以内にB2Bマーケティングのイベントはすべてハイブリッドになる」という考えに、58%の回答者が同意しています。B2B購買担当者の働き方や行動スタイルが長期的に変化したことから、マーケティング担当者は対面とオンラインの参加者双方に対し、価値のある体験を提供する方法を見出さなければならなくなっているのです。

ウェビナーはもはや選択肢ではなく必須の環境に

コロナ禍が始まった当初は、外出自粛の要請により対面形式のセミナーが開けないため、やむを得ずウェビナーに取り組み始めた企業が多かったように思います。しかし、それから2年が経過し、私たちがいくつものウェビナーを経験したことで、状況が変わってきました。わざわざ出掛けるのではなく、仕事の隙間や週末にささっと見られるウェビナーの便利さを視聴者でもある私たちが知ってしまったのです。

購買担当者がオンラインで情報収集し、主体的に購買活動を進めるようになっている現在では、ウェビナーはもはや選択肢ではなく、セミナーを開催する際に併せて用意しておかなければならない環境の1つとなりつつあります。顧客の情報収集や購買活動がオムニチャネル化している現在では、リアルだけでも、オンラインだけでもなく、リアルとオンラインの両方を用意しなければならないのです。

そして、単にオンラインの環境を用意するだけでなく、オンラインによってより高い成果を上げる企業も出てきています。そのような企業は「やむを得ず」ではなく、「顧客が求めているから」「より効果的だから」ウェビナーを積極的に活用しているのです。

もし皆さんの会社が「慣れていないから」「手ごたえを感じられないから」などとウェビナーへの取組を後回しにしているのだとしたら、その間に顧客も、競合もウェビナーに適応してしまっている、ということが起きている可能性は十分にあります。後回しにしている余裕は、もうないのかも知れません。

参考:
25 Webinar Statistics 2022: Facts About Webinars In The U.S.」(Chris Kolmar, Zippia Inc., January 5, 2022)
B2B Marketing Event Trends: Virtual Is Here To Stay; Hybrid Is On The Way」(Conrad Mills, Forrester Research Inc., November 15, 2021)

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